看護管理者の皆様へ
災害支援ナースの派遣体制を整えるには、看護管理者の皆様のご理解とご協力が不可欠です。このページでは、派遣の仕組みや活動時の事故補償への対応、費用負担のほか、災害支援ナース所属施設の看護管理者体験談などについてご案内します。
災害支援ナース派遣の仕組み
災害支援ナース養成研修を修了すると、厚生労働省医政局に登録されます。災害支援ナースのうち、医療法に基づく「災害・感染症医療業務従事者」として登録されるのは、医療機関に勤務する看護職です。大規模自然災害の発生時及び新興感染症の発生時・まん延時に、医療機関と都道府県が締結した協定に基づき、派遣されることになります。
なお、医療機関以外に勤務する看護職及び所属する施設がない看護職は、各都道府県が地域の実情に応じて、都道府県と医療機関以外の間で締結した災害支援ナースの派遣に関する協定に基づき派遣されます。所属する施設がない看護職を派遣する場合は、都道府県が災害支援ナースを直接雇用すること又は都道府県看護協会が災害支援ナースを雇用した上で、都道府県と都道府県看護協会が協定を締結することにより派遣されます。
災害支援ナースは、まずは被災地等が属する都道府県内で活動することが基本となりますが、災害等発生時において都道府県を越えた協力が必要な場合には、他の都道府県において活動することがあります。
災害支援ナースの身分
災害支援ナースは、原則として派遣元の医療機関等の職員として看護活動に従事します。
※医療機関以外に勤務する看護職や所属する施設がない看護職も、都道府県の調整により派遣することが可能です。災害支援ナースの派遣要請
都道府県は、災害支援ナース活動要領等に基づき、災害や新型インフルエンザ等感染症等について対応を行う必要が生じた場合は、医療機関等の管理者に対し、災害支援ナースの派遣を要請します。協定を締結した医療機関等は、正当な理由がある場合を除き、この要請に応じなければなりません。ただし、災害等の状況や医療機関の実情に即し、協定に沿った対応が困難であることがやむを得ないと都道府県が判断する場合もあります。
※県内派遣で対応できない場合は、国が県外派遣の調整を実施します。
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災害支援ナースの指揮系統
災害支援ナース派遣先都道府県が管内で活動するすべての災害支援ナースを指揮することとされています。災害支援ナースの活動時期や派遣期間、活動場所、活動内容については、大規模自然災害の発生時に都道府県に設置される保健医療福祉調整本部での総合調整に基づき決定します。
災害支援ナースの活動に係る経費
災害支援ナースの活動に要した費用のうち、都道府県と所属施設の協定に基づくものについては、災害支援ナースの派遣を要請した都道府県が支弁します。
事故補償への対応
都道府県は、看護支援活動中(出発地と被災地等との移動を含む。)の事故等に対応するための傷害保険に加入します。また、災害支援ナースは 第三者に損害を与えた場合に備えて、災害等発生時の看護支援活動も補償の対象に含まれる賠償責任保険制度に加入することが望ましいとしています。
協定締結施設における看護管理者の役割
協定締結施設は、都道府県との協定に基づき、災害支援ナースを派遣します。看護管理者には派遣前~後で、主に以下のような対応が求められます。
派遣前:
・協定内容の確認
・派遣可能な看護職員の選定
・派遣時の勤務シフト調整(帰還後の休暇取得の調整含む)
・(必要に応じて)災害支援ナースの必要物品の準備
・都道府県(看護協会)とのスケジュール、人数、業務内容等の調整
・災害支援ナース派遣中も自施設の医療提供を継続できる体制の確保
など
派遣中~後:
・安全や心身の健康状態の確認
・活動に係る費用請求に関する事務部門との調整
など
災害支援ナース所属施設の看護管理者体験談
災害支援ナースの活動を支える看護管理者の取組み
令和6年9月能登半島豪雨の発生を受け、基幹災害拠点病院である当院は、被災地域へ災害支援ナース2名を派遣しました。看護管理者としては、派遣決定までに院内外での協議を重ねるとともに、部署内の勤務調整を行い、健康状態や経験を踏まえて候補者を選定しました。また、被災地の情報が限られる中でも、必要物品や移動手段の確認など、可能な範囲での準備に努めました。
派遣した災害支援ナースは被災した高齢者施設に入り、医療的ケアに加えて生活支援や物資整理など幅広い活動を行いました。断水や生活必需品の不足が続く厳しい状況下で、工夫を重ねながら業務を継続する施設職員の姿に深い敬意を抱くとともに、少しでも負担を軽減できるよう全力で支援した旨の報告を受けています。
帰院後は、休暇の調整や心理面への配慮を行い、派遣で得られた経験は、報告会や電子カルテ端末を通じて院内で共有し、貴重な学びを組織全体に還元しました。
当院では、クリニカルラダーに独自の「災害看護ラダー」を組み込み、入職時から段階的に災害対応を学べる体制を整えています。また、県との協定締結にも組織として参画し、災害支援を「業務」として明確に位置づけることで、より強固な支援体制の構築を進めています。
災害支援ナースを安全に派遣し、その活動を支えることは、看護管理者の重要な責務です。平時からの人材育成、物品整備、関係部署との連携は不可欠であり、「いざという時」に看護の力が最大限発揮されるよう、今後も主体的に取り組んでいきたいと考えています。
江藤 真由美 様
災害支援ナースを支える看護管理者の取組みと組織文化醸成の実践
2024年の改正医療法により災害支援ナース制度が新たな枠組みに移行し、体制整備が進められています。災害支援ナースが安心して活動できる環境を整えることは、看護管理者に求められる重要な役割です。ここでは、災害看護教育を組織文化として醸成するための当院の取組みについて述べたいと思います。
災害支援ナース登録のための取組みの起点はJMAT(日本医師会災害医療チーム)派遣経験者の存在でした。自施設の使命に照らし合わせ、派遣の意義や体制を整理し、院内の意思決定会議に諮り、病院の使命として決議を得ました。災害支援ナース登録の志願者を募ると数名の看護師が自ら手を挙げました。当院における災害支援ナースの誕生と時期を同じくして、継続教育部門主催でミニシンポジウムを開催しました。近隣の施設で構成する看護部長会を通じ、地域の看護師の参加も多く募り、多様な経験値を共有する場としました。地域の参加は、災害対応を単施設ではなく地域全体の課題として捉える視点を共有する上で大きな意義がありました。
災害対応は組織全体の役割であり、平時から災害を自分ごととして捉え、経験を組織知として蓄積することがレジリエンス向上の基盤となります。看護管理者はその基盤を整え、知見の共有を促進する役割を担います。本取組みは、派遣者のみならず平時を担うスタッフにとっても「支援者の一員である」という誇りを育む契機となりました。
今後は、勤務調整やメンタルケア等の具体的な支援策を検討し、自施設の災害支援ナース育成を基盤に地域全体で支え合う体制づくりに寄与していきたいと考えます。
中山 みどり 様