光根美保さん(大分県)

協会ニュース2015年10月号 特集:看護の専門性発揮に向けた特定行為研修制度の活用

看護の専門性発揮に制度を生かそう!

光根美保さん
大分県厚生連訪問看護ステーションつるみ

光根美保さん

大学院で身に付けた能力を訪問看護で活用する

日本有数の温泉地として知られる大分県別府市にある大分県厚生連訪問看護ステーションつるみ(以下「つるみ」)で管理者を務める光根美保さん。4人のスタッフと共に40人ほどの利用者を抱え、市内を走り回る毎日だ。

病院で長く働いてきた光根さんが訪問看護師に転身したのは、末期がんの患者さんとの関わりがきっかけだったという。ところが、勇んで飛び込んだ訪問看護の世界は、力不足を痛感するばかりだった。医師や他の看護師が近くにいて相談できる病院と異なり、1 人で訪問し、利用者の状態を見極め、判断することが求められる。そうした毎日の中、「利用者・家族が一生懸命に在宅で療養する状況に関わるには、看護師としてもっと力を付けなければ」という思いを募らせ、大分県立看護科学大学大学院にできたNP(ナース・プラクティショナー)養成課程の1期生として入学。在学時に、厚生労働省における特定行為に関する教育の試行事業に参加し、大学院修了後の11〜14 年には「つるみ」や母体の大分県厚生連鶴見病院、併設の介護老人保健施設で業務の試行事業に参加してきた。

大学院での学びと修了後の臨床現場での研修が、光根さんの現在の活動基盤となっている。大学院では、医学的な知識や思考過程を身に付けた。患者の症状から、今、身体の中で何が起きているのかを理解し、医療の必要性や緊急性を判断する能力を徐々に獲得していった。大学院修了後は、病院の総合内科や救急外来などを回り、研修を重ねた。

これらにより、患者の身体状態を的確に把握し、医療の必要性や緊急性を根拠に基づいて説明できる力を養った。そこに、看護師ならではの生活をみる視点や観察、細やかな気配りが加わることで、病気を抱えて生活する人の意思決定を支え、必要な医療を必要な時に提供できる。「生活をみることができるのが看護。医学と『ナース魂』があってこそ」と今の実践を語る光根さん。医学的な知識や思考過程、判断力を備えてはいても、看護の専門性に置いた軸足は揺るぎない。

光根さんが管理者となって3年余り。「つるみ」では、がんや心疾患といった重症例の割合が徐々に高まってきた。重症例に対しても的確な状況判断ができる光根さんに、地域の他職種も信頼を寄せ、依頼や相談が引きも切らない。在宅医の評価も高く、連携を取りながら在宅での看取りにも積極的に取り組んでいる。

「大学院のNP養成課程を修了した看護師がいる訪問看護ステーションという特色を出し、成果をしっかり数値化し発信していきたい」と光根さん。自律した判断が求められる機会の多い在宅領域で、大学院で身に付けた能力と看護の専門性を生かし、今日も地域を支えている。

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