研修修了者の実践例

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在宅主任 根本 千恵さん

所属施設・部署 社会福祉法人 平成記念会
介護老人福祉施設 ヴィラ町田
修了した特定行為区分 呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連
創傷管理関連
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
感染に係る薬剤投与関連
血糖コントロールに係る薬剤投与関連
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連
看護のニーズが高い特別養護老人ホーム

ヴィラ町田は、利用者数220名(ショートステイ20床)の特別養護老人ホーム(以下、特養)です。在宅酸素療法や胃ろう、インスリン注射の必要な医療依存度高い方が入所しています。嘱託医の診察は週に1度(精神科医は2週に1度)行われます。
特養は、利用者にとって自宅に代わる生活の場です。医師が常にいない中では、利用者の療養生活を支える上で、看護師が状態変化を捉え、タイムリーにかつ適切に対応できる力がとても大切です。看護の力が試される、とてもやりがいのある場だと思います。
特定行為研修(以下、研修)を受講する前から、看護主任として利用者の健康管理について責任を持つ立場にありました。しかし、利用者の状態変化を把握しても、医師と電話連絡がスムーズにいかないことも多く、対応が遅れてしまう課題を感じていました。特定行為研修制度のスタートを知り、研修で身につく知識や技術や、手順書に基づいて看護師が特定行為をタイムリーに実施できることは、利用者の安心にもつながると大きな期待を抱いて、すぐに受講を決断しました。

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研修での学びと現在の活動

共通科目の研修では、深く病態や解剖生理を学び、臨床推論という患者の状態を捉える思考過程を学びました。利用者の状態変化を根拠をもって捉え、言葉で的確に説明したり、医師に相談する力がつきました。
現在、研修修了者としての活動は3年目に入ります。手順書に基づく脱水症への対応のほか、感染症への薬剤の投与、インスリン投与量の調整、抗精神病薬の臨時投与などの状況が発生した際の対応のほか、週に1度の褥瘡評価を行い、壊死組織の除去や看護師に洗浄や処置方法の助言を行うなどの活動を行っています。また、検査値(採血・採尿)の確認、朝の申し送りや他フロアのリーダー看護師からの体調が悪い利用者などの報告を受けて、対応をしたり、他のスタッフや新しい研修生の指導、学習方法の助言、実習受け入れの依頼などの調整にも取り組んでいます。

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研修で看護が変わり、利用者の状態も安定へ

研修を受けてから、看護が大きく変わったと思います。それまで、医師の指示通りに処置などを行っていましたが、研修後は、自分自身でも患者のデータや状態を把握し、臨床推論に基づく判断を行い特定行為を実践しています。そして、手順書の範囲を逸脱する場合には医師に報告と相談を的確に実施し、指示を受けて処置などをできるようになりました。また、日常的に細やかに利用者の検査データや状態をチェックできるようになったため、脱水症を未然に防いだり、血糖のコントロールが安定するなどの成果につながり、嘱託医などから「全体的に異常なデータの人がいなくなってきた」と言われたり、同僚にも同様に利用者の変化を感じてもらえています。
特養の利用者は、療養環境の変化が身体的・精神的に大きく影響を及ぼすため、家族もできる限り入院は望みません。このため、異常の早期発見と重症化予防を行い、できるだけ当施設で安定した生活を続けられることがケアの目標となります。研修にもとづく看護の提供は、利用者や家族の安心や信頼関係を築くことにつながるものと実感しています。