助産師のおもな仕事 助産師になるには

今回は、栃木県の病院を訪ねました。ここには、産科のほかに、助産師が中心になって妊婦さんの出産を担う“バースセンター”という場所があります。助産師7人で運営をしています。

できるだけ医療の力を借りずに、お母さんと赤ちゃんが主役になり、家族に見守られて「自然なお産」をしてもらう場所をつくろうということで、誕生した施設です。

取材させてもらったのは助産師として27年のキャリアがある増渕弥生さん。バースセンターでの出産に、立ち会わせてもらいました。妊婦さんは、3人目の出産です。女性が本来持っている「生む力」、赤ちゃんの持っている「生まれようとする力」を最大限発揮できるように、増渕さんがサポートします。バースセンターでは、妊婦さんは自由な体勢でお産をすることができます。この日は、赤ちゃんのお父さんも付き添っていました。出産の経験があるとはいえ、お産は大変なもの。増渕さんは、状況を冷静に判断して、呼吸の仕方や、どのタイミングで息めばいいか、など的確にアドバイスをしていきます。……そして赤ちゃんが生まれました! 生まれた赤ちゃんをしっかりと抱きとめるお母さん。「生まれてきたねえ」と、誕生した新しい命に増渕さんが声をかけます。

ほかの助産師がすぐに赤ちゃんの健康状態をチェック。体重3,780グラム、身長50センチ、元気な男の子です。しかし、出産はこれで終わりではありません。お母さんは、胎盤(たいばん)をからだの外に出さなければなりません。胎盤は、妊娠中にお母さんの体内で、赤ちゃんに栄養を送る役割をしていました。増渕さんは、胎盤が外に出るまでサポートします。胎盤が外に出たら、お母さんは赤ちゃんへ初めての授乳。赤ちゃんがうまく母乳を飲めるように増渕さんが付き添ってアドバイスをします。

バースセンターでは、妊娠初期から妊婦健診や母親学級、マタニティヨガなどを通じて、お産に必要な心と体づくりを妊婦さんに呼び掛けています。「妊婦さんと助産師は長いおつきあいになります。お互いによく相手を理解して、コミュニケーションをとることがいいお産につながります」と増渕さん。「丸一日もかかる大変な出産もあるけれど、赤ちゃんが誕生した瞬間の喜びは何ものにも変えられません」と目を細めました。

増渕さんのインタビューから

<病院の中にあるバースセンター(院内助産)>

「バースセンターは、病院の中にあって、産科病棟とは別に、医師の力を借りずにお産をする場所です。家庭的な雰囲気の中で、助産師とお母さん、ご家族の皆さんと触れ合いながら過ごすことができます。ここが産科病棟との違いです。しかも緊急時には、病院の中にあるというメリットもあり、医師や産科病棟にいるスタッフとすぐに連携できるので安心です」

協力:社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部
 栃木県済生会宇都宮病院バースセンター