看護職の労働環境の整備の推進

ナースのかえるプロジェクト

2人のナースの「過労死」認定をきっかけに、「ナースのかえる・プロジェクト」始動

2008 年10月、2人の看護師の死亡が「過労死」と認定(注1)されました。これを受けて日本看護協会は、「2008年時間外労働、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査」を実施、結果を踏まえて過労死につながりかねない長時間労働の自主点検と、労働時間管理適正化の取り組みを呼び掛けました。これが「過労死を二度と繰り返さない」「安全で質の高い看護の提供のために」を掲げた「ナースのかえる・プロジェクト」の緊急アピールです。

(注1)看護師過労死認定事例について
  • 東京都内A病院手術室勤務看護師(当時24歳)の死亡を労災認定(2008年10月9日付東京都三田労働基準監督署)。「月の残業は100時間超」(遺族側弁護士)あったとされ、当直明けに職場のストレッチャーで仮眠中死亡。
  • 大阪府内B病院看護師(当時25歳)の死亡を公務災害と認定(2008年10月30日付大阪高裁判決で国家公務員災害補償法に基づく遺族補償の支払いを国に命令・国は上告せず判決確定)。脳血管疾患による死亡が「不規則な夜間交代勤務によって、身体的・精神的に高い負荷を与えていたものと認められる」(大阪高裁判決文より)として、月の時間外勤務50〜60時間に交代制勤務の過重性を加味して認定された。

2008年 時間外労働、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査

緊急実態調査で「過労死危険レベルの看護職員が2万人」判明

「2008年時間外労働、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査」では、交代制勤務をする看護職員の約23人に1人が「過労死危険レベル」(注2)の勤務をしていることが分かりました。これは全国の病院勤務看護職員のうち約2万人に相当します。ほかにも、時間外勤務が長いほど慢性疲労の自覚症状が増える傾向があり、慢性疲労自覚症状が多い看護職ほど、医療事故の不安を「いつも」感じている率が高いこと、さらに看護管理者の多くが労働時間管理に問題があると感じており、その原因を「長年の慣例・慣習」のほか、増員困難、欠員未充足、経営上の問題にあると考えていることなどが把握されました。

「2008年 時間外労働、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査」

第T部 個人対象:「時間外労働、夜勤・交代制勤務に関する実態調査」
第U部 管理者対象:「看護職の労働時間管理に関する実態調査」

【調査結果】

(注2)「過労死危険レベル」
  • 交代制勤務をし、かつ月の時間外勤務が60時間を超える勤務を指す。大阪高裁判決が「公務災害」と認定した勤務実態を参考とした。

患者の安全と職員の健康を守る運動「ナースのかえる・プロジェクト」を呼び掛け

この調査結果を踏まえて、本会はすべての医療機関において労働条件・労働環境を自主点検し、健康で安全に働き続けられる職場づくりに早急に着手するよう、現場での取り組みを呼び掛ける緊急アピールを行いました。

「ナースのかえる・プロジェクト」のネーミングは、単に①残業をしないで「かえる」、という意味だけではなく、
②安全な医療環境に「かえる」
③納得のいく質の高い看護に「かえる」
④職員の健康や安全を守る職場に「かえる」、
⑤内閣府のワーク・ライフ・バランス・キャンペーン「かえる・ジャパン」と連携する「かえる」などの意味が込められています。

かえるプロジェクト 支援内容

日本看護協会は「看護職員の労働条件・労働環境の改善」の取り組みをさらに拡充強化

「ナースのかえる・プロジェクト」は、それぞれの現場での主体的な取り組みを、日本看護協会が支援するものとして提起されました。日本看護協会は次の課題への取り組みを拡充強化しています。

  • 制度政策要求(診療報酬改定、厚生労働省予算)
  • 看護管理者研修の充実など、取り組みの進め方を支援
  • グッド・プラクティス(好事例)の情報収集・情報共有
  • 厚生労働省、病院団体、労働組合などとの連携