看護実践情報

診療報酬改定項目の活用事例

診療報酬改定項目の活用事例 : 認知症ケア加算

2020年度診療報酬改定において、評価体系が現行の2段階から3段階に変更されました。
中間評価として新設された認知症ケア加算2では、認知症患者の看護に従事した経験を5年以上有し、かつ適切な研修(600時間以上)を修了した専任の常勤看護師の配置と、全ての病棟への適切な研修(9時間以上)を受けた看護師3人以上(うち1人は院内研修の受講で可)の配置が要件とされています。

加算を契機に認知症ケアを推進(富士宮市立病院)

【病院概要】
  • 病床数 : 380床
  • 入院料 : 急性期一般入院料1
  • 看護職員数 : 330人

2016年度の診療報酬改定で新設された、認知症ケア加算。20年度の改定では、現行の2段階評価が3段階となり、認知症看護認定看護師などの「専門性の高い看護師」の配置と、9時間以上の研修を修了した看護師の病棟への配置を両方行った場合の評価が新設された。70歳以上の入院患者が6割を占める富士宮市立病院では、改定をきっかけに、認知症への対応に向けた体制の整備や人材育成を進めている。

以前から同院の看護部では、入院した高齢患者の認知機能の低下や、やむを得ない場合の抑制帯の使用などについて課題を感じていた。石川弥生看護部長は「加算ができたことで、認知症ケアに関する意識が高まり、看護部としての方向性が定まった」と語る。16年度から、加算の要件となる認知症患者のアセスメントなどに関する9時間以上の研修の受講を促し、各病棟への研修修了者の配置を始めた。研修修了者を中心に認知症ケアワーキンググループを発足させ、院内に精神科がないことから近隣病院の精神科医にも協力を求め、認知症ケアに関するマニュアルを作成した。 同院の看護師、佐野智子さんは9時間以上の研修を修了していたが、認知症患者への退院支援の強化を目指し、18年度に認知症看護認定看護師となった。その後は、専門的な知識を広め、対応困難事例の相談を受けることで院内の認知症ケアの質の向上に寄与している。佐野さんは「認定看護師だけでなく、各病棟の9時間以上の研修修了者と協働したことで、病棟の看護師一人一人と認知症ケアに関する情報を共有することができた。それが、院内の認知症ケアの質の向上に効果的だった」と振り返る。取り組みによって、身体的拘束の件数が従来の3分の1に減少する成果も出た。

認定看護師の佐野智子さんを中心にカンファレンスを行う画像
認定看護師の佐野智子さん(右奥)を中心に、
定期的に多職種でカンファレンスを行う

19年、同院では社会福祉士を新たに採用。専門性の高い看護師を含む、多職種による認知症ケアチームの配置が要件となる加算1を取得した。現在、認知症ケアチームと病棟の9時間以上の研修修了者らが行う週1回のカンファレンスを通して、退院後の生活を見据えた質の高い認知症ケアの提供に向けた活動を続けている。

同院では、加算2から1へと段階的に体制を整え、認知症ケアに関わるスタッフの裾野を徐々に広げて取り組みを浸透させていった。ともに取り組みを進めてきた佐野真澄副看護部長は「診療報酬が付くことは、現場を動かすチャンスになる」と前向きだ。今後は、認知症のある住民への支援に向けた地域連携や、さらなる認知症看護認定看護師の育成も視野に入れている。

協会ニュース2020年3月号より引用

診療報酬改定項目の活用事例 : 入退院支援加算3

2020年度診療報酬改定において、入退院支援加算3における入退院支援部門の看護師の配置要件が見直されました。
これまでの入退院支援および5年以上の新生児集中治療に係る業務の経験を有する専従の看護師の配置から、入退院支援および5年以上の新生児集中治療に係る業務の経験を有し、小児患者の在宅移行に係る適切な研修を修了した専任の看護師の配置へ要件が変更されました。

質の高いスムーズな入退院支援へ (沖縄県立中部病院)

【病院概要】
  • 病床数 : 559 床(NICU12床・GCU18床)
  • 入院料 : 急性期一般入院料1
  • 看護職員数 : 572人

沖縄県立中部病院は、県内に2カ所ある総合周産期母子医療センターのうちの1つだ。2018年度の分娩件数は1,086件で、地域の産科施設からのハイリスク妊婦の紹介が91.0%、母体搬送は11.2%を占める。出生児の約30%がNICUに入院しており、地域からの児搬送は16%になる。新生児医療の進歩に伴って生命予後が改善され、医療的ケアを必要とする児は増えている。同院の東江みゆき看護部長は「NICUでの退院支援は、患児の退院後の療養環境を整え、母子・家族が安心して安全な療養生活が送れるよう支える必要がある」と考えている。

2020年度診療報酬改定では、入退院支援加算3の施設基準である新生児の集中治療、入退院支援などに対する十分な経験を有する専従の看護師の配置が、小児患者の在宅移行に関する適切な研修を修了した専任の看護師の配置へと変更された。同院には日本看護協会の小児在宅移行支援指導者育成研修を受講した3人が勤務しており、うち1人が専従の退院調整看護師として現場スタッフと協働し、全ての入院患児の退院支援を行っている。研修を受けたことで、地域の訪問看護師とも情報を共有し、これまで以上に在宅移行に向けた個別の支援を意識するようになったという。同加算3の取得件数は、月平均20件ほどだ。

同院では、気になる母児がいれば早期から産科・新生児内科が合同でカンファレンスを実施する。その後、新生児集中ケア認定看護師の高江雅美さんが産科病棟に出向いて出生前訪問を行い、児の入院に備える。入院翌日には、NICUの退院調整看護師の関わりが始まり、在宅指導や必要な調整を繰り返しながら家族の思いに寄り添って支援する。また、医療的ケアを要する長期入院児には、退院前に母児と共に受け持ち看護師・退院調整看護師・医師で自宅を訪問し、療養環境や生活状況の調整後、母子同室を実施して両親に在宅での療養環境をイメージしてもらっている。さらに、多職種で退院調整会議を行い児の情報を共有し、支援に繋げるほか、地域の保健師とも連携して新生児連絡会議を月1回開き、退院後の児と家族に対して継続的なサポートを行っている。

本会研修を受講した看護職が患児の退院指導を行う画像
NICUでは、本会の研修を受講した看護職が
患児の退院指導を担う

同院はことし4月から、NICUに入院する児の増加に伴って病床を12床から21床に増床する。現在、本会の「NICU/GCUにおける小児在宅移行支援パス」を基に、研修に参加した看護職が中心となって、独自のパスを作成中だ。「これからも入退院支援に対するスキルアップを図り、地域で児と家族が安心して暮らせるよう地域との連携を強化していきたい」と、専門性の高い看護の実践で、県内のニーズに応えていく。

協会ニュース2020年3月号より引用