- Q.1 私の病院では師長も主任も管理者だとして残業代が出ません。管理職手当は付いても、スタッフ時代より手取り額が減りました。これって、「名ばかり管理職」ではないですか
- A.1
労働基準法上、「管理監督者」は労働時間や休日の規制の適用外で、「時間外勤務手当」(休日割増含む)の支払いは不要とされています。
しかし、看護師長として管理職手当をもらっていても、(1)部下の人事に関する権限がある(2)出退勤の自己裁量がある(3)職務に見合う賃金を受けている―という要件を全て満たさなければ「管理監督者」と見なすのは難しく、一般スタッフと同様に時間外勤務手当の支給が必要です。
- Q.2 病棟師長をしています。部下から多数の育児短時間勤務制度の利用希望があり、とても対応できません。「あなたにだけ認めるのは不公平なので認めない」と伝えたら「公的機関に相談する」と言われました
- A.2
残念ながらあなたの発言は管理職として不適切で擁護できません。育児・介護休業法は事業主に3歳未満児を持つ労働者への短時間勤務制度適用を義務付けています。
労働者の申立てを受けた都道府県労働局雇用均等室は、事業主に事情聴取し紛争解決をあっせんしますので、病院組織として誠実に対応してください。それ以前に自主的な解決が望ましいことは言うまでもありません。
- Q.3 16時間夜勤を13時間以内に短縮するにあたって「長日勤」の設定を検討していますが、勤務負担や家庭生活との折り合いが難しいなどの不安があります。勤務帯設計のポイントを教えてください
- A.3
(1)可能な限り「長日勤」の設定を避け、実働8時間以内の複数の勤務帯を組み合わせます(例1:早日勤8時間と遅日勤8時間、例2:日勤8時間中日勤4時間)。やむを得ず「長日勤」を設定する場合は、勤務負担軽減策として(2)日々の長日勤者数を最少限にし(3)業務内容を見直します。さらに(4)夕方の勤務への手当支給(5)個々の職員が勤務パターンを選べるようにする―などが考えられます。
- Q.4 短時間正職員として週24 時間勤務を希望する職員がいます。勤務時間が正職員の所定労働時間の4分の3以上でないと健康保険、年金保険に入れないのでしょうか
- A.4
短時間勤務でも以下の観点から勤務先との間で「常用的使用関係」にあると認められれば、社会保険に加入できます。(1)就業規則で短時間正社員(正職員)制度を定めている(2)期間の定めのない労働契約を結んでいる(3)時間あたりの基本給および賞与・退職金などの算定方法がフルタイム正社員(正職員)と同等(「短時間正社員に係る厚生年金保険及び健康保険の適用について」庁保険発第0630001号 平成21年6月30日)
- Q.5 1歳未満の子を持つ職員が育児時間を利用して午前・午後30分ずつ、院内託児所へ行き授乳したいと希望しています。育児時間の運用方法を教えてください
- A.5
1日2回、少なくとも30分ずつの育児時間を、勤務中のどの時刻に取るかは労働者の請求に任されています(労働基準法第67条)。勤務時間の始めや終わりにまとめて取ることも可能で、実際に保育所への送迎のために利用する例も多くあります。まずは職員の希望に応じて取得できるような職場のルールづくりが大切です。
なお、育児時間を有給とするか無給とするかは、労使の話し合いに委ねられています。
- Q.6 妊娠が分かった女性職員に対して、労働時間管理上で注意すべきことを教えてください
- A.6
妊産婦が請求した場合には時間外労働、休日労働、深夜業(22時~5時)をさせることはできません。また、変形労働時間制が取られる場合(例:1回10時間を超えるシフト勤務など)にも、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させることはで ません(労働基準法第62 条)。
なお、妊産婦がこれらを請求し、また利用したことを理由に正職員からパートへの転換を強要するなどの不利益な取り扱いは、男女雇用機会均等法ならびに育児・介護休業法で禁じられています。
- Q.7 平成28年診療報酬改定で新設された「夜間看護体制加算」の算定のために、3交代制勤務を16時間夜勤の2交代制に変更する病院方針が示され、どう対応すべきか迷っています
- A.7
加算算定は、勤務体制を見直し負担軽減を進める好機です。しかし「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」では勤務拘束時間の上限は13時間で、16時間夜勤の導入はお勧めできません。加算の算定要件では3交代は「正循環」の勤務編成が求められるため、加算を取りやすい2交代にするのだとすれば、新設の趣旨である「医療従事者の負担軽減」に逆行します。慎重な対応をお願いします。
夜勤・交代制勤務>夜勤・交代制勤務に関するガイドライン
- Q.8 3交代制で勤務間隔を11時間以上空けるための方法を検討しています。勤務予定表では「日勤→深夜勤」としておき、実際には日勤の午後は有給休暇を取得させて「半日勤―深夜勤」とする方法に問題はありませんか。
- A.8
深夜勤入りの前の日勤ごとに有給休暇を強制的に取得させることになり、法的に不適切です。また、「半日勤―深夜勤」の勤務編成は、仮に勤務間隔を11時間以上確保できたとしても、人間の生体リズムに逆らう「逆循環」にあたります。勤務負担軽減に向けて「正循環」の勤務編成(日勤―準夜勤―(休)―深夜勤)の導入をご検討ください。
- Q.9 新規採用者への病棟での指導を勤務終了後に実施した場合、新規採用者にも時間外勤務をつける必要がありますか
- A.9
時間外勤務とすることが妥当です。新規採用者が受ける教育指導は業務遂行能力の育成には欠かせない、業務性が強いものです。厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき措置に関するガイドライン」(1月20日策定)では、「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間」を労働時間としています。ぜひ参考にしてください。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省)
- Q.10 夜勤者の確保が難しく、人材サービス会社の夜勤専従看護師の派遣を利用したいのですが、法的に、また診療報酬の算定要件上、可能でしょうか
- A.10
労働者派遣法では、医療関係業務への看護職の労働者派遣は禁止されており、夜勤専従勤務を含め違法です。一方、看護業務であっても、その後の直接雇用を前提とした紹介予定派遣や産休・育休・介護休業などの代替要員の派遣は可能です。診療報酬(入院料)算定要件の平均夜勤時間数計算に際して除外できる夜勤専従勤務者に雇用形態の制限はなく、直接雇用の非正規職員(アルバイトを含む)のほか、上記の合法の派遣労働者は該当します。
- Q.11 当院では、新規採用者には試用期間(3カ月)中は超過勤務手当を支給しません。指導担当者を付けており、まだ一人前ではないためですが、この対応で問題ないでしょうか。
- A.11
誤った取り扱いです。至急、是正してください。試用期間中であっても業務を行っている時間は労働時間であり、時間外労働があれば割増賃金の支払いが必要です。
なお、新規採用者への教育指導は業務性が高く、教育指導を受けている時間は労働時間として扱います。厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日)を参照ください。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省)
- Q.12 年度初めの多忙な状態の中で、月100時間を超える超過勤務をした職員がいます。早急に取るべき健康管理対策は何でしょうか。
- A.12
まずは休日・休暇を与えて十分に休息が取れるようご配慮ください。労働安全衛生法では事業主に対し、長時間労働による健康障害の防止のため、月100時間を超える時間外・休日労働をした労働者が申し出た場合には、医師の面接指導を受けさせた上、必要な措置を講じるよう定めています。
医師による面接指導は、80時間超えの場合は努力義務とされますが、いずれにせよ長時間労働の縮減に向けた取り組みが重要です。
- Q.13 病棟の看護師長です。人員不足のため時間外勤務が週20時間を超え、疲労が蓄積し健康が不安です。管理職手当がつくからと、残業代は支給されません。
- A.13
時間外勤務は月80時間超で過労死の危険があり、勤務負担の軽減が必要です。労働基準法上の管理監督者に該当すれば時間外・休日労働の規制はありませんが、病棟看護師長の場合、管理職手当が付いていても該当せず、規制が適用され、時間外・休日労働に対する残業代を支給しなくてはなりません。定額の管理職手当に残業代が含まれる場合には、これに含む時間外労働時間数を定めておき、超えた時間には別途残業代の支給が必要です。