[事例紹介]
患者は、1年ほど前から胸骨部に隆起するものがあることに気付いていたが、放置していた。2、3ヶ月が経過するにつれて、次第に上肢挙上時に胸部痛が出現するようになったため、4ヶ月目に近所の整形外科を受診する。そこでリハビリテーションを受けるが、一向に症状が改善しないため、発症から6ヶ月目に総合病院を受診する。胸部、背部の痛みに上肢の痺れが出現し、自力で動けない状態であった。骨シンチ、コンピュータ断層撮影等の検査により、乳がんおよび多数の骨転移が判明した。転移は頭蓋骨、脊椎に多発しており、特に頚椎には圧迫骨折が認められた。
| 家族 |
|
|---|
このような状況の中でも、患者は「主人がいなければ私は生きていけない」と言い、患者と夫との間には依存的な関係が見てとれた。
夫は、毎日判で押したように定刻に面会のため来院している。
患者の治療が期待する結果に向かわず、化学療法による副作用が出現し、患者の容態が不安定になった頃から夫は、「そっち(医師)が入院して欲しいと言ったから入院したのだから治してもらわないと困る。」との主張を繰り返し、次第に大きな声を上げるようになった。医師は、病状の説明を繰り返し行ったが、夫の理解が進んでいるようには見えなかった。また、夫は治療の選択についても、その内容を言葉にして表現することはなかった。患者も、「夫に聞かないとわからない。」と言い、自分で決定することを拒んでいるような印象であった。さらに夫は、長女が妻と面会していることについて、看護師が勝手に呼び入れていると思い込み、気に入らないようであった。
夫は、患者の病状が進行するだけで回復には向かわないという現実と向き合うことが困難であり、医師が患者の治療上の決定や悪いニュースを伝えた後に、女性職員に対し激しい怒りを向けるようになっていった。具体的には、テレビカードの置いた場所が自分のいない間に変わっていたと言い、2〜3時間にわたり看護師を大部屋に拘束し大声で怒鳴り続けるなど、些細なことから収拾のつかないような事態を招くものが多かった。
こうした状況においては、これまで複数の男性医師が2〜3時間かけてその場を収めてきたが、それでも医療者からの要請や注意などを聞き入れることはなく、一方的に医療者が悪いと決め付け、医療者に対し強く謝罪を求めるという事態に発展していった。
| 1.患者および夫に対し、インフォームド・コンセントを得ることができない。 |
|
|---|---|
| 2.患者と同室者らの入院環境の破壊がある。 |
|
| 3.診療や看護が妨害されている。 |
|
| 4.夫からの暴言が女性職員に向けられている。 |
|