常任理事のマンスリー通信
機関誌「看護」2026年6月号より
常任理事 井本 寛子

8年の任期を振り返って①
本年6月の通常総会をもって、常任理事を退任します。今回、次回では在任中の活動を通してお伝えしたいと思ってきたことを述べます。在任中は、看護職の裁量拡大を活動の重要な柱とし、医療ニーズの高度化・多様化が進む中で、看護職がより主体的に専門性を発揮できる環境の整備に力を注いできました。また、助産関連事業では、母子の安全と質の高いケアの提供をめざし、現場の声を大切にして施策を進めてきました。令和8年度診療報酬改定で産科管理加算が創設されたことは、安全で快適な助産ケア提供体制の後押しとなる一歩だったと感じています。こうした活動で強く感じたのは、私たち一人ひとりが「専門職としての自覚」を高め、その専門性に誇りと責任を持ち、自律的に判断し行動することが、質の高い看護ケアの提供につながり、国民の信頼を得られるということです。その積み重ねが、専門職としての評価や働きやすい環境づくりの後押しになることを体感した8年でした。
常任理事 木澤 晃代

B課程認定看護師教育の見直し内容が決定
社会情勢の変化によって医療提供体制も大きく変わり、就業看護師数の減少が予想されています。医療機能の分化のスピードが速いことに加え、看護師の需給バランスが課題となる一方、患者のニーズが多様化しており、ロールモデルとなる専門性の高い看護師の育成は急務です。こうした中、就業場所を長期間離れることなく受講でき、かつ質が担保された認定看護師教育の重要性がいっそう高まるため、2020年に開始したB課程認定看護師教育を見直し、2028年から認定看護師教育を1本化します。特定行為研修と認定看護師教育を分け、特定行為研修の共通科目の修了を入学要件とし、2028年度から2030年度末までは、この入学要件の移行措置を設けます。これらの見直しにより、特定行為研修を修了した人が、専門分野を有する認定看護師教育を受けやすくなります。見直し後の認定看護師教育の概要については、随時、情報提供いたします。また、地域による偏在なく認定看護師を育成できる体制も検討しています。
常任理事 田母神 裕美

要介護高齢者を支えるため、看護職の人材確保策の強化を
3月30日の社会保障審議会介護給付費分科会で、介護報酬における「やむを得ない事情における人員欠如に係る特例的な取扱い」に関する報告がありました(※)。介護報酬では、通所・多機能・入所・居住系サービスについて、適正なサービス提供確保の観点から、介護職員、看護職員等の配置が人員基準を下回っている場合、その期間や割合による減算が定められています。分科会では、人員基準から1割未満の減少の場合、年1回に限り3カ月を超えない範囲で減算を猶予する方向性が報告されました。分科会委員として、「人員配置は利用者へのサービスの質に直結する極めて重要な基準であり、人員欠如の状況が継続することに懸念がある」「介護領域における看護職が果たす役割や意義の周知、処遇改善等、本来取り組むべきことへの対応が不可欠である」と意見を述べました。高齢者の心身の適切なアセスメント、的確な判断・対応、さらに予防を含めた看護職の役割の重要性から、人材確保策の強化の必要性は明確です。
※ やむを得ない事情における人員欠如に係る特例的な取扱い(報告)(厚生労働省作成資料)
常任理事 松本 珠実

災害支援ナース特設サイトの開設
厚生労働省医政局に登録されている災害支援ナース養成研修の修了者は、2025年度末で1万1,472名となり、旧の仕組みでの登録者数を上回りました。日本は自然災害のリスクが高く、いつ、どこで起きても、常に迅速な対応が求められます。これまで、「災害支援ナースとして派遣が決まったときに、どのような準備をすればよいのか」「所属施設の看護管理者として、どのような動きをすればよいのか」といった悩みが日本看護協会にも届いており、解決策はないものかと模索しておりました。このたび開設した災害支援ナース特設サイト(※)では、「災害支援ナースを目指す皆様へ」「災害支援ナースの皆様へ」「看護管理者の皆様へ」の3つのバナーから、求めている情報にスムーズにアクセスできるよう工夫しました。災害支援ナースが自身の活動経験を語った座談会など、読み物も充実した構成になっています。ぜひ、お立ち寄りください。
※ 本号p.8~9、TOPICS参照
常任理事 橋本 美穂

看護職の確保に向けて その①
看護職の確保を考えるときに、看護職の働き方のトレンドを知ることは重要です。就業看護職員の人口ピラミッドを見てみると、2004年ごろまでは、低年齢層になるほど数の多いいわゆる富士山型をとっています。しかし、2008年のデータからは明らかにこの形が崩れ、30代の人数が多くなり、以降、このボリュームゾーンの看護職の年齢が上がっていくのに合わせ、40代が多い形へと変遷していきます。富士山型の時代は、新卒看護職員の確保が最重要課題であったことは当然です。今も、新卒採用が重要なことに変わりはありませんが、確保・定着においては、働いている看護職のキャリア支援、スムーズな転職支援、働くことに制約がある潜在看護職員の復職支援など、他のチャンネルの重要性が増しています。今後は、おおむね右肩上がりだった新卒看護職員数が減少していきます。将来に向け、働き方のトレンドに沿った確保策がいっそう重要になります。
常任理事 淺香 えみ子

改正労働施策総合推進法等の実施に向けた準備を
新年度が始まって、新しい顔ぶれが医療現場の職員や患者・利用者に見られるようになりました。多様な価値観が交差し、好ましい変化が生じる一方、価値観の相違等によるハラスメントの発生リスクも高まる時期です。改正労働施策総合推進法が10月に実施され、事業主(施設側)に、いわゆるカスタマーハラスメントを含むハラスメント対策が義務化されます。措置義務の不履行に対し罰則規定があるほか、対策の未実施情報が公表されることは、組織への信頼を低下させ、人材確保を含む組織運営を脅かすことにつながります。カスタマーハラスメント対応の際に、その定義の1つ「社会通念上許容される範囲を超えたもの」の判断には難しさがありますが、元来、事業主には職員への安全配慮義務があり、判断の有無によらず職員をハラスメントから守る観点からの対策が有用です。今一度対策の準備状況を確認していただき、看護職のウェルビーイングを確保する機会になることを期待します。
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