「病棟機能移行後の安全管理と労働環境改善への取り組み」(社会医療法人財団大樹会総合病院 回生病院)

病院概要

【所在地】香川県坂出市
【病床数】397床
【DiNQL参加開始年】2014年
【参加病棟数】5病棟(全8病棟)

参加した動機・きっかけ

当院は、香川県の中讃地域の医療を担う病床数397床の地域医療支援病院です。一般病棟に加え、HCU、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、精神科病棟を有しています。看護の質の評価を行うためのデータ収集をしたいと考え、2014年からDiNQL事業に参加しました。

運用・活用について

当院では2019年9月にA病棟を急性期病棟から回復期リハビリテーション病棟に機能移行しました。移行に伴い、看護配置が7対1から13対1に変わったため、看護師数も減員し深夜勤務者が1名少なくなりました。

A病棟では、病棟機能移行後に転倒・転落が増えたため、DiNQLデータを活用し、安全管理と労働環境改善のためデータマネジメントを行いました。

DiNQLデータを活用し、病棟機能移行後の患者層・転倒・転落の状況を分析

転倒・転落に関する病棟間のデータ比較
【転倒・転落に関する病棟間のデータ比較】

分析した結果は以下のとおりです。

  • 病棟移行に伴い75歳以上の患者割合が増加
  • 転倒・転落発生率が増加
  • 患者の実人数は半減したが、重症度、医療・看護必要度におけるB得点の平均が増加

この結果から、高齢者の割合が増加し、日常生活に何らかの援助を要する患者も増加したこと、移動や移乗の動作に介助や見守りが必要な患者が大部分を占めたことで転倒・転落が増加したことが推測されました。さらに分析を進めると、排泄動作や、起床、食事に伴うベッドから離床に関連した動作が集中する時間帯に転倒・転落が多くみられました。

リハビリスタッフと協働した転倒・転落への取り組み

転倒・転落が多く発生する時間帯に人員を手厚く配置できれば、転倒・転落が防止できると考えました。チーム医療を念頭に置き、上記のデータを基にリハビリ部門に交渉し、リハビリスタッフが時差出勤(早出・遅出)を受けてくれることになりました。時差出勤の導入にあたっては、話し合いを重ね、業務を分担し、患者のデイルームへの移動や食事のセッティング、口腔の清潔介助などを看護職員とともに行っています。

取り組みの効果

多職種によるカンファレンスの様子
【多職種によるカンファレンスの様子】

転倒・転落の多い時間帯にリハビリスタッフの時差出勤を導入したことで、人員が手厚い時間帯の転倒・転落発生割合の減少がみられました。また、看護職員とリハビリスタッフで、FIM(機能的自立度評価法)を点数化したときに違いがあり、患者の状態の捉え方が職種間で異なることがわかりました。同じ動作の捉え方が一定でなければ、患者の混乱を招きます。そこでFIMの勉強会を開催し、同じ視点で患者に関わるようになりました。

今後にむけて

今後はデータ活用を看護部全体に拡大し、看護師1人ひとりの看護への意欲と看護技術能力が向上するように働きかけていきたいと思います。また、適切な評価ができるデータの解析と分析手法を学習し、看護部に浸透させ、データをもとに発信していきたいと思います。

(2020年2月28日掲載)

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