会長の手帳(日本看護協会 会長 秋山 智弥)

機関誌「看護」2025年12月号より

第21回ヘルシー・ソサエティ賞授賞式を挙行して

10月14日、第21回ヘルシー・ソサエティ賞授賞式を挙行しました。本賞は、「より明るい今日とより良い明日に向けて、健全な社会と地域社会、そして国民のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献した人々を称える」ことを目的として、2004年に本会とジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループが創設し、昨年からは日本イーライリリー株式会社との共催によって実施しているもので、今回は5名が受賞されました(※1)。

教育部門の受賞者は早稲田大学人間科学部名誉教授の木村利人さん。バイオエシックス(生命倫理学)という新たな学問分野を切り拓き、そのパイオニアとして1970年代から国内外で活躍してきました。「命を守る学問」は今日、インフォームド・コンセントの普及として実を結んでいます。「幸せなら手をたたこう」の作詞者でもあります。

ボランティア部門の受賞者は、あしなが運動創始者の故玉井義臣さん(※2)。これまでに1,100億円以上を募金活動で集め、11万人の遺児の進学を支援しました。交通事故で母親を亡くした自身の経験から交通遺児救済活動を始め、1969年に交通遺児育英会を創設。支援を受けた遺児たちが災害遺児の会を設立すると、その支援を受けた遺児たちが恩返しとして病気遺児の会を設立、支援の輪が広がり、1993年には統合されてあしなが育英会が誕生しました。

医師部門の受賞者は国立健康危機管理研究機構危機管理・運営局DMAT事務局長の小井土雄一さん。1995年の阪神・淡路大震災での教訓から2005年に災害派遣医療チーム(DMAT)を創設し、今なお災害医療の進化・普及に尽力しています。DMATには1,840チーム、1万8,909名の隊員が登録され(※3)、令和6年能登半島地震では過去最大の1,139チームが現地に入りました。

医療・看護・介護従事者部門の受賞者は日本訪問看護財団理事の佐藤美穂子さん。訪問看護師による手厚いケアを受けた英国での経験から日本での訪問看護普及への思いが募り、1986年に本会訪問看護開発室に入職。日本では1983年に訪問看護に対する診療報酬が認められ、1992年には老人訪問看護制度がスタート。わが国の訪問看護黎明期から制度設計や普及、教育活動などに尽力してきました。

時事部門の受賞者は認知症介護研究・研修東京センター副センター長の永田久美子さん。1990年代に認知症グループホームを全国で立ち上げ、2003年に認知症本人の“声”を起点(主語)とした新たなケア方式を開発・実践し、「認知症になってからも個性と能力があり、地域の一員として希望を持って当たり前に暮らす」というパラダイムシフトの転換へと結実。認知症がある人もない人も、自分らしく暮らせる地域づくりに貢献しました。

それぞれの分野で果敢かつ献身的に取り組まれ、卓越した行動力で健康な社会の発展に尽力された受賞者の皆さまのご功績に深く敬意を表するとともに、私たちもまた看護師としての誇りを胸に、後に続きたいと思います。

※1   第21回ヘルシー・ソサエティ賞受賞者のご紹介
※2   2025年7月逝去
※3   2025年4月現在   

よりよいウェブサイトにするために
みなさまのご意見をお聞かせください