看護実践情報

看護職のメンタルヘルスケア

更新日:2021年11月18日

精神看護専門看護師による看護職へのメンタルヘルスケア

和洋女子大学看護学部准教授/精神看護専門看護師
 寺岡征太郎さん

2020年4月から、大学で教鞭を執る傍ら、精神看護専門看護師として東京都看護協会の新型コロナウイルス感染症対策プロジェクトチームで活動してきた寺岡征太郎さん。東京都看護協会では、感染管理アドバイザーらを施設に派遣し感染対策に関する支援を実施したが、同時に重視したのが、組織が混乱した中で指揮を執る看護管理者への精神的なサポートだった。

メンタルサポートアドバイザーとしての活動

トリアージを行う看護師の画像
精神看護専門看護師の寺岡さん

寺岡さんは、チームでの月1度の定例会議に参加して情報を共有しながら、20年度はクラスターが発生した200床以下の中小規模病院を中心に訪問。看護管理者へのヒアリングの他、スタッフが互いに話し合う場を設け、ファシリテーションやフィードバックを通してメンタルヘルスに関する助言や支援を行った。不安や心身の疲労、働く場でのストレスなどを一緒に確認しながら「組織の要となる看護管理者へのサポートを通して、それがスタッフへのケアにつながっていくように意識した」と振り返る。訪問後も、電話やメールで継続的な支援を続けた。

その後、新型コロナウイルス感染症対応が長期化する中で、スタッフの配置や慢性疲労などで組織内の意思疎通に齟齬(そご)が起こった際には、同じ場に、関わった多職種に集まってもらい、その時には言えなかったこと、どんな思いや体験をしたか言葉にしてもらう試みを行った。大変な状況の中で手伝ってくれないと批判的に捉えていたことが、実はこういう意図があって行っていたのだと分かる。「役割を果たせず申し訳なかった」と話す人に、他者から「そうではなく、その時できることをやっていた」とフィードバックをもらえると、その人は、できていたことがあったと思える。寺岡さんは「体験したことをオフィシャルの場で表現することは、組織を立て直す上で大切なこと。話し合いなどの場を持つことで、組織のつながりが強くなり、組織のあるべき姿を考えることに役立っていく」と言う。

今必要な看護管理者へのサポート

本年度は看護管理者からのメンタルヘルスケアに関する相談には、メールや電話で対応している。看護管理者から、看護師長らのメンタルヘルスケアのサポートなどについて相談があるが、よく話を聞くと、その看護管理者自身も抑うつ的な反応で、自身を後回しにしてセルフケアができていないことがよくあるという。休養を取るなどのセルフケアが原則だが、この1年のコロナ禍の過酷な状況では、休養を取れないのが現状だ。今は、長期化による慢性疲労やバーンアウトが懸念されている。寺岡さんは、単にセルフケアの必要性を説くだけでなく、少しでもセルフケアができるように伝え方を工夫している。まずは小さなセルフケアを目標に立てることを提案する。例えば、就寝時間を1時間早めるなど、ごく小さなことでよいので、できることを一緒に考える。さらに看護管理者自身のセルフケアも、スタッフに促す際にも実践してもらいたいと考え、看護管理者には「具体的に小さな目標を立てることを続けてほしい」とアドバイスしている。

安心・安全な労働環境でのメンタルサポートを

コロナ禍をきっかけに、組織の脆弱な点がより顕在化した。相談者の置かれている状況はさまざまで、職員間の待遇に差が出ることもメンタルに影響を及ぼす一因となる。そもそも労働環境が整っていない施設ではメンタルヘルスへの関心が低く、メンタルサポートが難しい。「近年、メンタルヘルス対策に関する法が整備されているが形骸化が見受けられる」と寺岡さん。改めて働く環境でのメンタルヘルスの在り方、メンタルサポートの体制整備が急務だ。期せずして、コロナ禍においてメンタルヘルスへの関心がぐっと高まった。これを機に「組織のメンタルサポート体制整備につながる労働環境改善などにも、精神看護専門看護師やメンタルヘルスの専門家たちが介入しサポートできればいい」と寺岡さんは今後を展望する。

(2021年11月2日取材)