常任理事のマンスリー通信

    機関誌「看護」2025年7月号より

    常任理事 吉川 久美子

    常任理事 吉川久美子

    任期終了のごあいさつ

    2025年度の日本看護協会通常総会の開催に向け、本会常任理事は現在(5月)、全国の都道府県看護協会へうかがい、代議員の方々に本会事業等の説明を行うとともに、代議員の方から本会事業や現場の状況についての意見をいただき、準備を進めています。私は、今回の総会をもって4期8年の任期が終了となります。臨床現場から日本看護協会へ移り、医療制度・政策関連事業、生涯学習支援や継続教育、日本看護学会、看護管理関連事業等を担当してきました。厚生労働省の医療制度・政策関連の検討の場への参加は、臨床現場では得られない貴重な経験でした。国民の健康を守るため看護職がよりよい環境で仕事ができるように、そしてその評価がなされるよう精一杯意見を述べてきましたが、発言の重要性や責任の重さを常に痛感してきました。今後は、時間に追われる生活から少し離れ、一国民の目線で医療や看護のあり方を考えていきたいと思います。8年間ありがとうございました。

    常任理事 井本 寛子

    常任理事 井本寛子

    「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策に関する検討会 議論の整理」が提示

    「子ども未来戦略方針」(※1) において「出産費用の保険適用の導入を含め検討する」と示されたことを受け、2024年6月に検討会が設置され議論を重ねてきました。最終回となった本年5月の検討会では「議論の整理」を検討。これには、妊娠・出産・産後に関する支援等のさらなる強化の方向性として、「出産に関する支援等」「妊娠期、産前・産後に関する支援等」の2つの視点が挙げられ、前者に「出産に係る標準費用を全て賄えるようにするとの基本的な考え方に基づき、妊産婦の実質的な経済的負担を軽減していく必要がある」と示されました。また、「助産所・助産師の活用について」には、「今後の具体的な制度設計の検討においては、新たな枠組みの中に助産所も位置付け、妊産婦がどのような出産場所を選択したとしても、十分な公的支援が受けられ、それによって選択の幅が狭められることのないようにすべきである」と記載。今後は別の場で議論が継続されますので注視していただきたいです。

    ※1 2023年6月策定

    常任理事 木澤 晃代

    常任理事 木澤晃代

    看護職員の処遇改善につながる財政支援と令和8年度診療報酬改定について要望

    日本看護協会は、物価高騰の折、他産業並みの賃金上昇となるよう診療報酬上の財政支援などを厚生労働省老健局に要望。次期診療報酬改定の要望については、「2040年の医療・介護提供体制の構築に向けた機能分化・強化と連携の推進」「人材確保、働き方改革等の推進」を軸としました。地域完結型医療の実現には、医療と介護の連携や多職種連携、タスク・シフト/シェア、ICT活用など、多様な取り組みの強化が必要です。これらを推進するため看護管理機能の強化に対する評価を要望。医療機能分化、病棟再編、人材育成など、病棟・部署における看護管理機能の強化の必要性については、体系的な看護管理の教育を受けた認定看護管理者の実績を根拠として説明しました。鹿沼均保険局長は医療現場での核となる人材の必要性を認識されていましたので、本会が現在、見直しを行っている認定看護管理者制度についても、全国各地で地域偏在なく看護管理教育ができる体制整備に向けて関係機関および関係者とともに進めていきます。

    常任理事 田母神 裕美

    常任理事 田母神裕美

    教育力を磨こう!

    学生時代や新人のころを振り返ると、ほぼすべての方は、話が尽きないのではないでしょうか。卒後何年たっても忘れられない、先生、指導者、先輩・同僚の言葉と看護に向き合う姿勢があります。看護教員や看護職一人ひとりがどのように教育力を発揮するかは、申し上げるまでもなく看護職育成の大きな力となり、ひいては組織の看護の質向上につながります。私はこれらを「教育力」と銘打って、その力が人口減少社会の中で、看護を持続可能なものとするために最も重要なことの一つであると考えています。実習指導者講習会、専任教員養成講習会のほか、新人看護職員に関する実地指導者研修や、教育担当者・研修責任者研修、あるいは院内研修等で自身の教育力を磨く機会があります。日々の看護の中においても常に教育があり具現化されています。教育や成長は当然、キャリア初期のみの課題ではありません。教育にどのように取り組むか、重要な課題として考えていきましょう。

    常任理事 松本 珠実

    常任理事 松本 珠実

    「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」の結果を公表

    厚生労働省では地域保健と職域保健の連携の重要性に鑑み、1999年度からその連携のあり方について検討し、都道府県および二次医療圏における「地域・職域連携推進協議会」の設置を推進しています。2024年度、本会では事業場の看護職と都道府県保健所保健師を対象に、「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」を実施しました(※)。その結果、事業場の看護職のうち自治体の健康増進計画等を知っている者は4割弱であり、自治体と連携している者は約3割でした。一方、都道府県保健所の保健師は、9割近くが地域・職域保健に担当者として参画しているものの、事業場への直接的な健康支援に取り組んでいる割合は4割に満たない状況でした。また、事業場で中心となる課題はメンタルヘルス対策であるのに対し、保健所では生活習慣病対策の一環として職域保健を捉えているなどのミスマッチも明らかになりました。今後のさらなる連携のためには、会議体を超えた相互の理解が重要です。

    ※ 本号p.14-16、TOPICS参照。日本看護協会ホームページにおいて調査結果を公表(保健師関連事業

    常任理事 橋本 美穂

    常任理事 橋本 美穂

    世界で評価される日本の看護

    6月9日にフィンランドで開催された国際看護師協会(ICN)大会開会式において、石川県立看護大学学長の真田弘美氏が、2025年度FNIFインターナショナル・アチーブメント・アワード(※1)を受賞されました。本賞は2年に1回、国際的に看護の分野に多大な貢献をした看護師に対して贈られるもので、日本からの受賞は初めてです。真田氏の老年看護、創傷管理、災害対応における国内外の業績や、リーダーシップ、次世代育成が高く評価されました。心よりお祝い申し上げます。また、ICNがBBC Global Newsと共同で制作し、世界の看護職に光を当てた動画シリーズ「Caring with Courage(勇気あるケア)」(※2) のテーマの一つ「A Day in the Life(ある日の生活)」に「サロンみんなの保健室」代表の渡邊カヨ子氏の動画が取り上げられています。40年の病院勤務の後に地域住民の健康支援のためにNPOを立ち上げられた活動が世界に向けて紹介されています。日本の看護が世界に認められていくことを誇りに思います。

    ※1 「協会ニュース」6月号参照
    ※2 CARING WITH COURAGE(ICNホームページ)

     

    よりよいウェブサイトにするために
    みなさまのご意見をお聞かせください