呼吸器内科病棟の時間外労働時間の削減に向けて(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院)

病院概要

【所在地】愛知県刈谷市
【病床数】704床
【DiNQL参加開始年】2015年
【参加病棟数】21病棟

参加した動機・きっかけ

当院は、2015年からDiNQL事業に参加しています。現場の窮状を管理者に理解してもらうため、類似した他病棟や他施設と比較ができるクリニカルインジゲーターを検索している中で、DiNQLデータの活用ができないかと考えました。簡単な操作で必要なデータを入手することができ、グラフや表でフィードバックデータが示されており、比較の評価が容易であったため部署の現状を分析し改善への取り組みを目指し、参加しました。

運用・活用について

2016年当時、当院の呼吸器内科病棟は、病床数47床に対し31名の看護師と4名の看護補助者が配置され、看護管理者は十分な人員配置であると考えていました。しかし、この病棟で働くスタッフは、日々の業務に繁忙さを感じており、日勤者の時間外労働時間が3時間に及ぶことが常態化していました。そこで、スタッフの職場環境に関する意識調査を行うとともにDiNQLデータと院内データを収集し、課題の抽出・改善に取り組みました。

職場環境に関する意識調査の結果

  • ほぼ全てのスタッフが、業務量が多く、勤務時間が長いと回答
  • 業務に対して身体的疲労感や精神的な苦痛を感じていると回答
  • 業務量が多いと感じる業務は「看護記録」「ナースコール対応」「保清業務」と回答

DiNQLデータの結果

  • 1か月間の1人あたり平均時間外労働時間は、院内の内科系病棟の中で最も長く、全国の中央値と比較しても約2時間長かった(図1)
  • 院内の他の内科系病棟と、全国の中央値と比較しても勤続年数の長いスタッフが少ない(図2)
  • 全国の病院と比較して少ない人員配置で多くの緊急入院患者を受け入れ、高い病床稼働率で病棟運営している(図3)

<DiNQLデータ>

時間外労働時間に関するDiNQLデータ

図1)時間外労働時間

勤続年数別の常勤看護職員の割合に関するDiNQLデータ

図2)勤続年数別の常勤看護職員の割合

病棟状況に関するレーダーチャート図

図3)病棟状況に関するレーダーチャート

院内データの結果

  • 入院患者の重症度、医療・看護必要度B項目の平均値は他の病棟と比較して3番目に高く、食事や保清、排泄など日常生活で介助を必要としている患者が多い
  • 呼吸器内科病棟特有の酸素療法や気道浄化に伴う業務が多い

データの分析

上記の結果から、時間外労働時間が長い原因は、業務量が多いことやスタッフ構成等のために時間内に終えられない現状にあることが明らかになりました。今回の結果を医療の質評価の枠組みに当てはめると、「構造」に問題があるにもかかわらず、「過程」の部分でスタッフの努力により、よい「結果」を得ようとしていたのが、病棟全体の疲弊につながったと考えられました。

取り組みの効果

データの分析結果をもとに、患者への日常生活ケアの提供を充足し、看護業務の負担軽減につなげるため、看護部へ看護補助者の増員を提案したところ、3名の増員が認められ、看護補助者の夜間配置も実現しました。

その結果、看護師は看護記録を業務時間内に記載できるようになり、早く退勤できるようになりました。

今後に向けて

多職種カンファレンスの様子の画像
多職種カンファレンスの様子

今後は、看護補助者だけではなく他職種とのタスクシフト・タスクシェアリングを進め、看護師が看護業務に専念できるように環境を整備し、専門性を発揮した質の高い看護の提供を目指していきたいと思います。

(2022年3月23日掲載)

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