看護実践情報

非協力的な患者・家族

倫理的問題の概要

看護者の倫理綱領の条文3には、「看護者は、対象となる人々との間に信頼関係を築き、その信頼関係に基づいて看護を提供する。」と謳われている。しかし、患者や家族の態度や考え方が非協力的であると受け取られる状況では、看護職は、患者や家族との関係性を保ちながら看護を提供する事に困難さを感じることがある。

●協力とは

協力とは、ある目的に向かって力を合わせること(大辞泉)であり、看護に置き換えてみると、患者の健康回復や苦痛の緩和など、同じ目的に向かって皆で心をあわせることや、何かを同時に行うために皆で息をあわせたり、皆で助けあってひとつのことをなすことなどとして解釈する事ができる。これらと反対のことが起きている時、例えば、看護職が患者の苦痛緩和を目的として指示薬を投与しようとする時に家族に反対される、日常生活の自立を促進する目的で座位や歩行を勧めるが、患者は言を左右にして拒否するなどの場面に出合うと、看護職は患者や家族が「非協力的」であると感じることがある。このように「非協力的」と感じる場合、いくつかの理由が考えられる。先ず、その理由を探り、その上で解決策を考える必要がある。

●「非協力的」だと感じる場合の理由・背景

1. 患者・家族の理解とのずれ

協力とは、ある目的に向かって力を合わせること(大辞泉)であり、看護に置き換えてみると、患者の健康回復や苦痛の緩和など、同じ目的に向かって皆で心をあわせることや、何かを同時に行うために皆で息をあわせたり、皆で助けあってひとつのことをなすことなどとして解釈する事ができる。これらと反対のことが起きている時、例えば、看護職が患者の苦痛緩和を目的として指示薬を投与しようとする時に家族に反対される、日常生活の自立を促進する目的で座位や歩行を勧めるが、患者は言を左右にして拒否するなどの場面に出合うと、看護職は患者や家族が「非協力的」であると感じることがある。このように「非協力的」と感じる場合、いくつかの理由が考えられる。先ず、その理由を探り、その上で解決策を考える必要がある。

2. 患者・家族の誤解や不信

かつては、患者は、はじめからある程度の信頼を医療機関に寄せ受診している。信頼を寄せていなければ、診察や検査などの医療行為をそこで受けようとは思わないと信じられていた。しかし、1990年代末に生じた相次ぐ医療事故により、医療に対する信頼は大きく揺らいだとみなければならない。看護職が提供するケアの方法のわずかな差や、医師の十分とはいえない説明は、容易に看護職やその他の医療者への不信や誤解につながりうる。

3. 家族関係の問題や緊張

患者と家族の関係の悪さや家族間に大きな考え方の相違がある場合、「非協力的」な状態を招くことがある。また、仕事や経済的問題など社会的な問題を抱え、対処できずに苦しんでいる場合も、「非協力的」にみえることがある。

4. 患者・家族の支配的なパーソナリティ

医療者側の努力にもかかわらず、「非協力的」とみなさざるを得ない患者・家族が存在することも事実である。例えば、1.非現実的と思われる目標に執着し、到達できないことで医療者を責める 2.治療上、必要な制限を守ろうとしない 3.ルールを無視するなどの言動が目立つ 4.他の患者に迷惑をかけるような行動を繰り返すなどである。

●看護職自身の価値観

看護職自身の行動や考え方が、患者・家族の協力を得にくくしている場合もある。業務の遂行に重きを置くことで、患者やその家族の気持ちへの配慮が不足したり、患者の価値観が理解できず、自分の価値観から患者の言動に疑念をもってかかわる場合などである。

考えられる方策

患者や家族が「非協力的」であると感じる状況に遭遇した場合、看護職は、その患者や家族を、患者の健康回復、社会復帰などを共通目標とする共同していく存在として捉えることができているか、ケアに患者が主体的に参加できているか、看護職と患者やその家族が相互に協力しあえる状態であるかを確認していくことが必要である。また、医療や病院の仕組みを理解しているかなど、患者や家族の準備状態のアセスメントも必要である。そして、看護職が一人で対応を抱え込まないよう、医療チームとしての協力が必須である。人を対象とする行為は人と共同する行為であり、対象との相互作用の質が問われる。

  1. 患者や家族に起きている状況を理解するために、患者の身体的、精神的、社会的側面はもとより医療環境への適応状態、医療者との関係性を含め再度アセスメントする。
  2. 看護職は、健康問題を抱え戸惑う患者や家族のありのままを受け入れ、支える。
  3. (生じている)状況について、患者や家族、医療チームの共通理解をはかる。
  4. 目標の再設定を行う際に、できるだけ患者や家族との話し合いの場をもち、特にどのようなことに価値を置いているかを理解し、目標の共有に努める。
  5. 目標達成のため、患者や家族ができること、しなければならないことの同意を得て、それぞれの役割分担を行う。
  6. 皆で共同しあっているという意識の下で、患者や家族を自律した人格としてとらえ、接する。
  7. (患者や家族が)否定的な反応を示すこともあるが、それは受容過程や適応スタイルとなっている場合もある。患者や家族のありのままの状況を受け入れるため、時には大局的に見守る。
  8. 患者や家族が暴言や暴力を振るう時には、周囲の患者や職員の安全を第一に考え、早期に専門的な保安要員の協力を得る。
  9. 非協力的な患者や家族への対応は、看護職にストレスを与えるため、看護職同士で思いや戸惑いを共有する話し合いの場を設ける。

【参考文献】

  • 1)赤林朗・浅井篤・大西香代子・白浜雅司:臨床に役立つ倫理的諸問題のキーワード 解説&事例、インターナショナルナーシングレビュー(24)3、pp.44−47、2001
  • 2)足立みゆき・宮脇美保子:看護師のどのような経験が「他者とのつながりを持つ能力」を高めるか、Quality Nursing、(9)12、pp.14−18、2003
  • 3)松浦治代・吉持智恵・宮脇美保子:患者との関係性において看護師がもつしっくり感、Quality Nursing、(9)12、pp.25−30、2003
  • 4)杉谷藤子・川合政恵:「看護者の倫理綱領」で読み解く ベッドサイドの看護倫理事例30、日本看護協会出版会、2008
  • 5)長岡成夫:信頼、新潟大学教育人間科学部紀要、(5)1、2002
  • 6)松浦利江子:ケアを支える看護倫理の探究のための序章、長野県立看護大学紀要、(11)、pp.1−9、2009 
  • 7)清水哲郎:医療現場に臨む哲学、勁草書房、pp.70−77、1998

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