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2017年

8月号

前ICN第一副会長/関東学院大学大学院看護学研究科・看護学部 教授  金井 Pak 雅子

アジア・オセアニア地区を代表してICN理事に

5月31日でICN理事の任期を終えた。ICN理事選挙に日本看護協会(以下:JNA)からの推薦を受けて立候補したのは、2009年6月に南アフリカ・ダーバンで開催された大会のときであった。ICN理事は、世界を7地区に分けた地区別に議席数が決められている。日本は「第7地区」*1で、3議席ある。ダーバンの大会では、5名が立候補していた。正直なところ選ばれるか否か心配であった。JNAから多大な支援を受け、もし選ばれなかったら申しわけない気がしていた。

【写真】会員協会代表者会議(CNR)会議場にて

ICNの選挙活動は、かなり厳しく規制されている。立候補者が配布できるものは2種類のリーフレットのみで、その他の物を配布してはいけないことになっている。記念品などを渡すことも禁じられている。2009年からその規制が大変厳しくなった。選挙活動は一定期間、候補者1人ひとりにブースが与えられるのみであり、そこにリーフレットを置き、立ち寄る人々にPRする。会員協会代表者会議(以下:CNR)が開催される部屋の中での選挙活動は一切禁止されている。例えば、候補者の顔や名前が印刷されたTシャツなどを着て会議に出席することも禁じられている。机の上に候補者のリーフレットを置くこともできない。もし見つかったら、係の者に即回収されてしまう。その旨のアナウンスも頻繁にされる。なぜそのように厳しいのかというと、富める国が豊富な財源を活用して、物を配ったりすることを避けるためである。

理事は4年任期だが、連続2期まで立候補できる。2013年のメルボルン大会の理事選挙においても第7地区から4名の立候補者があった。このときは第7地区のみ再選挙が行われた。初日の選挙で3位と4位の候補者が同数票であったからである。今回バルセロナ大会では、立候補締め切り日までに、第7地区からは2名(韓国、台湾)の応募があったのみであり、2回目の募集で5名(中国、タイ、フィリピン、ニュージーランド、オーストラリア)が立候補し、5名で1議席を争う結果となっ た。そして、中国の立候補者が選ばれた。

第一副会長として財務企画委員会を担当

理事として2期目は、第一副会長を務めることとなった。会長は、理事とは別に選挙で選ばれるが、3名の副会長は、第1回理事会で自薦・他薦により理事たちの投票で決まる。同じ地区から2名以上の候補者がいた場合、まずその中から1名を選挙で選ぶ。実は、私の場合、もう1名候補者がいた。投票の前に、各自2分間スピーチをして、なぜ自分が副会長に適しているか即興でアピールする。全体投票で、得票数の多い順に第一、第二、第三副会長が決まった

第一副会長の役割は、会長を補佐するのみならず、「財務企画委員会」の委員長を務める。この委員会は、ICNのお金に関することを扱う。そして、2年に1回開催されるCNRで、財務報告をする。このときは、さすがに緊張する。会員協会代表の方々は、当然のことながら自分たちが納めている会費がどのように運用されているのか大変気になる。ときには、厳しい発言も飛び交う。会議資料として、事前に予算や決算報告、そして会員協会それぞれの会員数ならびに過去3年間の会費納入状況が記された一覧表が配布される。

【写真】左から、カルア第二副会長、シャミアン会長、筆者、ケネディ第三副会長(職位は大会前のもの。ケネディ氏は新会長に)

財務企画委員会のメンバーは、会長、3名の副会長およびCEOである。これらのメンバーは、エグゼクティブとして、年6〜7回とかなり頻繁に会議を開く。そのほとんどがスカイプによる会議である。メール、スカイプと大変便利なツールが出てきたものである。会議の前には、毎回50〜70ページの量の資料がメールに添付して送られてくる。それらを熟読してから会議に臨む。スカイプによる会議は、時差の関係で、日本の夜に開催された。そのほうが私にとっても都合がよかった。1回につき最低でも3時間、長いときで6時間費やしたこともあった。会議は、大体2日連続して行われた。このバルセロナ大会に向けて、さまざまな準備があり、今年3月の会議は夜9時からスタートし終了したのは午前3時であった。

理事会は、第1期目は年1回のみであったが、第2期目はメルボルン大会での改革案を実施するため、5月と11月の年2回開催した。

2013年のメルボルン大会のCNRでは、「高い組織率、大規模協会の会費の減額」「各国1票の見直し」や「ガバナンス費用の適正化」などが決議され、2015年の会議では、会員協会の会員数と組織率を評価し票数がプラスされることが決まった。そして今回のバルセロナ大会から運用されたのである。一番票数が多い会員協会の持ち分は9票である。ちなみに日本は、会員数は約50万人で一番多いが、組織率(JNAに入会している看護職)は44.3%であるため、8票であった。

今回のCNRから電子投票が行われた。これまでの決議は、それぞれの協会の名前が書かれた札を上げ、それを係が数えるという方法で行っていた。そのため、票を数えるだけでも時間と労力がかかっていた。今回からは投票開始後2〜3分で結果が出るので、かなりの時間短縮になった。

ICN運営は、会費収入が主であるが、「1つの看護協会が支払う会費は会費総額の1割以下にする」ことも決議された。これは、現段階ではJNAが該当する。日本全体の会員数は世界でもダントツ1位である。さらに、ICNの運営も会費収入に頼るのみでなく他の事業も積極的に取り入れ、2015年では会費収入が全収入の84.4%であったのが、2017年は69.2%まで下げることができた。2年ほど前からICN本部には、ビジネス開発を担当するスタッフが雇用され、さまざまに活躍している。

財務企画委員会で、いつも話題になるのが会費納入状況である。各会員協会から毎年100%徴収できるとは限らないからだ。会費納入は、会員として当然の義務であるが、中には払いたくても払えない国もある。例えば紛争が起きていたり、エボラなどの感染症が蔓延していたりすると、会費を納めることができない。だからといって、すぐに退会となるわけではない。委員会でその国の状況を丁寧に吟味し、「異常事態」としたり、回転資金を充てたりする。国によっては、銀行を通して海外送金ができない場合もある。日本に住んでいると想像できないが、特に途上国においては、看護職への賃金の支払いが滞っている国もある。

“impact”から“together”へ

この4年間は、ジュディス・シャミアン会長の素晴らしいリーダーシップの下、ICNはめざましい改革を遂げた。会長は就任演説でいわゆる「合言葉」*2を1つ選定する。シャミアン会長の合言葉は“impact(強い影響)”であり、この4年間の実績は看護界のみならずWHOなどの関連機関にも強い影響を与えた。それを一番身近に感じて一緒に活動できたことは、これまでの人生においても素晴らしい学びであった。新会長アネット・ケネディ氏の合言葉は“together”である。

任期8年間は、ICN理事としてさまざまな国に訪問する機会があった。韓国では、李政権時、官邸にうかがい大統領夫人を訪問した。私の姑がソウル出身であることをお話しすると、とても親しみを持ってくださった。台湾では看護師協会100周年記念大会があり、当時の馬大統領と官邸で談話をした。フィリピン看護師協会創立93周年大会がミンダナオ島ダバオ市で開催されたときは、当時のダバオ市長のドゥテルテ氏(現大統領)にもお会いする機会があった。昨年は、インドのハイデラバードで開催されたアジア・パシフィック小児看護学会にてICNを代表してスピーチを行った。インドでは路上生活者(子どもを含む)の実態を目の当たりにし、かなりの衝撃を受けた。

出張の際には交通費、宿泊代のほか食事代は支給されるが、ICN理事は、まったくのボランティアである。しかし、数々の貴重な体験は看護職として、教育者として、研究者として、さらには人間として何物にも代えがたい素晴らしいものである。最後に、これまで支えてくださったJNAの久常節子元会長・坂本すが前会長はじめ関係の皆さまに厚くお礼を申し上げたい

  • 1  22の会員協会から成るアジア・オセアニア地域
  • 2  前会長のローズマリー・ブライアント氏の合言葉は「access」、その前の会長であった南裕子氏は「harmony」であった。