会長の手帳(日本看護協会 会長 秋山 智弥)
機関誌「看護」2026年1月号より
第23回国際看護師協会アジアワークフォースフォーラム・第19回アジア看護師協会同盟会議に参加して
11月12日~13日の2日間、第23回国際看護師協会アジアワークフォースフォーラム(※1)が北京で開催されました。中華護理学会がホストを務め、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、マカオ、マレーシア、モンゴル、フィリピン、シンガポール、台湾、タイから各国・地域の看護師協会代表らが一堂に会しました。私としては会長就任後初めての国際会議でしたので、まずは、アジアの各看護師協会の方々に顔を覚えていただき、親交を深めるよい機会となりました。会議では、ハワード・カットン氏(※2)によるICNの最新動向の報告に続き、参加国・地域の協会からも最新動向が報告され、看護を取り巻く情勢とともに看護の労働力にかかわる現状と課題が共有されました。日本国内においては都道府県をまたぐ人口の流入出や看護師の地域偏在、少子化に伴う18歳人口の減少と養成機関の定員割れ、そして何より物価高騰や労働に見合う処遇改善が課題となっていますが、アジアの多くの国々では、国内の偏在に加え、国外への人材流出も大きな課題となっています(※3)。そこにはやはり国家間における厳然たる所得格差が存在しており、また、英語教育が浸透している国ほど、より高い収入を求めて海外に流出する傾向が強く見られています。人口1万人当たりの看護師数で見ると日本は121人(※4)とアジアの中では飛び抜けて高く、日本・韓国・中国・オーストラリアなどを含むアジア西太平洋地域全体は44.0人(※5)、東南アジア地域全体は17.4人(※6)となっています。アジアの大半の国々の人口当たり看護師数は日本の半分にも満たず、病院看護は家族等の付き添いに頼らざるを得ないのが現状です。一方で、韓国やフィリピン、マカオなど、看護基礎教育の大学教育一本化が先んじて行われている国もあり(※7)、看護の専門性の明確化と看護師の資質向上をはかるための基礎教育や継続教育のあり方を検討していく上で、アジア各国の動向にも注視しつつ、課題の共有をはかりながら連携・協力し合い、看護のプレゼンスの向上に貢献していく必要性も強く感じました。
翌14日には第19回アジア看護師協会同盟(※8)会議がマカオ看護師協会のホストにより同会場で開催されました。看護界には労働以外にもさまざまな課題があり、ワークフォースフォーラムよりも幅広いテーマを取り上げ、持続的かつ効果的に連携・協力をはかりながら、好事例の共有や課題解決に向けた議論を積み重ねていくことが申し合わせられました。
わが国においては、公表した「看護の将来ビジョン2040」の実現に向けてチャレンジを続けるとともに、アジアの看護の発展、プレゼンスの向上に向けて、国を超えて力を合わせることに今からワクワクしています。何より、平和あっての健康。平和を脅かすことに対しても看護師としてもっと声を上げていかなければなりません。来年の開催はマカオです。
※1 ICN-AWFF: International Council of Nurses - Asia Workforce Forum
※2 国際看護師協会(ICN)CEO
※3 日本看護協会: 海外の看護事情 看護師の国家間移動と各国の受け入れ状況,2015.[2025.12.1確認]
※4 日本看護協会: Nursing in JAPAN, p.20,2023.[2025.12.1確認]
※5 ICN: State of the world’s nursing 2025,p.130.[2025.12.1確認]
※6 ICN: State of the world’s nursing 2025,p.124
※7 日本看護協会: 海外の看護事情 看護師の教育規制,2025.[2025.12.1確認]
※8 AANA: Alliance of Asian Nurses’ Association
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