常任理事のマンスリー通信

機関誌「看護」2026年1月号より

常任理事 井本 寛子

常任理事 井本寛子

「医療保険制度における出産に対する支援の強化」について
医療保険部会で議論が開始

「子ども未来戦略方針」において「出産費用の保険適用の導入を含め検討する」(著者要約)と示されたことを受け、「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」が設置され、2025年5月まで議論を行い「妊娠・出産・産後に関する支援等の更なる強化の方向性」が取りまとめられました。そして、10月の社会保障審議会医療保険部会において具体的な制度設計に関する議論が開始されました。部会の議論では、2025年冬ごろまでに出産に対する給付体系の骨格のあり方について整理することをめざし、産科臨床現場で行われる個々の対応についての具体の当てはめなど、個別具体的な内容については、給付体系の骨格が固まった後、制度施行に向けてさらに議論を深める予定が提示されています。これから、本格的な議論が始まりますが、妊産婦の多様なニーズに応え、選択を制限することがないように、また、周産期医療を支えるさまざまな体制が確実に継続されるよう制度設計を要望していきたいと思います。

常任理事 木澤 晃代

常任理事 木澤晃代

令和8年度診療報酬改定の基本方針に関する議論が進行中

令和8年度診療報酬改定における4つの基本認識、4つの基本的視点および具体的方向性(案)が示されています。基本的視点については、①物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応、②2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進、③安心・安全で質の高い医療の推進、④効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性とされています。特に①は、本会が強く要望している看護職の処遇改善であり、10月7日に令和7年度補正予算および次期改定に関する緊急要望書を提出し、実効的な処遇改善の実現に向けた医療機関等への経営支援を要請しました。夜勤者確保の方策としては、夜勤手当の増額や夜勤手当以外の手当の支給等が効果的ですが、病院勤務看護職員の1回当たりの夜勤手当額は10年以上ほとんど上がっていません。
これらのデータも示し、確実に夜勤者の手元に届くような方策を要望しています。

常任理事 田母神 裕美

常任理事 田母神裕美

「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」が作成されました

2024年度老人保健健康増進等事業において本ガイドライン(※)が作成されました。冒頭で、介護サービスは「介護の基本理念である高齢者本人の自立支援、尊厳の保持、自己決定の尊重を実現し、利用者のQOLの向上を目指すために実施されます。しかし、その過程で事故のリスクはどうしても伴います。そこで重要となるのが、リスクマネジメントの取組です」としています。介護サービスの利用者本人の意思に沿う生活の実現を中心に据え、リスクマネジメントの基本理念、事故予防、発生時の対応、責任等について説明しています。私自身が特に着目したのは、「重要なのは、介護施設等では事故が起きうるという事実を、高齢者本人や家族に伝え、認識を共有することです」という記載です。利用者と看護職の信頼関係を築き、丁寧に本人の意思を確認し、どのように支援していくかを対話していく中でリスクマネジメントについて利用者・家族と考えを共有することが極めて重要なプロセスであると考えます。

※ 介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン

常任理事 松本 珠実

常任理事 松本 珠実

地区別保健師職能委員長会が終わりました

全国6地区で開催された地区別保健師職能委員長会では、熱い議論が交わされました。保健師基礎教育と現任教育との連携については、①大学生が近隣市町村のイベントに参加することで地域に親しみがわき当該市町村への就職に結び付いた事例や、②保健師が抱える課題を解決するために県が市町村や保健所と大学教員とをマッチングして、伴走的にかかわっていただくことで、大学側と自治体側でWin-Winの関係がつくれている事例などが報告されました。保健師会員を増やす取り組みとしては、①「育児休業制度から復帰した保健師が、急に実習指導者としての役割を求められて困った」という声を受けて「今さら聞けない」をテーマに小児の精神発達の見方などについて研修会を開催して多くの参加者を集めている例や、②災害などをテーマに3職能が集まる機会を設け、看看連携の重要性を訴えている例などが語られました。平日に集まることが困難な保健師職能ならではの負担感に共感する場面もあり、有意義 時間となりました。

常任理事 橋本 美穂

常任理事 橋本 美穂

2026年度日本看護協会が提供する研修をご活用ください

2026年度の日本看護協会研修一覧を研修ポータルサイト(※1)に掲載しました。いくつかピックアップしてご紹介します。「看護を取り巻く社会の動向」はその時々のタイムリーなトピックスを取り上げ、社会の変化を看護の視点から解説します。イマを読み解くために(※2)、看護管理者だけでなく、すべての看護職の受講をお勧めします。アップデートのための研修としては、「定期的な学び直しに活用できる研修」を提供しています。活動する領域や職種を問わず、専門職として安全に看護を提供するための基盤となる「医療安全」「感染管理」の基本と、専門職としての自律した判断を的確に行うための行動指針となる倫理綱領や業務基準に関する内容です。
以前受講した内容であっても、定期的に受講し情報を最新にしておくことが大切です。また、2027年度からの「看護管理研修」の全国での実施に先駆け8研修を先行実施します。将来のなりたい姿や強化したい能力などに合わせて、研修を選択・受講し、実践へご活用ください。

※1  研修ポータルサイト
※2  機関誌「看護」2026年1月号 p.32 JNA INFORMATION をご参照ください

常任理事 淺香 えみ子

常任理事 淺香 えみ子

国際看護師協会アジアワークフォースフォーラム(ICN AWFF)に参加して 

看護職の労働問題を扱うICN(※1) AWFF(※2)(11 月12~13 日)が北京で開催され、世界的に看護職不足が進展する中で、アジア圏の看護職の減少率が最も高く、人材確保が大きな課題として共有されました。看護職確保において、本会の「看護の将来ビジョン2040」で重視されている看護職のウェルビーイングは国際的にも重要な視点として確認されました。人材確保には、教育、職場環境、経営等の多様なアプローチが必要であり、特に処遇改善が最も重要かつ有効であると各国の取り組みからも示されました。看護職は処遇改善に努めている職場に集中しており、人材確保対策として処遇改善強化の重要性が確認されました。また、確保される人材の教育が大学に集約されつつあることも共有されました。2026年2月3、4日のICN IWFF(※3)に続いて、5日に日本看護サミット2025を横浜で開催します。いずれも労働問題を国際会議の中で扱います。看護職の抜本的な働き方改革を進める機運を高め現場の改善を皆さんと進めてまいります。 

※1 International Council of Nurses
※2 ICN Asia Workforce Forum
※3 ICN International Workforce Forum

よりよいウェブサイトにするために
みなさまのご意見をお聞かせください