看護実践情報

2019年度 全国職能交流集会

日本看護協会は6月7日、函館市の函館アリーナで全国職能交流集会を開催した。今回、初めて4職能委員会を合同で実施し、2,540人が参加した。福井トシ子会長が特別講演を行ったほか、シンポジウムを開催した。
※当日の資料は、会員マイページ「キャリナース」に掲載しています

特別講演 「地域でケアの統合を」

福井トシ子会長

福井トシ子会長は「地域包括ケアと看護のチカラ」と題して特別講演を行い、地域包括ケアシステムについて、本会が2015年に公表した「看護の将来ビジョン」にも触れながら「『地域』と『統合されたケア』がなければ実現できない」と訴えた。人々が健やかに生まれ、育ち、疾病や障害があったとしても、地域において生活を続けていくには、医療と生活の両方の視点を持つ看護職が重要な役割を果たす必要があることを説明。また、地域のあらゆる場所で働く看護職が連携し、その役割を発揮することで、人々が切れ目のないケアを受けられるようにしていくことの重要性を指摘した。

その上で、「日本看護協会が目指す地域包括ケアシステムは、全世代型地域包括ケアシステムである」と述べ、患者・住民に質の高い保健・医療・介護などのサービスを必要時に切れ目なく提供するために、看護職には確かな看護スキルと「生活の質」の視点、地域マネジメントの力が必要であるとした。

さらに、「令和の時代の取り組み」として、令和の地域包括ケアにおける看護提供体制の構築のために「各職能と保健医療の専門職が特定の対象・場所で行ってきた取り組みを統合する。今日がそのキックオフ」と明言。今後の取り組みとして、取り組みを合理的で利便性の高いものにすることや、持続性・効率性の向上を図り地域共生社会の創生に寄与すること、地域の看護活動の拠点を拡充すること、人材確保の仕組みの構築を推進すること――などを挙げ、「ケアを必要とする人々に統合されたケアをあらゆる場で提供していく。そういう私たちになっていきましょう」と結んだ。

シンポジウム 「地域包括ケアをデザインする看護職の連携」

「地域包括ケアをデザインする看護職の連携」をテーマに開かれたシンポジウムでは、前大分県福祉保健部健康づくり支援課健康寿命延伸班参事(統括)の藤本紀代美さん、香川県看護協会助産師職能委員長の野口純子さん、前米沢市立病院副院長(兼)看護部長の若月裕子さん、まちのナースステーション八千代統括所長の福田裕子さんがそれぞれの立場から発表した。藤本さんは、保健所を拠点に立ち上げた「看護の地域ネットワーク推進会議」(看護ネット)の取り組みを紹介。入退院時情 報共有ルールの開発等を通し、「看護ネットの取り組みが地域全体の看護の質向上につながっている」と述べた。また、統括保健師としての活動も紹介し、病院看護管理者などとの連携の重要性を指摘した。

野口さんは、「切れ目のない母子支援」に向けた実践として、院内助産システム普及の取り組みによりアドバンス助産師が増加したことを紹介。本会委託事業「助産師出向支援モデル事業」や「子育て世代包括ケアシステムのためのモデル事業」を通し、「事業への参加が職能間の連携を大きく前進させた」と報告した。

若月さんは、「医療と介護のなせばなるプロジェクト」として、およそ17職種が参画する「なせばなる塾」など多職種連携の実践を紹介。中間管理職の施設間人事交流、地域の看護管理者会における住民向けの寸劇なども報告し、「これからも地域の顔の見える連携でつながっていきたい」とした。

福田さんは、運営する看護小規模多機能型居宅介護を通した地域密着型サービスの実践を紹介。地域住民と一体となった認知症の利用者の見守り事例なども示し、「地域の力は専門職で考えるよりもすごい。それを信じ活動する」と締めくくった。

2019年度活動の方針について

保健師職能委員会

2019年度の保健師職能委員会は、「地域包括ケアシステムの構築・推進に関する課題発見・意見集約」などの活動方針の下、保健師の力を結集し、地域共生社会の実現を目指す。

地域の課題解決や新たなサービス創出へ「看護職連携モデル事業案」策定に取り組み、その実現に向け横展開の事業を進める。

組織間連携の鍵となる統括保健師について鎌田久美子委員長は「地域全体の課題を俯瞰しつつ保健活動全体を『横串をさす』という役割意識の醸成を図っていく」と述べた。

加えて、医療機関などの看護管理者への統括保健師の周知へ「県協会や各地区支部が一体となって取り組んでいく」とした。

助産師職能委員会

助産師職能委員会では本年度、重点事業「母子のための安心・安全な地域包括ケアシステムの構築」として「出産環境の体制整備」「医療的ケア児の看護提供体制の整備」に取り組んでいく。母子のための地域包括ケア病棟(仮称)モデル事業を推進するほか、医療的ケア児の看護提供体制整備の検討を開始。

井本寛子委員長は「現在、院内助産は日本の分娩取り扱い施設のうち、病院は10%強、助産師外来は60%という状況」と述べ、出産環境体制整備の必要性を強調した。

「周産期医療体制整備と女性の生涯にわたる健康を支援するための助産実践能力強化」では、災害時マニュアルの作成ガイドの普及と、働く女性の妊娠、出産に関連した支援のあり方の情報収集を進めるとした。

看護師職能委員会T(病院領域)

熊谷雅美委員長は、「地域包括ケアシステムにおける病院看護管理者の連携推進」に関わり、昨年度実施した行政保健師との連携について「病院看護管理者が行政保健師の役割を理解しつつ、連携推進に向けた検討や取り組みを行うことが課題」と説明した。その上で2019年度は、行政保健師との連携に関するヒアリングなどを実施していくとした。

さらに、看護師職能委員会Tでは、昨年度実施した多職種連携・協働における病棟の看護師の役割についての意見集約を踏まえ、19年度は、地域包括ケアシステムで病棟の看護師が担う役割を果たすために必要な人材育成に関する情報収集・課題発見に取り組んでいく。

看護師職能委員会U(介護・福祉関係施設・在宅等領域)

看護師職能委員会Uでは本年度、訪問看護・介護施設・診療所などで働く看護職の課題発見、情報共有による組織強化を推進する。特に、訪問看護ステーション・介護施設などの看護職と診療所の看護職の連携の現状を明らかにしながら、連携の意義や効果的な方策について意見集約を行う。

また、昨年度に引き続き「看護管理者が考えるべき労働者及び療養者のリスク管理者」に関する課題発見と意見集約も進める。

荒木暁子委員長は、「業務上の危険やリスクには看U領域特有の背景があり、対応しだいでは負のスパイラルに陥る可能性がある」と指摘。本年度、リスク・事故などの発生の背景について整理・分析を行い、対策などを検討していくとした。