お知らせ

協会ニュース 2022年12月号

全ての看護職員のキャリアアップによる処遇改善へ大きな一歩

国家公務員医療職俸給表(三)の改正内容公表

日本看護協会 会長 福井トシ子

看護職員の給与は、看護部門の人員規模に比べてポストが少なく、キャリアパスを示しにくい、高度な知識や経験が十分評価された賃金体系となっていないことなどから、他の医療職と比べて賃金上昇のカーブが非常に緩やかです。具体的には、国家公務員医療職俸給表(三)では、新人から副看護師長まで約8割の看護職員が2級に留め置かれます。特に高度な専門性を有する専門看護師、認定看護師、特定行為研修を修了した看護師ですら、2級であることが多くなっています。そして、40〜50人の職員を従え、1つの病棟を管理する看護師長になって初めて3級に昇格するという点が課題として指摘されてきました。

このような中、11月18日に、国家公務員である看護職員の給与に適用される国家公務員医療職俸給表(三)の級別標準職務表の改正内容が公表されました。今回の改正は、管理的立場にある看護師や特に高度の知識経験に基づいて困難な業務を処理する看護師が、キャリアアップに伴い、より高い職務の級に昇格できるよう環境整備を図るためのもので、看護職員の賃金には公的価格、すなわち国家公務員医療職俸給表(三)が官民を問わず大きな影響を与えることから、国家公務員に限らず、全ての看護職員の処遇改善に向けた大きな一歩です。

今回の改正の柱は、①管理的立場にある看護師(看護師長、副看護師長)②特に高度の知識経験に基づき困難な業務を処理する看護師の位置付けの明確化と処遇改善です。【表】の「改正後」にあるように、看護師長の位置付けを現在の3級から4級に、また、非管理職の看護師と同じく2級とされていた副看護師長を3級とし、さらに「特に高度の知識経験に基づき困難な業務を処理する看護師」が非管理職であっても3級に位置付けられていることです。

【表】国家公務員医療職俸給表(三)級別標準職務表(現行・改正後)
現行 改正後
1級 准看護師の職務 准看護師の職務
2級
  • 看護師の職務
  • 保健師又は助産師の職務
  • 看護師の職務
  • 保健師又は助産師の職務
3級 医療機関の看護師長の職務
  • 医療機関の副看護師長の職務
  • 特に高度の知識経験に基づき困難な業務を処理する看護師の職務
4級 医療機関の副総看護師長若しくは副看護部長又は困難な業務を処理する看護師長の職務 医療機関の相当困難な業務を処理する看護師長の職務
5級 医療機関の総看護師長若しくは看護部長又は困難な業務を処理する副総看護師長若しくは副看護部長の職務 医療機関の総看護師長若しくは看護部長又は困難な業務を処理する副総看護師長若しくは副看護部長の職務
6級 特に規模の大きい医療機関の総看護師長又は看護部長の職務 特に規模の大きい医療機関の総看護師長又は看護部長の職務
7級 極めて規模の大きい医療機関の看護部長の職務 極めて規模の大きい医療機関の看護部長の職務

国家公務員医療職俸給表(三)を部分的に取り入れ、あるいは参考にしている医療機関はもちろんのこと、そうでない医療機関、あるいは訪問看護ステーションや介護施設等においても、今回の改正を受けて、ぜひ看護職員の賃金制度の見直しを進め、一人一人の看護職員の能力や役割、責任に応じて評価され、頑張りがきちんと評価される賃金制度へ変えていきましょう。ただ、看護職員は、医療機関の中で最も人数が多いだけに、組織全体に与える影響も大きく、賃金制度を変えていくのは一筋縄ではいかないと思います。

12月9日付で厚生労働省が各病院、訪問看護ステーションの団体等に対し、本改正内容を踏まえつつ、看護師のキャリアアップに伴う処遇改善の推進について検討を要請する通知を出しました。今までの補助金や診療報酬による処遇改善は、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員に限定されていましたが、この通知では、全ての看護職員を対象に検討が要請されています。

このような通知を活用しながら、今回の改正を大きなチャンスと捉え、まずは勤務先の賃金制度の内容を確認してみましょう。

<国家公務員医療職俸給表(三)改正を踏まえ看護管理者等が担う処遇改善のポイント>

  • 管理的立場にある看護師の処遇改善を図るために
    • 副看護師長という職名に限らず、主任、係長等の自施設での看護師長の補佐を行う中間管理職を非管理職より上位の級に位置付ける。
    • 副看護師長に相当する職位がない場合はポストを新設する。
    • 看護師長の級を引き上げ、看護師長以上の職位についても、より上位の級に繰り上げる。
  • 特に高度の知識経験に基づき困難な業務を処理する看護師の処遇改善を図るために
    • 専門看護師・認定看護師・特定行為研修を修了した看護師等を上位の級に位置付ける。
    • 経験や高度な知識経験によって各勤務帯のリーダー業務を担える人材等、職場内で重要な役割を果たす看護師(熟練したジェネラリスト等)を上位の級に位置付ける。

特に2.の「特に高度の知識経験に基づき困難な業務を処理する看護師」は、専門看護師・認定看護師として認定された看護師だけを指すのではないことに注目が必要です。高い熟練のレベルにあるジェネラリストの処遇の引き上げについては、日本看護協会の「看護職のキャリアと連動した賃金モデル」が参考になります。ぜひご活用ください。

賃金は、労働の対価として雇い主から支払われるお金であり、看護職員としての専門性の評価でもあります。このことを看護職員一人一人が認識し、自らの専門性を磨き、キャリアアップして、それに応じた評価・処遇を得られる。そんな賃金制度の実現に向けて、勇気を持って一歩を踏み出しましょう。本会は、あらゆる場で活躍している看護職員の処遇改善が実現できるよう、さらに活動を続けていきます。

  • 12月9日付厚労省通知、「看護職のキャリアと連動した賃金モデル」など看護職の処遇改善については、下記を参照。