ステップ4:目標設定から評価

    課題抽出・目標設定

    課題に対して、具体的かつ現実的な改善目標と達成すべき目標値を決めましょう。自分たちの病棟のベースライン(日常的な値)をもとに、ベンチマーク評価の中央値や四分位値等を参考にして、具体的な数値目標を設定することができます。経時的な変化もグラフで確認できますので、今までの取り組み成果も参考にしましょう。

    褥瘡、転倒・転落、感染、誤薬について、自分の病棟のデータを構造・過程・結果に整理して課題を検討できる、エクセルのツールも用意しています

    ポイント

    • 目標値を決めるには、自分たちのベースライン(日常的な値)を十分に把握しておくために、経時的な値の変化をみることが重要です。事情があって、その月だけ値が高くなることもありますので、一時点だけで判断することは避けましょう。そして、病棟の看護職員全員で課題を共有し、目標値を定めて、無理のない範囲で取り組みましょう。
    • 例えば、「転倒・転落発生率をゼロにする」という、絶対的な数値目標を立てると、苦しい状況になります。高齢化も進み、ある程度の転倒・転落は発生します。「ゼロ」という絶対的な数字よりも「許容できる範囲」を目標にしてはいかがでしょうか。もっとも重要なことは「転倒・転落による負傷発生」を防ぐことです。
    • 経年的に取り組むことは重要ですが、「昨年度よりも数値が良くなる」ことを目標にすると、毎年右肩あがりの成果が期待されます。一方で、病床稼働率の高い年、看護職員の入れ替わりが多い年もあります。病棟状況によっては「昨年度と同等の結果を維持する」という目標でもよいのではないでしょうか。

    改善策の検討

    目標が定まった後は、どのようにすれば目標を達成できるかを考えます。「何を」「どれぐらい」「いつまでに」「誰が」「どのようにして」達成するかを整理し、具体的な実施計画を立てます。実施計画は、いかに着実に実行に移していけるかが重要となります。改善のプロセスが着実に進行しているかを確認し、必要に応じて進め方の見直しを行えるようにするためにも、実施計画の中にDiNQLデータの「構造」「過程」「結果」の各項目のモニタリングを組み込むことも有効です。

    実行

    データをもとに強みと弱みを分析し、課題に対して目標を設定し、改善計画を立案すれば、いよいよ取り組みを実行に移していきます。
    しかし、「実行」は病棟看護職員に行動変容を求めることでもあり、簡単なことではありません。組織内での変革はさまざまな抵抗を受けやすいものです。

    労働と看護の質向上のためには、「やらされている」感覚ではなく、前向きに取り組む雰囲気が大切です。看護管理者だけが頑張るのではなく、病棟の看護職と一緒に無理のない取り組みを進めましょう。

    ポイント

    • (大変でも)楽しく取り組む雰囲気作りが大切です。
    • 自分たちの状況に合わせて、無理をしないで取り組みましょう。
      (多少の背伸びはOK。でも、苦しくては長続きしません)
    • ついつい細かい点や弱い部分が気になりますが、心にゆとりを持ち、大きな視点に立ちましょう。
      「できていること」を認めて褒め合うことは、さらなるモチベーションと信頼感につながります。
    • 具体的で明確な目標と行動計画は、チームの進むべき「道案内」となります。
    • 計画は定期的に見直しながら進めましょう(的確な軌道修正が重要です)。
    • 看護職一人一人が問題意識を持ち、積極的に取り組んでもらうための仕掛けが大切です。
    • 看護職だけではなく、他職種の協力、そして、何よりも患者さんの協力も必要です。。

    評価

    目標を達成できたのか否か、改善策は目標達成に有効だったのかなど、改善のためのPDCAサイクルの中で、取り組み成果の評価を行います。

    改善策にもかかわらず目標を達成できなかったのであれば、取り組みにより生じた変化を評価し、さらなる改善策を立て、実行していくことが必要になります。一方、目標を達成できた場合でも、さらに高い目標に取り組んでいったり、あるいはその水準を維持させることにも継続的な取り組みが必要となる場合もあります。

    いずれの場合も、取り組みの評価は判断基準としての数字(データ)が必要です。課題抽出のときと同様、ぜひDiNQLの評価指標を活用していただきたいと思います。

    改善活動では、即効性のある取り組みだけではなく、時間をかけて取り組むべき内容もあります。DiNQLの評価指標を活用し、労働と看護の質向上に継続的に取り組み、変化を見ていくことが重要です。

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