事業参加後、3年間の活動(社会福祉法人 新潟市社会事業協会 信楽園病院)

病院概要

【所在地】新潟県
【病床数】325床
【DiNQL参加開始年】2016年
【参加病棟数】7病棟(全7病棟)

参加した動機・きっかけ

当院は社会福祉法人を母体としており、グループ内で唯一の病院です。看護部ではマネジメントの一環として目標管理を取り入れていますが、他病院との比較ができずに、現状分析に難しさを感じていました。DiNQL事業では、地方にいながらも全国の病院と比較でき、客観的なデータが得られることから、看護師長のマネジメントツールとしての活用を期待し、全7病棟での参加を決めました。

運用・活用について

当院では日本看護協会が推奨する「看護の質向上に向けた、7つのステップ」に沿って、看護師長を動機づけ、部署目標や評価に数値を活用できるように働きかけました。

参加1年目:委員会の発足・データ入力

信楽園 多職種委員会メンバーの画像
【多職種で構成された委員会メンバー】

参加事業への参加初年度は、院内に「DiNQL入力準備委員会」を立ち上げ、看護部・医療安全管理部・褥瘡専従看護師・企画広報・庶務・情報管理室からメンバーを招集しました。委員会では、評価指標の定義を確認したほか、データ入力に向けた細かなルール決めなども行いました。また、情報管理室と看護部で日本看護協会主催のDiNQL説明会に参加し、共通理解を深めました。その後、当院で扱うデータ項目を135項目と定め、看護師長の負担軽減を図るため、企画広報・情報管理室が協力し、看護師長の入力は6項目のみとしました。

 

参加2年目:看護の可視化へ —ベンチマーク評価の活用と院内への周知活動—

1年目でDiNQL事業導入の準備がほぼ終了したため、2年目以降はベンチマーク評価の活用を通し、さらにDiNQLを推進していくため、「DiNQL入力準備委員会」から「DiNQL推進委員会」へと名称を変更しました。委員会では、看護師長がベンチマーク結果を活用しながら思考を整理した上で現状分析から目標立案までを実施できるよう、独自のデータ分析フォーマットを作成しました(図1、2)。さらにフォーマットの提示だけでなく、具体的な事例の説明を行い、実際に看護師長が利用する際にも、DiNQL推進委員の看護副部長と看護師長の2名がサポートしました。

図1:「データ分析用のフォーマット1」の画像
図1:データ分析用のフォーマット1
データを文章に書き記して思考を整理
図2:データ分析用のフォーマット2の画像
図2:データ分析用のフォーマット2
思考整理の後、現状分析から目標を立案

一方で、看護師長のみがDiNQLデータを閲覧していたため、病棟スタッフについてはDiNQL事業への理解や関心が高まっていませんでした。そこで、看護部長が講師となり、看護部職員全員を対象にDiNQLに関する講義を実施し、各部署の看護の質評価をポジティブフィードバックしました。講義後には「看護の可視化が理解できた」「自分たちの看護の成果が分かり、モチベーションが上がった」といった感想が寄せられ、関心の高まりがうかがえました。

参加3年目:部署目標、個人目標に数値を活用

データ分析の結果をもとに部署目標で定量的な評価ができるよう、師長会議で働きかけをしました。また、スタッフ個人の目標にも数値が入るように、目標管理表の記入例を作成し、師長を通してスタッフに指導しました。

取り組みの効果

準備の段階でコアメンバーを招集しデータの収集・入力を進めたことで、事業のスムーズな導入につながったほか、ダッシュボードやフォーマットの活用で、師長の数値に対する苦手意識も軽減しました。また、他病院とのベンチマーク比較により、部署の客観的な現状分析ができ、結果として2018年度時点で85.7%の部署目標にて定量的な評価を取り入れられました。また、褥瘡、転倒・転落、誤薬、身体的拘束に関する改善活動が実施され、発生率の減少など成果が上げられています。また、改善活動を通して、褥瘡推定発生率、転倒・転落発生率、誤薬発生率、身体的拘束割合の減少など成果を上げられています。

今後に向けて

今後は、現在は看護師長を中心に活用しているDiNQLデータを、病棟スタッフにも開示し、看護師の個人目標にも定量的な評価を取り入れることで、人材を育成し、さらなる看護の質向上を目指したいと思います。

(2020年10月9日掲載)

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