日本看護協会会長 坂本すが
日本看護協会の会長に就任いたしました、坂本すがでございます。 これまで私は久常節子前会長のもと、副会長を3年務めてまいりました。その間、本会は国内が厳しい経済情勢にあるなかで、「保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律」の改正による、新人看護職員の卒後臨床研修制度の努力義務化など、看護の質を向上させていくために重要な政策を提案し、実現してまいりました。提案にとどまらず、「実現していく」重要性を強く感じています。
施策の法制化・制度化に取り組んできた前体制の方針を継続し、制度に一定の枠組みを持たせることが、「看護職の働きがい」や「質の向上」「患者の安心・安全」につながると考えています。
就任に際しての所信表明として4点挙げたいと思います。6月6日、7日に本会の通常総会が開催されましたが、そこで、「看護の知恵と力を結集して、安全・安心な医療・看護を提供しよう 東日本大震災の復旧・復興に貢献しよう」というスローガンと、8つの重点政策・重点事業を進めていくことが確認されました。
新公益社団法人移行にあたり、基本理念に「看護職が生涯を通じて安心して働き続けられる環境づくりを推進する」を、新定款では主たる事業として「看護職の労働環境の改善及び福祉の向上による国民の健康及び福祉の増進に関する事業」を位置づけています。昨年度に続き今年度も「労働条件・労働環境の改善」を重点政策・重点事業のトップに掲げ、最優先事項として取り組みます。
危機的状況にある日本の医療を救い、国民に安全・安心の医療・看護を提供するためには、看護職の労働条件・労働環境の改善が急務です。看護職の労働環境はまだまだ厳しい状況にあり、交代制勤務や夜勤回数の多さ、超過勤務・長時間労働、賃金体系など多くの課題があります。今、現場の看護職は、疲弊しやりがいを持てないでいます。看護職が看護に専念できる職場、特に中堅看護師がやりがいを持って専門職としていきいきと働ける労働環境の整備を進めるために、全力で取り組んでいきたいと思います。
現在、議論が続けられている特定看護師(仮称)の問題ですが、患者さんにとって質の高い医療の実現につながること、安心・安全の医療につながること。このことが第一に検討されなければなりません。患者さんの安全が担保できないことがないように「法制化・制度化」と「教育の充実」は、質の観点から切り離すことはできません。特定看護師(仮称)、専門看護師、認定看護師、ジェネラリストの看護師の関係は、24時間、長い時間にわたり患者さんを看ているジェネラリストの看護師をメーンに据えて、各々看護師が補完する体制で患者さんの最善を目指し、協働していくべきであると考えています。
3点目は看護教育の拡充です。2009年の保助看法の改正にもとづいて、看護基礎教育の大学化、保健師・助産師教育の大学院化を推進します。また、新人看護職員の研修制度を含め、看護職のキャリアパスの支援を充実させていきます。
今般の東日本大震災という未曽有の大災害において、被災地で自らも被災しながら職務を全うされている看護職、また支援に入った災害支援ナースをはじめとする看護職の勇気ある支援活動を誇りに思います。同時に、改めて看護の使命を果たすべく一丸となって進んでいかなくてはならないと決意しております。 日本看護協会では、今年の重点政策・重点事業の1つに「東日本大震災復旧・復興支援事業」を掲げています。私自身、石巻市の福祉避難所を訪ね、被災地の現状を目の当たりにして、長期的な支援体制の必要性を強く感じました。「被災会員の実態調査」「被災地訪問看護ステーションの充実、強化」「原発避難地域の保健活動の支援の検討」「被災看護職の雇用や労働環境・条件問題の対策と検討」「被災地の女性や母子のケアに関する検討」を行い、復旧・復興へのプロセスが効果的に進められるようサポートを継続してまいります。
本会は、この4月から新たに公益社団法人として発足しましたが、私はその職能団体としての重要性と社会的役割を強く認識しています。久常前会長の意思を引き継ぎながら、都道府県協会と連絡を密にし、職能団体としての組織強化に努めてまいります。 私は、看護の臨床現場で34年、そのうち看護管理者として14年、そして看護系大学の学科長として6年の経験を踏まえ、中央社会保険医療協議会(中医協)の専門委員として、また「チーム医療推進会議」の委員として、看護の立場から積極的に発言してまいりました。より一層現場に近い協会活動にしていくために、看護管理者や看護スタッフの思いを受け止め、現場重視を貫いていきたいと思っています。
2011年6月10日