DiNQLを活用した部署の目標管理 ~誤薬発生率の減少に向けた取り組み~ (藤枝市立総合病院)

病院概要

【所在地】静岡県藤枝市
【病床数】564床
【DiNQL参加開始年】2014年度
【参加病棟数】13病棟

参加した動機・きっかけ

当院は、2014年からDiNQL事業に参加しています。DiNQLデータは、DiNQL以外のデータと合わせて見ることで、自部署の現状を俯瞰的に捉えて分析することができ、課題の発見や目標値を可視化できると考えました。

運用・活用について

当院では可視化した課題や目標値をバランス・スコアカード(BSC)を用いた部署目標管理において活用しています。

2022年度の期首時点で、当院のA病棟(脳神経外科、脳神経内科、歯科口腔外科、皮膚科の混合病棟)は、病床数46床に対し、看護師37人と看護補助者4人が配置されていました。
前年度のDiNQLデータにおいて、「誤薬発生率(レベル1~5の計)」が中央値以上であったことから、DiNQLデータをもとに部署の現状を分析し、課題に取り組むことにしました。

藤枝市立総合病院_レーダーチャート(すべてのアウトカム)

図1:レーダーチャート(すべてのアウトカム)

自部署の状況と分析

看護師の与薬業務は、日勤の受け持ち看護師が1日分の内服薬を準備する(=配薬)運用でした。しかし午前中の看護業務が多いため、業務開始時刻より前に配薬している看護師がほとんどでした。

藤枝市立総合病院_かんたんダッシュボード(医療安全)

図2:かんたんダッシュボード(医療安全)

かんたんダッシュボードからは、ケア度が高く多忙な病棟であることが分かり、受け持ち看護師の業務が過多になっていると推測しました。さらに、昨年度与薬研修参加率が47.2%(中央値58.9%)と低く、新しい情報が得られていない可能性が考えられました。

そこでDiNQL以外のデータとして、「6R声出し調査結果」を見てみると、配薬・与薬がマニュアル通りできていないことも分かりました。

藤枝市立総合病院_6R声出し確認(与薬業務・内服薬)チェック集計結果

図3:6R声出し確認(与薬業務・内服薬)チェック集計結果

これらのことが、誤薬発生率に関連している可能性があると考え、部署のBSCでは、部署目標を「DiNQLの「誤薬発生率」(前年度4.2‰)を中央値以下にする」とし、そのための実施計画として、まずマニュアル通りの業務実施、また新しい知識の入手のため、下記を立案しました。

  • 「配薬・与薬時」に関する運用の再確認をするために、昼のカンファレンスでマニュアルの読み合わせを実施する
  • 病棟でよく使用する薬剤について、病棟薬剤師による勉強会を開催する
  • 配薬に関する業務改善として、それまで受け持ち看護師が配薬業務と与薬業務の両方を行っていたのを、配薬業務はフリー業務の看護師が行い、受け持ち看護師は与薬のみを担当することに変更する

これらの実施計画に対し、部署の主任は

  • 配薬の運用について、分かりやすくスタッフに説明した

  • 業務改善後、困った事はないかスタッフに聞き取りした

  • 部署のBSCをスタッフが確認できるように掲示した

を行いました。

取り組みの効果

当該部署において、

  • DiNQLの「誤薬発生率」が4.2‰から2.6‰と、「中央値以下」となった

  • 薬の確認がダブルチェックできるようになり、インシデントレベル0~1の報告が多くなった

  • 受け持ち看護師の配薬に関する業務量が減り、看護ケアの時間が増えた

といった結果・成果が出ました。

今回、DiNQLデータとDiNQL以外のデータから、多角的に現状を捉えることで課題を明らかにでき、業務改善や看護の質向上につなげることができました。

DiNQLのデータ分析に関わり、病棟の現状や、対策実施後の結果も分かりやすく可視化されることが分かったので、今後、正確なデータ収集が必要であることや、DiNQLデータがどのように使用されているのかをスタッフに周知していきたいと考えています。

(2024年3月19日掲載)