常任理事のマンスリー通信

    機関誌「看護」2024年5月号より

    常任理事 吉川久美子

    常任理事 吉川久美子

    看護DXの推進に向けて

    今年は暖冬に加え、季節外れの暖かさも影響し、花粉の飛散量が多く、花粉症の症状に悩まされている方を多く見かけます。幸いにも私は花粉症というものを知らずにこの年まで来ることができました。ある意味、現代人ではないのかもしれません。少子高齢化による人口構造の変化から看護職確保が難しくなり、看護職にもデジタル技術の活用や開発が求められています。
    先日、九州・福岡市の飯塚病院を訪問し、看護DXの取り組みについてお話をうかがいました。
    推進リーダーの下、看護職員全員が看護DXの必要性を理解し、現場からさまざまな意見・アイデアを聴取し、デジタル技術を開発・導入して看護の質向上につなげていました。自施設で実践できる医療機関は、まだ少ないと思います。本会では、人が担うべき部分、技術に任せる部分を明確にして、デジタル技術へ移行できる事項について検討するとともに、看護DXの推進に対する財源確保等の強化を国へ要望しています。

    常任理事 井本寛子

    常任理事 井本寛子

    インスリンバイアル製剤の取扱い時の注意  新人看護師へのオリエンテーションに活用を

    桜の季節になりました。各医療機関では、新人看護職員等のオリエンテーションに対応されていることと思います。さて、皆さまはPMDA※1医療安全情報をご存じでしょうか。これは、収集されたヒヤリ・ハット事例や副作用・不具合報告の中から、同様の事象が繰り返し報告されている事例などについて、PMDAが安全に使用するために注意すべき点等をわかりやすく解説しているものです。今年3月時点で68件がリリースされています。また、日本医療安全調査機構のホームページ※2には、専門分析部会において、収集した院内調査結果報告書を整理・分析した結果を再発防止策としてまとめた提言が19件公開されています。共通する事例として「インスリンバイアル製剤の取扱い時の注意」があります。これらの医療安全情報は事例や具体的な図説があり、経験が浅い新人には活用しやすい資料となっています。新人看護職員教育の機会を活用し、病棟スタッフ全員で抄読する等により再発防止に努めていきましょう。

    常任理事 森内みね子

    常任理事 森内みね子

    新たな看護職の人材活用システム「NuPS(ナップス)」

    現在、国では「マイナンバー制度を活用した看護職の人材活用システムの構築」を進めており、2024年11月ごろより看護職を含む22種類の医療関係の有資格者は「免許申請・変更申請のオンライン化・簡素化」「マイナポータルを活用した資格情報の閲覧」が可能になります。加えて看護職は、ご自身の基本情報や職歴、研修履歴等のキャリア情報を入力でき、ポートフォリオとして活用できるほか、ナースセンター・コンピュータ・システム(NCCS)への情報連携の同意により、さまざまなサービスを受けられるようになります。これらのサービスの実現に向けてNCCSは新たなポータルサイト「NuPS(ナップス)」を準備中です。「NuPS」の活用でキャリア情報をスマートフォンで管理できるようになり、都道府県ナースセンターからの情報をタイムリーに受けられ、スキルアップや復職、転職等に役立てられます。「NuPS」の周知の機会に自分事として関心を寄せ、同意の上で有効に活用していただけることを願っています。

    常任理事 木澤晃代

    常任理事 木澤晃代

    超高齢化時代の治療の選択と意思決定支援最適解はあるのか

    令和6年度診療報酬改定の議論では、地域包括ケアシステムの深化・推進、医療保険制度の安定性・持続可能性の向上として、医療機能分化・強化を促進する流れになっています。高齢者の入院の増加は医療費増大の要因の1つです。入院するのであれば、当然治療が目的となりますが、入院することが本当に高齢者本人の意向に沿った医療の提供につながるのかは再考の余地があります。今回、入院基本料等の通則に、入院基本料および特定入院料を算定している医療機関では、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえた適切な意思決定支援に係る指針を作成することが要件として追加されました。これまで以上に、患者・家族の意思決定は重要となります。治療の選択においては、絶対的な正解はないかもしれませんが、看護職には患者の療養段階のそのときその場での最善の意思決定を支援することが期待されていると思います。

    常任理事 田母神裕美

    常任理事 田母神裕美

    看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の利用しやすい仕組みをめざして

    介護保険法上のサービスにはさまざまな類型があり、看多機は「地域密着型サービス」(市町村長の指定)であり、原則として利用できるのは当該事業所が所在する市町村の住民とされています。ほかの市町村の住民が利用できる仕組みもありますが、利用に関して自治体の同意を得ることや、看多機事業所が住民の住む市町村から指定を受ける必要がある等、利用開始までに期間を要することや、手続きの負担等が課題となっています。本会は、厚生労働大臣に、看多機を地域密着型サービスとともに、居宅サービス(都道府県知事指定)にも位置づけることを要望しています。現時点で看多機は居宅サービスには位置づけられていませんが、課題解決に向けて、本年3月に広域利用の手引き※が作成され、市町村間で事前に合意することで都度の同意が不要となること等が厚生労働省から周知されました。利用者が必要とするときにサービスを提供するために、行政や幅広い関係者の理解を得て今後も課題解決に取り組みます。

    ※ 「看護小規模多機能型居宅介護の広域利用に関する手引き」

    常任理事 中野夕香里

    常任理事 中野夕香里

    地域保健活動をどう強化するか変化する既成概念に対応

    最近になって初めて塩麹を使い、目からうろこが落ちました。つくづく固定観念というのは根深いものです。一方で、私たちの仕事の領域にはさまざまな既成概念があり、それが時代の変遷の中で変わってきました。暮らし方、働き方、病気との対峙の仕方……。人生設計や幸せの測り方まで、多面的に、多様なものへと変化しています。今、地域ではこれらにかかわる多くの交絡する課題への対応が求められています。3月1日の保健師職能委員長会では、「2040年に向けた地区担当制を考える」をテーマに意見交換を行いました。国の施策が地域に向けて動く中で、それらを受け止めながら保健師としての役割を果たしていくことの困難さが際立ちましたが、それを打破する取り組み事例を共有することもできました。地域保健活動をどう強化するか。私たちも、専門職としての固定観念を大事にしつつ適度に解放して、変化する既成概念、地域のあり様に対応していくことが求められていると感じます。

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