看護実践情報

ワクチン接種

更新日:2021年9月17日

コロナ禍における時宜を捉えた積極的な対応

東京都看護協会 山元惠子会長

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対峙し、タイムリーに幅広く対応を続けている東京都看護協会。ワクチン接種や東京オリンピック・パラリンピックの医療体制への協力など、東京都や関係団体と連携し、現場のニーズに迅速に対応している。

東京都のワクチン接種一層加速に協力

国が新型コロナワクチン接種を推進する中、東京都においても、ワクチン接種を一層加速するため、都内各地に大規模接種会場の開設が進められた。東京都の小池百合子知事は5月28日、東京都看護協会の山元惠子会長に、ワクチン接種の担い手として潜在看護職の活用とワクチン接種を担う歯科医師向けの実技研修への協力要請をした。

団結式
「東京ワクチンチーム」結団式で
あいさつする山本会長

東京都看護協会は2月27日から「医療従事者のためのワクチンセミナー」、3月から「安全なワクチン接種実技講習」、5月からは「潜在看護師向け新型コロナワクチン集団接種のための筋肉注射手技セミナー」を開催していた。こうした取り組みと併せ、小池都知事からのワクチン接種の協力要請を受け、医療機関で勤務していない潜在看護職がワクチン接種に従事する際、安全に臨めるように同協会を会場としてワクチンの優先接種も実施した。

一方、東京都医師会長から「産業医がいない中小企業では職域接種が難しいという課題を東京商工会議所会頭と共有した、ぜひサポートしたい」と打診があった。「準備はできていたので、もちろん快諾した」と山元会長。東京都看護協会、東京都医師会、東京都歯科医師会、東京都薬剤師会は6月8日「東京ワクチンチーム」を発足、「都や商工会議所と連携を取りながら、産業医がいない中小企業などにワクチン接種を行う」と発表した。日頃から4師会は連携が取れており、万全の体制で7月から実施した。チームは、医師3人、歯科医師2人、薬剤師5〜8人、看護師8〜10人の約20人体制。医師は問診、薬剤師はワクチンの希釈・シリンジへの充塡、打ち手は看護師と歯科医師の役割分担の下、ベテラン看護師とのペア体制を徹底し、安全面に配慮した。山元会長は「日本看護協会と東京都看護協会の看護職員が協働し、都とも連携を密にしながら、現場と情報共有している」と説明する。

潜在看護職向けのワクチン接種の研修については、接種会場で打ち手として期待されている一方、就業先となる求人が少ないという課題もあった。東京都看護協会で筋肉注射実技研修とワクチン先行接種を終えた約400人が求人に備えていたが、自治体にナースセンターが知られていなかったことなどから、当初は求人が少なかった。東京都看護協会による都への働き掛けや広報で、ナースセンターの認知度が高まり徐々に求人が増えていった。「今後はワクチン接種で活躍してくれた潜在看護職が、少しでも医療現場に復帰できるような事業を展開していかなければならない」と山元会長は語る。

東京都看護協会が一丸となり同時進行で対応

また、感染拡大を受け、保健師職能委員会を中心に保健所の支援も開始した。そのさなか、東京オリンピック・パラリンピックの医務室への応援依頼も重なり、人材確保に奔走した。東京都看護協会は、日々変化する状況やニーズに対し、組織全体でタイムリーな対応を行ってきた。山元会長は「この状況を災害だと捉えている。この教訓を生かし、危機管理能力をしっかりと身に付けていければいい」と意気込みを示す。

新型コロナウイルス感染症の研修などについては、寄付金による事業として運営している。「寄付を下さった皆さまのお気持ちを大切に、できる限り公益になることでお返ししたい。必要とされている以上、どうしたら力をお貸しできるか常に考えている」という山元会長の考えは、東京都看護協会の原動力となっている。

(2021年8月17日取材)

ワクチン接種加速をチームワークで後押し

立正佼成会附属佼成病院
副院長/病理診断科部長 二階堂孝さん
看護副部長 秋山陽子さん

27の診療科を持ち340床を有する地域医療の拠点で、東京都の災害拠点病院にも指定されている佼成病院。急性期や地域包括ケア、緩和ケアなどさまざまな病棟を有し、地域住民の要望に応えられる医療を提供している。

多職種連携によるワクチン接種の体制づくり

国をあげて新型コロナウイルスワクチンの迅速な接種体制の構築が進む中、佼成病院の二階堂孝副院長は、杉並区の基幹病院であることから「当初より、接種が始まった際には、“ワクチンセンター”的な役割を担当しなければならないと病院幹部内で共通認識していた」と話す。

役割分担で実施している画像
看護師、薬剤師、事務員の明確な
役割分担の下、ワクチン接種を実施

1月に区からワクチン接種を広く実施して欲しいと依頼があり、同院はまず多職種で協働するための組織体制の構築に着手した。院長を「総監督」、副院長を「隊長」、情報システム課長を「副隊長」とする「情報」「物流」「接種」「会計」の4部隊を設置した。役割分担を明確にするため、2週間に1回、ミーティングを設け担当表や緊急対応フローチャートを作成。担当表は▽問診:医師▽ミキシング:薬剤師▽会場準備:みんなで▽受付・誘導:事務▽接種:看護師▽有症状者対応:医師とした。また、接種後のアレルギー、アナフィラキシーの対応について、循環器の医師と救急外来の看護職などの職員も含めた対応フローチャートを明示している。

ワクチンの保管・管理も重要であり、ディープフリーザーの管理は臨床検査部が担う。ワクチンの数の管理は情報システム課長の管理の下、キャンセルも想定し、貴重なワクチンを無駄にしないよう管理している。

リスクマネジメントとしては、準備段階では、ミキシングは薬剤師、シリンジへの充塡は看護師と役割を分担。被接種者数と同数のシリンジ・注射針を準備することや、1トレーに1バイアル、シリンジ、注射針(5人または6人分)をセットし、他のものとは混在させないこと、充填完了したトレーは既定の場所に置くなど、準備の手順をライン化。準備プロセスでも、各業務に集中できる仕組みにしている。

接種にあたっては、筋肉注射の手技について最新のマニュアルを共有。また、接種を実施する看護師と事務員は2人1組で配置し、事務員がロット番号シール貼付や接種証明書の説明を行い、看護師が接種に集中できる体制を整えた。接種会場は、感染管理認定看護師のアドバイスも受けながら、感染対策やスムーズな動線、倫理面を考慮しパーテーションを設置した。「インシデント回避のためにも、役割分担と業務の明確化が特に重要」と秋山陽子看護副部長は語る。

接種後の副反応などを調査し対応

同院での医療従事者へのワクチン接種は、3月中旬から始め、体制や手順はミーティングを通じて検討、改善を重ねながら進めている。ワクチン接種した職員の健康調査も行っており、調査結果では、2回目の接種翌日に接種者の35.8%に37.5度以上の発熱が見られたことから、接種2回目の翌日は公休にするよう推奨した。健康調査は、二次元コードをスマートフォンで読み取り、Webサイトから接種日を含め6日間質問を簡易に回答するもので、情報システム課が担当した。この他、接種後15分の待機時間は教育効果が高いと考えワクチンに関するQ&Aなどの映像を作成し放映している。

今後について秋山看護副部長は「コロナの対応と同様でワクチン接種も長期戦になると考えています。無理をせず、接種する側もされる側も安心して臨めるよう、今後もチームワークで取り組んでいきます」と笑顔で気概を示した。

(2021年5月14日取材)