看護職の労働環境の整備の推進

給与の工夫事例

見てみよう!病院によって取り組みいろいろ

看護職の働き方やキャリアパスが多様化する中で、どのように職員のやる気を引き出し生産性を高めるかが医療・病院経営にとって重要なポイントとなります。今回の調査協力病院の事例を基に、実際の現場でどのような給与の工夫が行われているのか見てみましょう。

給与の工夫別一覧
工夫例 A病院 B病院 C病院 D病院 E病院 F病院 G病院 H病院 I病院 J病院
評価結果を給与へ反映
公正・透明な評価目指す
専門看護師・認定看護師の工夫 該当者なし 該当者なし 該当者なし
師長・主任の工夫
夜勤者にもっと手厚く
短時間正職員の工夫 制度なし 制度なし 制度なし 制度なし 制度なし 制度なし
中途採用者の工夫

1.評価結果を給与へ反映

病院等の医療施設が存続・発展するためには、職員のやる気や向上心を引き出し、組織を活性化し生産性を高めることが重要です。教育支援に力を入れて個々の能力を引き出す人材育成・評価制度や、納得性の高い給与の仕組みは、一般企業でも注目され多く取り入れられています。
今回の調査協力病院では、人材育成を重視した人事制度運用を行っているという共通点がみられました。
以下では、調査協力病院における人材育成−評価−給与制度運用のさまざまな工夫を紹介します。

調査協力病院における「人材育成−評価−給与制度」のイメージ図

人材育成・評価制度として用いられていたものには、目標管理、クリニカルラダー、人事考課、役割等級、成績評価などがあり、それらによる評価の結果は、賞与額、次年度の昇給額、昇格・昇進に伴う昇給などに活用されている。

調査協力病院における「人材育成−評価−給与制度」のイメージ図

事例 パターン1

長めのインターバルの評価を給与へ反映 → 長期的な人材開発+職員の働きがいアップ

D病院
ラダーに基づく目標管理制度。2〜3年の累積評価ポイントで次年度の基本給の昇給額を決定し昇格に活用。1年間の評価ポイントで賞与の加算額を決定。
F病院
等級別の役割定義書にもとづく目標管理制度。経年的な評価結果は昇格に活用。1年間の評価結果で次年度の基本給の昇給額と賞与額を決定。
G病院
キャリアコース別・等級別の職能要件書に基づく目標管理制度。経年的な評価結果は昇格・コース変更に活用。1年間の評価結果で次年度の基本給の昇降給額を、また、半期ごとの評価結果で賞与の増減額を決定。

事例 パターン2

短いインターバルの評価を給与へ反映 → 一時的な不調も通年で挽回のチャンスあり

C病院
年1回の人事考課結果で次年度の基本給の昇給幅を決定。年3回の目標管理評価結果で賞与の加算額を決定。
H病院
年2回の成績評価結果で賞与の加算額を決定。通年の評価結果で次年度の昇給額を決定。

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2.公正・透明な評価を目指す

職員評価の成功の秘訣は「公正性・透明性の担保」。評価の方法・結果・理由がクリアでなければ、職員のやる気やモチベーションを逆に下げてしまいます。
調査協力病院では、公正・透明な制度運用に向けて以下のような工夫を行っています。自分の施設ではどのポイントが実施済みですか、未実施ですか。チェックリストとしてもぜひご活用ください。

<公正・透明な評価の工夫一覧>   ◎:重要度の高いポイント
工夫ポイント A病院 B病院 C病院 D病院 E病院 F病院 G病院 H病院 I病院 J病院
◎評価の実施
◎客観的な評価指標
◎評価方法・指標の公開
◎評価結果の公開*1
◎定期的な評価者訓練
複数名による評価
上司⇔部下の双方向評価
不服申し立て制度

*1:評価を受けた全職員へ結果をフィードバックしていること。

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3.専門看護師・認定看護師の給与を工夫

専門看護師・認定看護師数は毎年増加しており、一方で、専門性を活用した仕事の割当てや配置、教育支援、適正な給与のあり方が課題です。
資格取得後の処遇として、調査協力病院では、認定看護師の基本給を一般の看護職より高く設定するなど、さまざまな工夫を行っています。

また、看護職の専門性に対する処遇をする意味では、基本給、手当のいずれの形で処遇される場合も、専門看護師・認定看護師としての役割を遂行することを支給条件とすることも重要だと考えられます。

事例

基本給アップ+専門看護師・認定看護師手当を支給

J病院
認定看護師は係長レベルへ、専門看護師は師長レベルへ基本給の等級をアップ(金額・昇給幅とも下位等級より上がる)。さらに、専門看護師手当、認定看護師手当を毎月支給。
専門看護師、認定看護師対象のクリニカルラダーは明示されている。

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4.師長・主任の給与を工夫

師長・主任は、部署内の看護職員・業務の管理を通して部署目標を効率的に達成し、組織全体のパフォーマンス向上を目指すという重要な役割を担います。こうした人材の育成、公正・透明な審査による選任、適正な処遇、権限の譲与は、組織運営の重要なカギとなります。
調査協力病院の多くでは、師長・主任への昇進基準・要件を職員に明示し、教育支援と併せて、やる気に応じてスキルアップ可能な職場をつくり上げています。また、昇進後の給与の工夫として、役職手当の支給とともに基本給をアップしている病院もあります。

事例

師長・主任への昇進で基本給アップ+役職手当を支給

G病院
主任になると「総合職」給与表(管理・運営業務の職員に適用)になり、基本給アップ(金額・昇給幅とも下位等級より多い)。師長は、同給与表上で主任より高い等級となる。かつ、役職手当がそれぞれに毎月支給。管理職対象の職能要件書が明示されている。

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5.夜勤可能者の給与をもっと手厚くする工夫

医療施設は24時間フル稼働。とはいえ、人間は昼間活動し夜は休眠する生物ですから、夜間勤務はバイオリズムに反し、かつ少人数体制による持続的緊張と身体負荷を強いる過酷な労働です。
こうした労働負荷を考慮し、夜勤ができる人には1回当りの夜勤手当とは別にプラスアルファの手当(交代制勤務手当、夜勤者手当など)を支給する病院もあります。夜勤者の確保や、日勤専従職員と交代制職員の公平感の担保にも有効です。

事例

夜勤手当にプラスアルファの手当を支給

A病院・2交代制
夜勤手当 13,000円/回
夜勤者手当 10,000円/月(勤続5年以上、夜勤3回以上)
  5,000円/月(勤続3年以上、夜勤3回以上)
D病院・2交代制
夜勤手当 13,000円/回
交代勤務手当あり
H病院・2交代制
夜勤手当 17,000円/回
交代制勤務手当あり

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6.短時間正職員の給与を工夫

短時間正職員制度は、職員にとっては仕事と生活のバランス(ワーク・ライフ・バランス)の実現に、また、組織にとっては、優秀な人材の確保や有効活用による生産性の向上につながる制度として、国でも積極的に進められています。
短時間正職員の給与の決め方は、仕事の内容や責任の程度が変わらなければ、基本給や賞与は、時給換算した額を働いた時間数に比例して減額するのが基本です。教育支援や評価もフルタイム正職員と同様の扱いが望まれます。

事例

勤務時間数に応じて基本給・賞与を支給。昇給・昇格はフルタイムと同様。

G病院
基本給
時給換算し勤務時間数を乗じて算出
賞与
未就労時間数を定率で除した数字を未就労日数として控除。評価結果の反映方法はフルタイム正職員と同様。
退職金
フルタイム正職員と同様
評価結果と給与の連動
フルタイム正職員と同様。昇格チャンス・教育支援も同等に付与。

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7.中途採用者の給与を工夫

看護職が転職した場合、転職先ではどのように給与を決めているのでしょうか。新しい職場での初任給は、その後の昇給・賞与・退職金等に大きな影響を与える重要なスタートラインの金額です。
調査協力病院では、過去の看護職としての勤務経験を100%反映して給与額を決定したり、採用時は仮決定の給与額とし、その後の働きぶりや能力をみて半年〜1年後に本決定するなどの工夫もみられました。

事例

入職時は仮決定 → 一定期間後の能力評価で等級・基本給を本決定

C病院
仮決定
経験年数ごとに規定された号俸数をマイナスし給与額を決める。
本決定
半年後、クリニカルラダーに基づく能力評価で等級・給与額を決定する。