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DiNQLデータを活用した看護実践への意識づけ(福井県立病院)
病院概要
【所在地】福井県福井市
【病床数】767床
【DiNQL参加開始年】2016年度
【参加病棟数】22病棟
参加した動機・きっかけ
看護師たちは「日々のケアが患者さんにとってよかったのかどうかの評価は、看護師によって違うと思う」「看護の質は、患者さんやその家族しか分からないのではないか」「自分の病棟は高齢の患者さんも多く、ベッド稼働率も高いので毎日忙しい。他の病棟や他の病院と比べても1番忙しいはず」「業務改善に取り組んだ人たちは『看護の質は向上した』 と言うけれど、本人たちが満足しているだけかもしれない」など、総じて『看護の質の評価』は看護師個人の判断、 という思いを持っていました。
そこで、「看護の質の評価」にデータを活用すべく、2016年度からDiNQL事業に参加しました。
運用・活用について
2016年にDiNQL事業に参加し、院内でDiNQL部会を設置したものの、データを十分に活用できなかったという課題がありました。そこで、2020年度より運用を変更することとしました。
①DiNQL部会の役割の変更
DiNQL事業に参加以降、全てのDiNQLデータを入力することを部会の役割としていましたが、 2020年度よりデータ入力作業は各部署の担当者に移行し、部会は各部署からの相談窓口へと役割を変更しました。
主な相談内容は、「データの入力方法」「データからの自部署の特殊性や問題点の抽出方法」「取り組み後の評価方法」などです。
②院内でのDiNQL大会を開催
各病棟では褥瘡、転倒・転落、身体的拘束、超過勤務などさまざまな課題について、DiNQLを活用した取り組みが行われています。
各部署でのデータの活用方法や取り組み内容を院内で共有する機会を持つ目的で、2021年より院内でのDiNQL大会を年1回開催することにしました。
発表内容は「データから見えてきた問題点=現状」「取り組んだ内容=過程」「取り組み後の変化=結果と今後の課題」の3点とし、全病棟が3分ずつ発表しています。
発表の一例
- 現状:
- 身体的拘束患者の割合が増加し、他病棟の平均値よりも拘束割合が高値 →身体的拘束患者の減少のための対策が必要
- 過程:
- セル看護方式の導入(受け持ち患者の病室が近くになるように調整することで、看護師の動線の無駄を省き、患者の側で業務を行う)
- 結果:
- 看護師1人の動線時間が5~6分短縮し、身体的拘束患者割合も14.5%→13.1%に減少した。
一方、転倒、転落発生率は4.0%(一般病棟1.9% )と高値であり、今後は転倒・転落予防への対策が課題となった
取り組みの効果
各病棟がデータから明らかとなった問題に対し、それぞれ解決に向け取り組んだ結果、院内全体の看護の質が向上しました。
図:各アウトカムの経年変化
院内のDiNQL大会参加者へのアンケートでも、「データ活用が自部署の課題をみつけ改善に向けた取り組みにつながりますか?」という設問に対し、「自部署の取り組みにつながる」98%など、看護実践においてデータ活用への意識は高まったと評価しています。
今後に向けて
労働と看護の質改善のためには「看護実践のデータ化による問題の可視化」と「解決に向けた効率のよい取り組みの継続」が必要です。そのためにDiNQL部会の役割を「各部署が主体的に取り組めるよう支援すること」 「他部署・他施設の取り組み状況を共有する機会を持つこと」と位置付け、各部署に対する支援を継続・発展させていきたいと考えています。
(2024年2月21日掲載)