森下幸子さん(大阪府)

協会ニュース2015年10月号 特集:看護の専門性発揮に向けた特定行為研修制度の活用

看護の専門性発揮に制度を生かそう!

森下幸子さん
医療法人永広会島田病院 クオリティマネジメントセンター

森下幸子さん

認定看護師の専門性を生かし活動の幅を広げる

大阪府南東部、羽曳野市にある医療法人永広会島田病院は、整形外科を中心に43床を擁する。母体法人では、介護老人保健施設や訪問看護ステーションなども有し、高齢化が進む近隣住民の医療や介護を支えている。

森下幸子さんは、2004年に感染管理認定看護師の資格を取得して以来、主に集団に対する感染管理として、院内感染予防のための教育や周知など、院内における感染対策に関わってきた。一方で、同院に感染症専門医がいないことから、個別の患者の感染症に関する相談などが寄せられることもあり、対応の難しさを感じていた。

そのような状況の中、術後感染症による治癒の遅れや再手術が減少するような関わりができないかと模索していたところ、厚生労働省における特定行為に関する教育の試行事業が、日本看護協会看護研修学校で実施されることを知り、13年に参加。病態生理学や臨床薬理学などを講義・演習・実習と体系的に学ぶことで、医学的な思考過程や判断力を身に付けるとともに、感染症や抗生物質に関する知識もより深めた。その後、培った能力を生かして活動しようと、看護部長や理事長の理解を得て、14年から業務の試行事業にも参加した。

院内で、個々の患者の感染症にも関わるという新たな役割を担うために、どのようなことを学んできて、どのような対応ができるのかということを医師や多職種に周知するとともに、病棟の看護師とは感染症に関する患者の状況を具体的に共有するなど活動の基盤を作った。森下さんは「認定看護師として組織横断的に活動していたため、理解を得やすかった」と話す。感染症が疑われる患者へ個別に介入するとともに、医学的な部分を看護師や薬剤師らに分かりやすく説明することで、さらに多職種協働がスムーズになった。今では、手術部位感染による再手術件数の減少や、感染後の入院期間の短縮といった成果が出ているのではないかと実感できるまでになっている。

隣接する介護老人保健施設からも、利用者の発熱時などに対応の相談を受けることが増えた。利用者・家族が望む生活が続けられるよう医師や薬剤師、看護師と協働し、検査データだけでなく、年齢や認知・生活状況、家族の意向なども踏まえ、抗菌薬の選択や重症時の入院などの支援をしている。また、法人内の看護師に対し感染症に関する勉強会を開催するなど、看護の質向上にも力を入れている。

それまでの活動での問題意識をきっかけに、試行事業に参加して活動の幅を広げた森下さん。特定行為研修の活用について「看護としての活動の基盤があることが重要。そういう看護師が、看護とは違う医学的な視点を併せ持つことで、さらに看護の専門性を生かして患者に貢献できる」と語り、今後の活動の広がりにも意欲を燃やしている。

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