国際情報

出生登録に関するICNとICMの見解

児童は出生後直ちに登録される。児童は出生の時から氏名を持つ権利、国籍を取得する権利を有するものとし(子どもの権利条約第7条(*1))

子どもの権利条約が世界的に批准されたにもかかわらず、2000年現在、世界中で出生した子どもの41%しか登録されていない、とUNICEFでは算定している(*2)。この年に生まれた約5,000万人の子どもが、その後の人生を出生証明書もなく、したがって公式な認証や市民権を持たずに過ごすことになる(*3)。この問題は世界的なものであり、亡命者や避難民、移民の増加を含め人口移動の増大により悪化している。登録されていない出生の約70%はサハラ以南アフリカおよび南・東南アジアで起きている。

  • *1:国連(1986)。子どもの権利条約は1989年11月20日、国連総会で採択。
  • *2:UNICEF(2002)。出生登録。出生からの権利、2002年3月Innocenti Digest No.9。
  • *3:UNICEF(2002)Ibid。

出生登録がなぜ重要なのか

出生証明書を持たないことは、人として保健、教育、人生での可能性を達成する機会といった基本的サービスの入手を否定されることである。以下のことが、子どもあるいは大人にも不可能となる。

  • 法律で認められた無料のヘルスケアや他のサービスを受ける権利
  • 予防接種
  • 就学
  • 養子となる
  • 年齢や国籍の証明
  • 結婚
  • 土地の所有
  • 銀行口座の開
  • 社会保障を受ける
  • パスポートの取得
  • 投票

出生登録のない子どもたちは、出生証明書がなく年齢が確定できないため、法律で手当てされる保護を失う。結果として、搾取の犠牲者(労働、売春、ポルノグラフィー、麻薬売買)となる子どもたちの多くが非登録である。AIDSにより、15歳以下の子どもの少なくとも1,040万人が孤児となっており、無数の子どもたちが、その個人を特定できる証拠がないため、適切な親権を引き継ぐ権利も否定されている(*4)。全ての子どもたちへの出生登録は、親がなくとも個人識別の証拠を与えることを含め、HIV/AIDSにより残された子どもたちへの影響を緩和する有効な手段となる。

適切な出生登録制度の欠如は、政府が国民の正確な数を把握していないことを意味し、国民のニーズに基づく計画の妨害となる。登録されていない子どもたちは、重要な政策や予算決定の際に全く見過ごされてしまう(*5)。例えば、国で予防接種プログラムを立案する際、予防接種を必要とする子どもの数が分からなければ、どのように必要な物品数と人員を確定させるのか。出生と死亡の継続的な情報は、周産期、新生児、幼児、子ども、一般の死亡率統計といった重大な開発指標の編集に不可欠である。

アフガニスタン、コンゴ民主共和国といった国々は義務的な出生登録のシステムがない。しかし、登録制度があるからといって多くの出生が登録されることを保証するものでもない。UNICEFの報告によると、14カ国は出生登録が30-49%であり、12カ国は30%以下である(*6)。国によっては登録数の減少が見られる。パキスタンでは1998年に90%以上の登録があったが、2000年には75%に減少している(*7)。

  • *4:UNAIDS(2001)。Children and Young People in a World of AIDS。
  • *5:UNICEF(2002)Ibidから引用
  • *6:UNICEF(2002)Ibid p.10-11
  • *7:UNICEF(2002)Ibid

出生登録の障壁は何か

  • 政府、公務員、ヘルスケア従事者といった関連の専門職、親や一般の人々における 出生登録の価値認識の欠如
  • 親の無学
  • 特に地方や一定のグループあるいは種族間での不適切な登録のネットワークや仕組み
  • 移民や難民への不適切な登録制度
  • 社会・文化的な態度と違法と思える政策。異なった民族や国籍間の結婚。名付けにおける文化的な特定のルール
  • 性差別や家長的な国の法律
  • 行政の欠如は規制の不在やその力を弱めることになる。省庁間の協働・協力の欠如、貧しい執行体制、不適切な資金配分、不適切また不十分な人員とその仕組み
  • 特定の民族集団や特定の宗教グループを排除する政策方針の検討
  • 出生登録法の有効性の喪失、複雑、柔軟性がない、登録に際しての物理的な障壁
  • 国籍や市民権の問題
  • 子どもの登録を妨げる費用

どのように障壁を克服したのか

【各国の例】
国名 内容
ブラジル、ペルー これまで登録されていなかった全ての子どもたちを就学登録の際に登録した。
マレーシア 助産師、地方の警察官、村長に対し、管轄地域での出生の届出を法的に求めた。
フィリピン 「市民登録月間」を指定し、毎年2月に市民キャンペーンを行い、最優秀の登録事務官に賞を贈った。
ガーナ、インド 予防接種プログラムと関連付けた。
アルゼンチン 無料で登録と国民証明書を発行した。
ウガンダ 地域単位で家族調査を行った。

看護師と助産師に何ができるか

ICN看護師の倫理綱領には、「看護師は一般の人々(特に弱い立場の人々)のニーズと社会的ニーズを満たすための行動を開始・支援する責任を、社会と分かち合う」とうたわれている。ICM助産師の倫理綱領には、「助産師は倫理と人権の侵害が女性や子どもの健康に与える害を理解し、これらの侵害をなくすよう働きかける」と述べられている。

これらの声明は、市民としての基本的権利が脅かされる状況、特に人々の健康に影響する場合や、社会の最も弱い立場にある人々により広範囲な影響を与える場合において、看護師と助産師に対し、行動する社会的な責任と同時に倫理的であることを求めている。看護師は通常、家族への基本的なヘルスケア提供者である。彼らは都市や病院センター、地方やその保健センターや駐在所で働いている。このため、子どもの最初の権利となる出生登録を保証する好位置にいることになる。

看護師と助産師の多様な活動方法

  • 出生登録の重要性とその意味するところ、現住地での市民登録制度、機能レベル、登録率、障壁について、十分な情報を与える。
  • 子どもを含む全ての利害関係者間の課題となるよう、子どもや市民権に関する非政府組織、女性や法律団体、地域社会、学校、UNICEFといったほかのグループと協働する。
  • 必要な立法、現行の法律の更新、情報利用に関する保障、利用者に便利な登録制度や、全ての人々が簡単にアクセスできるよう、陳情やキャンペーンを行う。
  • キャンペーンやこの登録制度を人々が求めていることを生起させ、一般の人々への問題提起をはかる。地方コミュニティーや現行する法律や政策、実施の結果として不利あるいは排除しているコミュニティーを含め、全ての社会階層と共に活動する。
  • 看護師、助産師、他の保健職者間で、教育や訓練を通じて実施能力を構築する。
  • 看護師、助産師、他のヘルスケア提供者、特に直接的なサービス提供者に登録の重要性について、十分な情報提供が行われることを確実なものとする。これには登録制度について知ること、各地での弱者集団を明らかにすること、彼らの知見あるいは経験した障壁、正確で適切な助言や援助に必要な知識と技術、非登録の子どもたちの登録を促進するための活動、子どもの登録のための親への適切で直接的な支援が含まれる。