看護実践情報

DiNQL参加病院による取り組み事例の紹介

機関紙「協会ニュース」に掲載されたDiNQL参加病院の取り組み事例をご紹介します。

伊勢赤十字病院(三重県)協会ニュース2014年1月号掲載

地域での役割見え、経営戦略の一助に
  • 655床  看護職員数732人(専門看護師1人、認定看護師14人)19病棟参加

2013年秋、第62回式年遷宮(社殿を造り替える20年に一度の大祭)を迎えた伊勢神宮。外宮から近距離に位置する伊勢赤十字病院は、県中南勢地域の基幹病院として多様な保健医療活動を展開している。

同院看護部では、ドナべディアンが提唱した医療全体の質評価の考え方(※2)に基づいた看護の「見える化」を目指し、データを管理していた。とはいえ、経年変化は分かっても、十分に生かし切れていなかった。

同年4月、新たに師長ら5人で質評価ワーキングチームを立ち上げたころ、日本看護協会のDiNQL試行事業を知り、ワーキングチームのメンバーである師長が所属する3病棟が参加した。12月には、院内に評価指標委員会も設けた。

目標管理の一環として「転倒・転落」「感染」「褥瘡」「看護必要度」をデータ化。発生率の目標数値を出し、3月に年度のまとめを行う予定だ。

134項目を入力するには、他部署の協力が不可欠だ。関連部署に評価指標を配布して、データ抽出の協力依頼をした。例えば看護部で出せない在院日数や患者数は企画課、それ以外の情報は診療情報課に依頼。転倒・転落は医療安全のリスクマネージャー、感染データは感染管理認定看護師、褥瘡は皮膚・排泄ケア認定看護師が、それぞれシステムで管理する。

褥瘡のリスクをアセスメント

試行事業に参加したことで、看護師が欲しかったデータが、診療情報課では出せることが分かったり、既存のシステムのデータと掛け合わせて出せるデータもあると教えてもらったりと、情報の活用が広がった。最初は大変だったが、入力すれば更新するだけと分かってからは、他病棟からも実施に向け、前向きな意見が聞かれるようになった。

松井和世副院長・看護部長(当時)は「同じ指標で並べると、特徴が分かって、違う目で病棟運営をするきっかけになります。さらに、地域の経営母体が違う施設と比較できるようになれば、その地域での自院の役割や位置が客観的に見えて、看護戦略、経営戦略に生かせるメリットがあります」と展望を話す。

一方で、課題も見えてきた。例えば、アウトカム評価は比較的データが抽出しやすいが、プロセス評価は手作業に頼る部分もあるので、データが簡単に抽出できるようシステム改善が望まれる。

2012年に新築移転した際に「職員にも優しい病院」という、新しい概念をコンセプトに建築された同院。明るい採光の「オープンカンファレンス」というスペースでは、職員が職種を問わず顔を合わせ、交流を生む場として、業務の円滑化と職員の満足度向上に一役買っている。看護の質同様、より良い医療提供につながっているのは言うまでもない。

※2:医療の質をストラクチャー(構造)、プロセス(過程)、アウトカム(結果)の3つの要素で評価

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鳥取市立病院(鳥取県)協会ニュース2014年1月号掲載

言葉や定義が明確になり標準化進む
  • 340床  看護職員数314人(認定看護師8人)9病棟参加

日本最大級の砂丘「鳥取砂丘」から車で20分。鳥取市立病院は、二次医療を中心とする地域中核病院だ。

試行事業に参加したきっかけは、公益財団法人木村看護教育振興財団の助成で実現したイギリスのセント・トーマス病院の視察報告だった。「毎週、5つの評価指標についてカンファレンスが行われている」という報告を受け「うちの病院でも、自分たちの行っている看護の質評価をデータ化すべき」という意見が看護部で相次いだ。

そこへ日本看護協会のDiNQL試行事業参加病院募集の案内があった。「まさに、思いが合致したという感じ」と竹内いずみ副院長兼看護部長(当時)は笑う。「BSC(※1)を5年近く行い、毎年、データ集積していたのですが、一定の指標の絞り込みができず、活用が不十分と感じていました。それで『看護部の質評価グループで評価指標を作ろう』という話になり、質評価指標の統一を行うためのワーキンググループを立ち上げました」。事前の相談は7部署にまたがったが、病院事業管理者は「これから、ぜひ必要なことなのでやってください」と背中を押してくれた。

データ入力は内容によって手分けした。「感染」は感染管理認定看護師が、「医療安全」はリスクマネージャーが、「病院・病棟情報」などは情報管理室がそれぞれ行った。「看護部の職員関係」は、最終点検役も兼ねて竹内看護部長が入力した。言葉の解釈について院内で意見が分かれたときは、日本看護協会のQ&Aに沿って、標準化を心掛けた。

同院は、2003年の電子カルテ導入前に院内LANを整備したことで、職員同士の意見交換や、研修の案内提示などの情報を共有する文化があった。最初は入力に時間が掛かったものの、いったん慣れれば負担ではないとする意見が多かった。看護部が持っていないデータも、情報管理室が持っていたことが分かるなど、職種間の連携が進み、全体的なチームワークが良くなったと感じている。

体圧分散用具使用者一覧シートを作成。入力結果では、褥瘡の改善率が平均値より高かった

DiNQLにない入力項目も、自発的にデータを取って、見直す姿勢も生じた結果、膀胱留置カテーテルの抜去が早まった。退院支援も、退院支援看護師と医事課が話し合って、これまであいまいだった定義を明確にし、システム化が進んだ。「軌道に乗ったら、全病棟で参加したいですね」と竹内看護部長。「データの集積とベンチマークの分析で、より発言権のある看護部を目指し、質の向上につなげたいです」。

鳥取県の高齢化率は28.0%(2013年)。全国平均より10年早く高齢化が進んでいると言われている中、「地域ケア病棟」を創設した。認知症や高齢患者が増加する中で、行政とタイアップし、在宅医療、看取りを総合的に見ていく構えだ。同院の、将来を見据えた先駆的なチャレンジは続く。

※1:バランススコアカード。病院の理念、行動規範や長期計画を達成するためのプランを、より具体的な業務スケジュールに落とし込むためのツール

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香川県立中央病院(香川県)協会ニュース2014年5月掲載

  • 531床  看護職員数640人(専門看護師2人、認定看護師15人)、看護配置7対1、15病棟参加
病院全体で質評価に前向き

2014年3月、高松港近くに新病院がオープンしたばかりの香川県立中央病院。県の基幹病院として高度医療、三次救急医療を担う。試行事業への参加について、藤井加芳子副院長兼看護部長(当時)は「データ収集が新病院への引っ越しの時期と重なるので、大丈夫だろうかと悩んだこともありましたが、もともと当院は質の評価に前向きに取り組んでいたこともあり、参加を決めました」とほほ笑む。

入力したデータを病棟のチームで共有中

入力を始めたころは、看護部の情報システムのセキュリティが強くて、安易に入力ができなかったが、藤井副院長は「医療の質を向上させたい」とDiNQL事業に参加する意義を事務部門に訴え、説得した。「このようなやり取りを重ねながら、病院がチームとなって、医療の質評価に取り組んでいけると確信しました。当院の強みは、職員の皆が、データによって可視化する価値を分かっていること」。評価指標のデータ整理では、該当するデータをどこの部署で持っているのか、どこで重複していたかを把握できただけでも収穫だったと振り返る。

言葉の解釈に一苦労

データ収集のため、共有フォルダを作成し、各自がアクセスし134項目の評価指標に必要な数値を入力できるようにしている。苦労した点を挙げるとすれば、期日までに入力を済ますよう各担当者にお願いするため何度も足を運んだことと、言葉の解釈。疑問が生じるたび、日本看護協会の担当者に問い合わせる日々が続いた。「例えば、昨年度の平均年次有給休暇取得日数。年度途中で休職した職員の取得日数も含めて数えるのか、など。すぐに返事をくださったので心強かったです」と野上典子副看護部長(当時)は話す。

本会が昨年度3回開催した集合研修も役に立った。参加病院同士でデータ収集方法などを情報交換し、つながりを持つことができた。「このデータで本当に正しいのかと不安だったのですが、皆さんも同様に悩んでいたと聞いて安心しました」(野上副看護部長)。

今回は2病棟の参加だったが、今後は全ての病棟参加を計画中だ。BSC(目標管理)に活用し、院内で比較していくための評価の指標としたいと考えている。

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社会医療法人美杉会  佐藤病院(大阪府)協会ニュース2014年6月掲載

電子カルテがなくても参加できる!
  • 120床  看護職員数147人(認定看護師3人)、看護配置7対1、3病棟参加

佐藤病院は、大阪府枚方市を中心に高度医療から介護まで、さまざまな施設を擁する美杉会の中核病院だ。

本会と大阪府看護協会の「看護職のワーク・ライフ・バランス(WLB)推進ワークショップ事業」に初年度から取り組み、2013年はカンゴサウルス賞を受賞した。府協会の看護師職能IIの理事でもある須久美子看護部長(当時)は、DiNQL試行事業への参加について「電子カルテでもない、120床の当院が選ばれるとは思わなかった。管理者として、どういう数字が必要なのか、知っておきたかった」と話す。これまでの看護部の取り組みを客観的に評価し、職員の増員要請や物品購入のエビデンスとして活用できるという思いもありエントリーを決めた。

「それが『試行事業に参加した75病院でいちばん充実した人員配置』という結果でした」と、思惑が外れたことに苦笑する。同院では、子育て中の看護職員率は7割弱。WLBの取り組みは、ママナースたちが負担なく働けるよう、配置を手厚くし、見事に残業ゼロを実現した結果に表れている。

データを紙ベースで収集する苦労はあったものの、もともと同院では、佐藤眞杉理事長(当時)が音頭を取ってQI(医療の質指標)委員会を立ち上げ、感染管理、医療安全、看護必要度などをすでにデータベース化していたので負担ではなかった。

「転倒転落」が多い?の真相は

外科病棟の「転倒転落」データが他施設より高い傾向が見られたが、実際は「レベル1」(※1)が大半で、定義を厳密に守りカウントしていたことが分かった。師長たちの、丁寧な看護、抑制しない看護へのこだわりがあり、身体抑制も年間を通してゼロ。医療安全担当で手術看護認定看護師の横山要師長(当時)は「数字だけが独り歩きしないよう、転倒転落のレベルごとに集計する仕組みを検討しては」と提案した(※2)。

褥瘡発生率などのデータ活用は以前
から病院独自で行ってきた

須看護部長は「継続が大事だと思うので、今年も参加希望です。DiNQLを共通言語に、他施設ではデータをどう活用しているのか、比較から見えるものもあるはず。当院の強みや特性を伸ばしていきたいですね」と意気込みを語ってくれた。

※1:レベル1…患者への実害はなかった(DiNQLでは国立大学附属病院医療安全管理協議会が定めた「インシデント影響度分類」に準じています

※2:本年度の評価指標では「身体抑制率」を追加するとともに、転倒転落による障害発生率についてもレベル別に件数を入力する方法に変更する

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JA愛知厚生連  江南厚生病院(愛知県)協会ニュース2014年7月掲載

評価指標の数値を目標管理に活用
  • 病床数:684床、看護職員数:679人(専門看護師2人、認定看護 師12人、認定看護管理者4人)、看護配置7対1、17病棟参加

濃尾平野から伊勢湾へと注ぐ木曽川を中国の大河・揚子江に見立て、その南側に位置することから名付けられた江南市。江南厚生病院は、2008年5月にJA 愛知厚生連が運営していた愛北病院と昭和病院を統合し、新築移転して以来、地域の中核病院として市民の健康を守っている。

独自に看護の質評価指標を作成

長谷川しとみ看護部長(当時)は「病院の統合は職員へ負荷が掛かるものです。当院では人材の確保と育成、質の向上を課題とし、教育全体に力を入れてきました」と振り返る。働きやすい職場づくりや認定看護師など専門性の高い看護師らを中心にした体制が実り、移転前年は13%だった離職率も最近は7%前後(2013年は7.4%)で推移している。

 「質の評価にも取り組もう」と、2012年に褥瘡(じょくそう)やインシデントの発生率などのデータを活用した同院独自の「看護の質評価指標」を作成。「看護の質が評価できる項目になっているか、データをどう読み取るか」を師長たちと検討する日が続いた。そんなとき、日本看護協会の2013年度通常総会でDiNQL事業の説明を聞いた。同院が目指す方向との整合性を感じ、試行事業に参加したいと考えるようになった。

総会から戻り、師長たちにDiNQL事業について説明。参加病棟を募ったところ、5人の師長から手が挙がり、初年度は5病棟でのスタートとなった。データ収集は看護部だけでなく、事務部門の医事課や診療情報管理室へ協力を依頼するなど多岐にわたった。だが、いずれの部署も積極的に協力してくれたという。院内のチームワークの良さを実感する機会になった。

集合ヒアリングでモチベーションアップ!

試行事業に参加した5病棟の師長たちからは「散布図を見て、自施設のケアがどのレベルにあるかを客観的に知ることができた」「スタッフにデータ収集の意図を伝え、教育材料にしたい」「アウトカムを出すにも過程と構造があるので、考えて伝えていく力が必要」といった感想が聞かれた。

今井智香江看護師長(当時)は、試行事業参加病院を対象とした集合ヒアリングに参加したことで、考え方が一気に変わり、意欲が湧いたと話す。「データの重要性や効果が分かり、どういう管理をしたいかを実感できました。データ収集や入力作業を負担に感じることもあったのに」。

DiNQL試行事業への参加と連動して、前述した独自の評価指標の精度アップにも取り組んでいる同院。長谷川看護部長は「まず自分たちからDiNQL事業の目的と可能性を理解することですね。今年は11病棟で参加します」とほほ笑んだ。

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一般財団法人神奈川県警友会  けいゆう病院(神奈川県)協会ニュース2014年12月掲載

評価指標の数値を目標管理に活用
  • 病床数:410床、看護職員数:392人、10病棟参加

横浜港に面して高層ビルや大型ショッピングモールが立ち並ぶ横浜みなとみらい地区。その一角に位置するけいゆう病院は警察関係者の職域病院としてだけでなく、地域の中核病院として、住民の健康も守っている。

2013年度から試行事業に参加する同院。初年度は外科系と内科系の2病棟での参加 だった。「これだけのデータを活用しないのはもったいない」(近藤美知子看護部 長・当時)との考えから、14年度は6病棟が参加。さらに、試行事業では対象となっ ていない手術室などの特殊領域は、DiNQLの共通項目を参考にデータベースを活用し て、院内比較や昨年度との比較ができるように取り組んでいる。

「それが『試行事業に参加した75病院の中でも充実した人員配置』という結果でした」と、思惑が外れたことに苦笑する。同院では、子育て中の看護職員率は年々増加している。
WLBの取り組みは、ママナースたちが負担なく働けるよう、配置を手厚くし、残業ゼロを目指している。

内部・外部の両視点を

「自分の病院、病棟の立ち位置がどこなのか、内部環境と外部環境の両方からの分析視点を病棟師長に持ってほしい」と語る近藤看護部長。DiNQLは他院との比較が可能なことや、労働環境と看護の質は切り離せないという自身の思いと一致したことが参加のきっかけとなった。DiNQL担当の河内浩子師長(当時)も「これまでも看護の質や超過勤務などの労務データは個別では見ていたが、DiNQLでは構造・過程・結果で系統的に見ることができ勉強になる」と参加の意義を語る。

参加当初は、各病棟の師長にどのようにデータを活用してもらうか悩んだという同院。2年目を迎え、取り入れたのが、DiNQLの評価指標の数値を目標管理に生かすという考え方だ。DiNQLを「病棟での看護の現状を数値化できるツール」と位置付け、9〜10月の目標管理に関する面談に併せて、各師長にDiNQLを活用して病棟の強みと弱みを整理し、今後の対応策に関するレポートを提出してもらい、師長会でも共有した。

例えば、ある病棟師長は「褥瘡」「感染」「転倒・転落」「医療安全」などの数値をスタッフと共有し、スタッフの能力や経験、理解に応じてアプローチを変え改善につなげるとレポート。また別の病棟師長は、データから自病棟の強みと弱みを整理し、その課題を師長がどう分析し、スタッフがどう捉えたかをまとめた。具体的には「褥瘡」であれば、予防ケアのための体圧分散用具の数は足りているが、十分に活用できていないことが明らかとなり、認定看護師と連携し、予防を確実に行うことなどが挙げられた。

近藤部長は「師長たちが、ここまで分析できているのは心強い。あとはスタッフと合意して実際に行動するだけ」と病棟の取り組みに期待を寄せる。

また、同院では従来からDiNQLとは別に、NQI(看護質指標)事業にも参加してきた。患者アンケートや職員アンケートで、看護サービスの質を可視化し「強みを生かして、弱みを転換する」風土を培ってきた。今後は、患者・職員の主観的なデータとDiNQLの客観的なデータを組み合わせることも目指す。

看護部では、各病棟がさらにDiNQLの評価指標を目標管理に活用できるよう「患者」「看護職員」「医療安全」などで、項目の整理を始めた。来年度以降は、リーダーシップ研修にDiNQLの内容を追加し、データ活用の重要性と手法について系統的に発信していきたい考えだ。

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医療法人防治会  いずみの病院(高知県)協会ニュース2014年12月掲載

多職種協働の効果、可視化を目指す
  • 病床数:238床、看護職員数:195人、5病棟参加

いずみの病院は、労災や職業病の診療を使命として設立された四国勤労病院を母体に、2001年に新たに地域医療を担うべく高知市北東部に開院した。急性期のほか、療養、緩和ケア、回復期リハビリテーションの各病棟を持つケアミックス型の病院だ。

2010年からCI(臨床指標)委員会を設置して、各部署での年報発行や発表会を行ってきた。また、看護QI研究会(現・日本看護質評価改善機構)にも参加するなど、データを生かす風土があった。

「看護の質を向上させるには、働き続けられることが大切だという思いがあり、労働環境と質の両方を見るDiNQLの考え方に共感した」と弘田由利美看護部長(当時)。当初は、評価指標の項目数が多いことに不安もあったが、事務部門や診療情報管理室、情報管理課の協力も得られたことで参加を決めた。

参加決定後は、DiNQL担当の矢野広恵師長(当時)を中心に、9月からのデータ入力開始前に、病棟ごとに各項目のデータの有無などを整理した。「8月までにいったん入力して対応に困るデータを明確にし、それらの準備を頑張れば、あとはスムーズに進むと考えた」と矢野師長。実際、職員の経験年数や年齢、看護師と准看護師で分けた数値など、病院として把握はしていてもデータ化されていない情報もあったが、医事課などに相談し手配できた。

スタッフにも強みを明確に

大阪で開催された事前研修会にも参加し、試行事業の参加1年目ながら、最初の入力となる9月から、ほとんどの項目でデータ入力が可能となった。

データ入力開始から間もないこともあり、参加病棟の師長からは「まだ、入力するだけで精一杯」との声も聞こえるが、「病棟ごとの強みと弱みが、数値としてスタッフにも明確に見えるようになる」(小原泰美師長・当時)、「緩和ケア病棟の参加は少ないが、将来は他施設との比較ができるようになればうれしい」(澤田恵美子師長・当時)と期待も大きい。

多数のリハビリテーション職も抱える同院。モーニングケアや食事介助も看護職と協働するなど、互いが専門性を認め合いながらチームケアを実施している。参加病棟の1つは、パーキンソン病のリハビリ目的の入院が多いため、DiNQLの評価では転倒発生率が高いが、「軒下カンファレンス」と称した多職種での検討を重ねることなどにより、患者への共通した言葉掛けができるようになり、患者の意識変化に良い影響が出ているという。

褥瘡(じょくそう)についても、看護職と理学療法士が一緒に予防に取り組んできた経緯がある。DiNQL の導入で、多職種が協働する同院の強みが可視化されることも望まれる。

今後はDiNQLを目標管理にも活用したいという同院。法人の町田和子理事(当時)は「看護師は目標の数値化が難しかったが、データを生かしたいという思いは強かった」と語る。弘田看護部長も「当院のように小規模の施設でもぜひ参加してほしい。将来は参加施設が地区ごとに比較や議論を行って、互いに成長できるようになれば」と今後に期待する。

社会福祉法人恩賜財団済生会  熊本病院(熊本県)協会ニュース2015年5月掲載

  • 病床数:400床、看護職員数:689人、13病棟参加
長年にわたる医療・看護データの活用

2012年度に始まったDiNQL事業。済生会熊本病院は、本会が10病院で実施したデータ収集のパイロットスタディへの協力に始まり、13・14年度の試行事業にも参加している。

データを活用して医療・看護の質を評価・管理する同院の取り組みは、2000年までさかのぼる。クリニカルパスを導入して診療やケアを院内で標準化し、さらにパスを運用しては評価することで改善につなげてきた。02年にはTQM(Total Quality Management)部を設け、質の管理・向上を支援する体制も整えた。さらに、13年には国際的な医療機能評価である「JCI」も取得。約2年間の取得に向けた取り組みでは、プロセス管理が重視され、ここでもデータの重要性を再認識することになったという。

長年データを活用した質改善に取り組んできた同院がDiNQLに期待したのは「看護ケアについて病棟ごとに可視化して、他の病院と比較したい」(宮下恵里看護部長)との思い。DPCなど一部のデータは、他病院と比較することはできたが、看護に関わる広範囲な136項目を比較できる仕組みはほかにはないものだった。

パス改善にDiNQL活用も視野

数字に基づく目標管理と行動計画など、データ活用は病棟にも浸透している。試行事業に参加している整形外科病棟の四肢外傷センターでは「予防的なケアに力を入れ、いかに合併症を防いで在宅復帰してもらうか」(右田みどり看護師長)を意識している。同院では2カ月に1度、多職種が特定のクリニカルパスについて分析結果を発表する大会を開催している。

大腿骨の骨折に関するパスがテーマとなった、ことし1月の第100回大会で、看護からは合併症の予防について発表を行った。患者背景や、パスの目標が達成できなかった場合の分析から、合併症である誤嚥(えん)性肺炎や疼(とう)痛、せん妄の初期評価や予防、対応について、パスの見直しを提案した。分析にはDiNQLデータも活用。他病院と比べ、高齢者が多いことや短い平均在院日数などの特徴が明らかになった。「データの見せ方には気を遣っています」と宮下看護部長。データが何を意味し、どう可視化し改善に生かすか。問題意識はスタッフまで浸透している。

日常的にデータを活用する同院。それだけに、データ収集が負担にならない仕組みにも力を入れる。例えば、DiNQLでは各病棟が集めて入力する情報はほとんどない。事務部門や人事部門の協力はもちろん、必要な項目は電子カルテにひな形を用意し、通常業務で入力した情報をシステム上で集約する。これにより「退院カンファレンスの実施割合」など、従来集めていなかったデータも負担なく入力できるようになった。

宮下看護部長は「今後は評価指標に『疼痛』や『認知症』も加えてほしい」とDiNQLに期待する。

データを根拠に説明し、ケアを見直す。“知の財産”の積み重ねが支える同院の看護ケア。自院の分析結果や他院との比較で改善を進めるクリニカルパスに、DiNQLのデータを活用することでより良いケアを目指す。

社会医療法人輝城会  沼田脳神経外科循環器科病院(群馬県)協会ニュース2015年7月掲載

  • 病床数:84床、看護職員数:99人、2病棟参加

データを武器に予算獲得

DiNQLデータの分析結果について、阿部院長補佐は「(看護の質は)もっと差が出ると思ったが、それほどではなく何とかできそうだ」との感想を持ったという。一方で「教育制度や設備、労働環境では、全国の中央値を下回る部分もあった」と率直に認める。

そこで看護の質は、まず「全項目で中央値を目指す」ことを目標に定め、毎月の会議で各病棟とデータを確認・共有することを始めた。

質の向上と看護師確保には、教育や設備の充実が欠かせない。そのことをDiNQL のデータを示して経営陣と交渉した。その甲斐があり、14・15年度は改善のための予算を獲得することができた。

教育では、認定看護師がいない状況を説明し、病院が給与を保証して資格取得できる制度を導入。本年度は「集中ケア」「脳卒中リハビリテーション看護」の認定看護師が誕生予定だ。「認知症看護」の教育課程にも入学する。

院内研修では、「非常勤職員の割合が高い」ため夜間などは受講が難しく、「研修参加割合が低い」というデータを示し、eラーニングの導入に結び付けた。スマートフォン対応で全員が受講でき、看護補助者の研修にも対応した。

設備面では、体圧測定器具50台の予算を確保し購入につなげた。褥瘡(じょくそう)の「骨突出部の体圧測定実施割合」の低さを示し、測定器具が5台しかないためと説明した成果だ。職員確保や他施設からの研修受け入れに対応するため、フィジカルアセスメントや吸引用などのシミュレーターも購入できた。

受け入れ態勢が整い、採用を強化したことで、15年度は新卒8人が入職し、次年度も9人が内定している。労働環境は、群馬県看護協会のワーク・ライフ・バランス推進ワークショップにも参加し、改善を進める。

データの管理体制を整備

DiNQL活用の体制も整備した。データ入力担当のクラークを新たに雇用したほか、事務部門などの協力も得て、データはできるだけ院内で一括管理できる体制を整えた。「いろいろな場所にバラバラにあったデータを一元管理できるようになったことは、看護部門の強みにもなる」と阿部院長補佐は語る。

4月に入職した橋本眞知子看護部長も、着任後に過去2年分のデータを確認した。「目標管理や業務改善に生かせそうです。師長には単なる数字ではなく、数字が何を表しているのかを分析できるようになってほしい」と期待する。

阿部院長補佐は、中小規模の病院のDiNQL参加について「質向上のためであっても、データを外部に出して他院と比較するのに抵抗があることは、自分の経験でも分かる」と理解を示す。それでも「一歩を踏み出す勇気が必要」と語るのは、看護が先頭に立てば病院全体の改善につながると考えるからだ。

データを武器に経営陣を説得し、質向上や労働環境整備を進める同院。今後の目標は「各項目の最大値を目指す」ことだ。