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看護倫理

日本看護協会

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患者の家族による暴言と看護ケアの妨害

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患者プロフィール

  • 50歳代/女性/主婦
  • 夫と二人暮らし
  • 子供は2人(長男・長女)がいるが、ともに独立

患者の状況

患者は、1年ほど前から胸骨部に隆起するものがあることに気付いていたが、放置していた。2、3ヶ月が経過するにつれて、次第に上肢挙上時に胸部痛が出現するようになったため、4ヶ月目に近所の整形外科を受診する。そこでリハビリテーションを受けるが、一向に症状が改善しないため、発症から6ヶ月目に総合病院を受診する。胸部、背部の痛みに上肢の痺れが出現し、自力で動けない状態であった。骨シンチ、コンピュータ断層撮影等の検査により、乳がんおよび多数の骨転移が判明した。転移は頭蓋骨、脊椎に多発しており、特に頚椎には圧迫骨折が認められた。

家族
  • 夫は、定年を控えたサラリーマン。些細な事でも激しい怒りを表出し、相手が謝るまで怒鳴り散らすため、子供や親戚とは疎遠な状況にあった。
  • 特に、長男は全く病院に来ることはなかった。
  • 長女は、父親と顔を合わせることを避けるため、時間をずらして面会に来ていたが、患者の姉妹は面会を控えていた。

このような状況の中でも、患者は「主人がいなければ私は生きていけない」と言い、患者と夫との間には依存的な関係が見てとれた。

夫の問題行動

夫は、毎日判で押したように定刻に面会のため来院している。

患者の治療が期待する結果に向かわず、化学療法による副作用が出現し、患者の容態が不安定になった頃から夫は、「そっち(医師)が入院して欲しいと言ったから入院したのだから治してもらわないと困る。」との主張を繰り返し、次第に大きな声を上げるようになった。医師は、病状の説明を繰り返し行ったが、夫の理解が進んでいるようには見えなかった。また、夫は治療の選択についても、その内容を言葉にして表現することはなかった。患者も、「夫に聞かないとわからない。」と言い、自分で決定することを拒んでいるような印象であった。さらに夫は、長女が妻と面会していることについて、看護師が勝手に呼び入れていると思い込み、気に入らないようであった。

夫は、患者の病状が進行するだけで回復には向かわないという現実と向き合うことが困難であり、医師が患者の治療上の決定や悪いニュースを伝えた後に、女性職員に対し激しい怒りを向けるようになっていった。具体的には、テレビカードの置いた場所が自分のいない間に変わっていたと言い、2〜3時間にわたり看護師を大部屋に拘束し大声で怒鳴り続けるなど、些細なことから収拾のつかないような事態を招くものが多かった。

こうした状況においては、これまで複数の男性医師が2〜3時間かけてその場を収めてきたが、それでも医療者からの要請や注意などを聞き入れることはなく、一方的に医療者が悪いと決め付け、医療者に対し強く謝罪を求めるという事態に発展していった。

臨床現場の悩み

1.患者および夫に対し、インフォームド・コンセントを得ることができない。
  1. 夫は、医師の説明に対して何の意思表示もせず、「早く治せ」を繰り返すだけである。妻の入院生活や診療に関する協力には、一切応じない。さらに、夫に治療に関する判断を求めたり、妻の病状の悪化を伝えたりすると激昂する。
  2. 医師や看護師が夫の暴言を制止するが、全く聞き入れられず興奮状態が長時間に及び逆効果になっていた。
  3. 夫の怒りが長女に向きはじめると、患者は、その矛先が医療者に向くような発言をするようになる。
  4. 夫は、長女が患者に面会することを一方的に拒否し、患者にも長女の面会を拒否する発言を強いる。
  5. 患者も夫の言動に心理的な苦痛を感じてはいるが、夫に自分の意思表示をすることができない。
2.患者と同室者らの入院環境の破壊がある。
  1. 夫を別室に誘導するように試みるが絶対に病室から離れないため、夫の面会時には患者や同室者の緊張が増大する。
3.診療や看護が妨害されている。
  1. 医師や看護師を何時間にもわたり拘束し、診療や看護の妨害になっている。
  2. 夫から診療行為や看護ケア以外の些細な事で怒鳴られ、面会時には看護師を威嚇するような視線を送るため、看護師たちは、夫の面会時に患者に近づきたくない気持ちになってしまう。
  3. 患者が、夫の誘導により発言するため、患者の本心が分からなくなり、看護師は患者に近づかない方がよいのではないかと思うようになっている。
4.夫からの暴言が女性職員に向けられている。
  1. 診療や看護の妨害ばかりではなく、女性職員に対して威嚇や暴力的な言動をするため、恐怖を覚えるまでに至っていた。
  2. 女性職員は、仕事以前に自分自身の身の危険を感じるようになっていたが、その場を離れるわけには行かない思いとの狭間でつらい気持ちになっていた。
  3. 夫が興奮すると、病院の職員との話し合いを拒否し、「拉致される」と怒鳴り別室に移動することも拒んだ。
  4. 男性職員に対して暴言を吐くことはなかった。

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