看護職の役割拡大の推進と人材育成

糖尿病看護認定看護師

基本情報

所属
社会福祉法人 聖隷福祉事業団 聖隷佐倉市民病院(千葉県)
実践者

髙橋弥生さん(専門・認定看護室 課長)

  • 【修了した特定行為区分】
  • 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
  • 血糖コントロールに係る薬剤の投与関連
  • 【受講理由】
  • 当院は、数年前に糖尿病診療の常勤医師が退職して以降、非常勤医師のみによる診療体制となった。そのため、糖尿病が専門外の医師から患者の血糖コントロールに関して相談を受けることが徐々に増えていき、医学的根拠をもって十分に応えられるよう、また患者の病状の変化にタイムリーに介入できるよう受講を決めた。
看護管理者
髙木智美さん(総看護部長)

<実践例>複雑な病態を有する患者へのタイムリーなインスリン投与量の調整による重症化予防

複雑な状態を的確にアセスメントし、安定した在宅生活へ

患者は夫婦二人暮らしの70代の男性で、2型糖尿病と診断されたが血糖コントロールは良好だった。
診断から6年後、肝臓と骨に転移のある膵臓がんと診断され化学療法目的で入院した。この時、HbA1 c 8.6%、随時血糖値312mg/dl と高血糖状態であった。悪性腫瘍による内因性インスリン分泌および糖の取り込み機能の低下、疼痛や倦怠感、食事量の変化による高血糖と病態を判断した。
主治医(消化器内科医)に病態や化学療法、食事量に応じて調整がしやすいインスリン強化療法の提案をし、手順書にもとづき患者の日々変化する病状、疼痛や食事量に応じてインスリン投与量の調整を行い、高血糖を防ぎ化学療法を終了した。
病状の悪化のため入退院を繰り返しているがインスリン投与量の調整をタイムリーに行い重症化を予防できた。
自宅で過ごしたいという患者の希望に応じて内服薬への変更を主治医へ提案し、自宅では内服薬に切り替えているが安定した状態を保持できている。

今後の展望

現状では、時間的制約があり同行訪問には至っていないが、次年度は、地域に出向くことを検討している。
対象となる人のニーズに応じて院内での介入にとどまらず、生活の場に出向き様々な場で特定行為を活かした医療・看護をタイムリーに提供していくことで、安心で安全な生活に向けたお手伝いができればと考えている。

看護管理者の声

常勤専門医不在のなか、DM のエキスパートとして頼られる存在

特定行為研修受講後の認定看護師が、手順書と個別事前指示書を用いて活動し、1年が経過した。高橋のPHSは以前より良く鳴る。
看護師はもちろんであるが、医師からのインスリン調整に関する相談に加え、医師記録に患者の病態判断や臨床推論を記載することで、薬剤師や栄養士から患者の支援方法についても相談されることが6倍も増えている。
高橋の電話が鳴る度に、こんなにも当院は困っていたのだと感じ、この電話の分、患者の血糖コントロールが迅速に行われているのだと、この特定行為研修修了者の必要性を改めて実感する。
認定看護師としての基盤の上に更に特定行為研修を受講したことで、患者の生活状況や今後の生活を踏まえた上で、患者に合った血糖コントロールへの介入をしていることを事例の報告や相談数の増加等から感じている。

活動の段階的な拡大を支援

図1:当院における段階的な特定行為の実施イメージ

高橋が活動を開始する際に、特定行為研修修了後の段階的な実践イメージを確認した(図1)。
最近は、手術を控えた外来患者の血糖コントロールについて、医師より相談があると聞く。
手術前の目標血糖になるまでのインスリン調整の相談と術前に要する入院日数の相談である。高橋が活動することで、患者にとって有用な活用、活躍の場がこんなところにも広がるのだと教えてもらっている。
時間的制約があり、現状では同行訪問に至っていないが、今年度は訪問看護師と連携した外来での介入、次年度からは地域への介入も可能なように支援をしていきたい。高橋には、当院での後任育成に使える育成モデル、教育プログラムの作成も期待として伝えている。
次々と特定行為研修を修了した認定看護師の活動が広がっていくことを楽しみにしている。