国際情報のページ

2024年

5月号

国際助産師の日

日本看護協会健康政策部助産師課

国際助産師連盟(ICM)は、助産師の業務の重要性について意識を高めることを目的に、5月5日を「国際助産師の日( International Day of the Midwife /IDM)」としている。

「国際助産師の日」のテーマ

ICMは、毎年、「国際助産師の日」のテーマを設定しており、今年は「Midwives:A VitalClimate Solution」※1 とした。このテーマとしたのは、ICMが2024年~2026年の取り組むべき優先事項として気候変動と人道支援を掲げており、気候変動が妊産褥婦や児・女性に与える影響に対し、助産師のかかわりに注目しているからである。
ICMによると、助産師の継続的なケアの効果として、母乳育児の支援によってミルクづくりに必要な水の使用量や廃棄物を減らすことが期待でき、母児の健康と地球の双方にとって利益につながるという。また、気候変動に起因した自然災害発生時には、被災した妊産褥婦や児・女性に対し、継続した身体的・精神的なケア、健康支援を、周産期と女性の健康の専門家である助産師が行うことが重要であるとしている。

助産師による継続ケアの効果

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日本には、安全で快適な妊娠・出産に向け、医師との連携の下で、助産師による妊娠期から育児期まで継続したケアを提供できる体制として、院内助産・助産師外来がある。
助産師が継続ケアを行うことで、安全・安心な妊娠、出産、育児環境を提供でき、高い満足度が得られることは、わが国において、すでに明らかにされていることである。しかし、今後はこれに留まらず、助産師のケアが気候変動問
題の解決策の一助となるような活動が期待されている。

毎年、日本のICM会員協会(本会、日本助産師会、日本助産学会)は共同で「国際助産師の日」のポスターを作製しており、今年は時代に合わせてデジタル媒体でもつくった。本会のホームページ※2やSNSからダウンロードできるため、5月5日には「国際助産師の日」を思い出すとともに、助産師を広く社会に周知するためにぜひポスターも活用いただきたい(図表1)。

※1 https://internationalmidwives.org/idm-theme-announcement/
※2 国際助産師の日

 

なぜ看護をするのか

国際看護師協会Western Pacific/Subarea Asia理事

国際看護師協会の理事としての活動

国際看護師協会(ICN)の理事の役割には、西太平洋地区を代表して、さまざまな場で発信する活動が含まれています。
カナダのヨーク大学のNightingale Initiative for Global Health(NIGH)センターでは、国際連合訓練調査研究所などの後援を受け、世界中の看護師の声を発信する「声シリーズ」を全6回にわたって収録し発信しています。その4回目に当たる2月13日に、西太平洋地区のスピーカーの1人として声を届けました。このシリーズの1回のプログラムは90分間で、最初に前WHO看護専門官のエリザベス・イロ氏が、続いてオーストラリア、日本、フィリピン、韓国、ニュージーランドの大学教員やコンサルタントが話をしました。
このプログラムの目的については、依頼を受けた際、次のように説明されました。
「21世紀のヘルスケアのために、そして関連する社会的、生態学的、人権的問題のために、私たちは、すでに確立した実践を継続する一方で、革新的で新しい実践の場を創造することもできる。私たちは、看護師であることの充実感と満足感、つまり、私たちの世界に健康と癒やしをもたらし続けるよう鼓舞されることで、世界的なアドボカシーの模範となることができる。ナイチンゲールはこのビジョンを私たちに伝えた。私たちが何者であるか、私たちに何ができるか、私たちは誰のために、そしてなぜ看護をするのか」
プログラムでは、このように「なぜ看護をするのか」について、看護師の声を通して明らかにすることが求められました。

日本からの発信

今回、1月1日に令和6年能登半島地震が発生したことから、現地で支援活動に注力している石川県看護協会の小藤幹恵会長をはじめ、金沢大学附属病院の辻千芽看護部長、現地に看護師を派遣している国立高度専門医療研究センター6病院を代表して栗原美穂看護部長、さらに、13年前の東日本大震災の際、相馬地区でリーダーシップを発揮した堀内由美さんに協力を依頼し、「なぜ看護をするのか」について、メッセージや写真を送ってもらい発表しました。
金沢附属大学病院では、被災地から認知機能の低下した高齢者や透析患者などを積極的に受け入れました。辻看護部長は、その際のエピソードを広く集め、その中で「透析患者の表情が硬く、手が冷たかったので、温かいタオルでマッサージすると、少しずつ話してくれるようになった」や、「子どもたちがおびえて声が小さかったので、できるだけそばにいるようにしたら、大きな声が出るようになった」などの話を紹介してくれました。
堀内看護部長は、「震災時の看護は、そばに寄り添うことで与える安心感、看護の手の技術力、状況判断の適切性……これらすべてが求められると思います。私たちはいつ起こるかわからない災害に対し、看護の力が人々の生きていく力になることを信じ、その役割を果たそうとするのです。被災者でもある看護師が使命を全うしようとするのは、やはり看護の仕事が天職だと感じているからではないでしょうか」という言葉を寄せてくれました。

看護師のwell-being

紹介した写真やエピソードから、看護師の笑顔によって被災した人たちが安心感を抱き、自分を取り戻したり、また頑張って生きようと思うようになったのだと気づきました。そこで、看護師の笑顔が失われないよう、ICNの理事として、看護師のwell-being を確かなものにしていくことが重要だと発信しました。
3月にはオンライン理事会、5月にはジュネーブで対面の理事会が予定されています。引き続き、本欄を通じて、ICNからのメッセージをお届けしたいと思います。

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