看護職の労働環境の整備の推進

人材育成
評価制度
処遇への反映 特徴
成績評価制度 基本給
賞与
  • 小規模病院だからこそ経営ビジョンに合い、長く使える制度設計を重視。各等級に病院が求める人材像を設定し、達成度は基本給と賞与に反映。高い職員満足度。
目標管理制度(BSC)
  • 学習・成長目標設定、成績評価制度の評価に勘案、病院全体の教育プログラムに反映の3つの目的で活用。
<その他特徴>
  • 20年以上にわたり患者満足度調査を継続実施。
  • 職員満足、患者満足、病院業績が連動するとの考えをベースに、職員との信頼関係構築、育成を重視する経営理念。

※断りのある場合をのぞき、2008年度データを使用しています。

給与制度

1.概要

「良き医療活動は良き人が根幹である」という理念に基づき、職員が尊重される成績評価に基づく給与制度を30年以上前から導入している。分かりやすいい給与制度を重視し、組織内での仕事の質や責任度に応じた等級と、熟練度や経験年数に応じた号俸を合わせ、給与表により給与が規定されている。年2回実施する成績評価も評価基準に基づいて実施する。また、その結果は賞与・昇給・昇格に反映される。

2.給与構成

基本給

基本給は「本給」と「加給」から成り、「本給」は仕事の質と責任度を示す「等級」と、熟練度や勤続年数を示す「号俸」に応じ給与表に基づいて、該当する額が支給される。定期昇給あり。 「加給」は、ベースアップに対応するもので、「本給」との比率による定率と定額(またはその併用)で構成される。

  • 成績評価基準書(等級ごとの責務評価)
    本給、賞与に反映
手当とその他の処遇
夜勤手当(2交代) 17,000円/回
特技手当 公的な資格職に対して支給。支給額は等級と職位で決定する。
中途採用者の処遇 中途採用基準に則って面接評価、職歴により初任給号を決め以降、通常の給与制度が適用される。
前職の処遇プラスアルファーの処遇を目安に考えている。
管理職手当 部長、師長に適用
5等級 80,000円、4等級 60,000円

3.給与の決定方法

基本給

基本給が「本給」、「加給(定率・定額)」に分かれており、本給表に基づいた基本給表がある。
本給は定期昇給を実施するもので、加給はベースアップを実施するもの。

それぞれはどう決まる?
本給
等級の区分(等級説明書)および年齢・経験、勤務成績(成績評価規程)の規程に基づいて、該当する等級および号数の額が支払われる。
加給:
本給に対し一定の比率と一律定額の併用によって定められる。
昇給
  • 1回/年の定期昇給あり。
  • 前年2回の成績評価の結果で昇給標語が決まり翌年の昇給率(号俸数)が決まる。平均昇給率は、2.4%。
    成績評価制度に基づき、該当する等級ごとに各人の成績評価に基づく昇給率の昇給がされる。
    等級とは 仕事の質と責任度
    号俸とは 熟練度と勤続
  • 年齢に応じて年齢調整が行われる。
昇給率表
職員の成績に基づき5段階に分け、それぞれ規程の号数が昇給率となる。
  • 年齢による調整が加えられる。
昇給評語 S A B C D
昇給号数 6 5 4 3 2
昇給率の年齢調整
等級と年齢によって昇給号数が抑制される。一定年齢までは、職員の能力開発への先行投資として昇給率が高く、年齢に応じて徐々に成果に対する処遇に切り替えて成果による組織貢献を求める給与となるように調整表に基づき調整する。
昇格

(1)昇降格の決まり方

  • 昇格は、直近数年間の評価成績(昇給評語)が一定の基準を満たし、かつ仕事の質の向上が認められ、上位水準の職能の発揮が期待できると認められた場合に、等級が上がること。
    昇格基準は職員に明示されている。
    • 昇格ラインの詳細な規定があるが、コンサル会社(賃金管理研究所)ものなので公開不可。
    昇格による昇給の影響は?
    評価がよい人は昇給率が良くなるなど、途中の評価によって昇格ラインのカーブが上下する仕組み。
    例)職歴15年35歳の場合
    成績によって、号数では15号ぐらい、額で言うと3万円ぐらいの差が生じうる。
    • 1号=2千円程度
  • 降格は、規定はあるが、適用例はほとんどない。

(2)昇任(役職に就くこと)

等級と連動して役職が決められてる。 例)3等級-主任、4等級-師長

昇格した時にポストが空いている
昇格および昇任する 昇格に伴う昇給+管理職手当
昇格した時にポストの空きがない
昇格のみで昇任しない 昇格に伴う昇給のみ
賞与
  • 年2回、成績評価および出勤状況に基づいて決定された額が支給される(夏期、年末)。平均支給率は、基本給の200%〜300%。
  • 病院の営業成績が反映される。
  • 患者満足度調査結果に基づく部門別貢献度が反映される。
【賞与の算出方法】
  • 病院業績による賞与総原資の決定
    賞与の総資源=半期業績の経営利益の1/3が目安
  • 成績比例賞与総額の決定
    賞与原資-基本給比例部分※の総支給額=成績比例賞与原資
    • 基本給比例部分(本給+加給+特技手当)×職員数
  • 個人の賞与額決定
    成績比例賞与総額÷評価得点の全職員の総和=一点単価
    一点単価×個々人の評価得点=成績比例部分の賞与額
    個人の賞与額=[基本給比例部分+成績比例部分(個人+部門※)]×出勤係数
    • 部門別貢献度配分率:患者満足度調査のアンケート結果により決定する。

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人材育成制度

1.概要

「良き医療活動は、良き人が根幹である」との信念のもとに、成績評価制度による人材育成および給与制度を運用している。
病院が求める人材像が、各等級ごとに定められており(等級説明書)、等級ごとの評価基準に基づいて評価を行う。基準の達成度に連動し、処遇にも反映されるようになっている。

2.体制

成績評価制度

職員を職種横断的に同じ等級上に位置づけるしくみで、2回/年の成績評価結果に基づいて等級が決定される。等級説明書でそれぞれの等級の役割が定義され、その等級の成績評価基準に基づき達成度を評価する。評価者によるばらつきや主観が入り込まないように評価基準(成績評価基準書)が設けられている。評価結果は賞与額に反映される。

BSC(バランス・スコアカード)

学習・成長の目標とするために、目標設定を2回/年行う。病院BSC→部門BSC→各病棟BSC→個人BSCと目標を組織全体で共有する。評価結果は、成績評価制度における評価時に勘案される。また、個人目標は、年間教育プログラムや勤務表作成時に勘案される。

人材育成と評価および給与の関係
評価対象 評価ツール 評価結果の活用
T

X

等級別基準の達成度(仕事ぶり)評価の手引書項目例
例)管理職用 (カッコ内の項目はⅡ等級)
①服務(服務)
②就業活動(受命段取)
③管理監督(就業活動)
④指導調整(業務能率)
⑤審査報告(成果)
成績評価基準書
等級ごとに評価項目の総合得点でS〜Dの5段階評価をする。
例)
U等級のS
V等級のBなど
給与に反映
本給
賞与
成長目標の設定と達成度
例)プラスアルファの資格取得
BSC
評価結果を成績評価の結果に勘案。
評価制度の運用方法
運用方法 備考
評価時期 2回/年(4月、10月)  
評価者 ①一次評価:師長
二次評価:看護部長
②役員面接(院長、常務理事、看護部長)
役員面接は、理念面接と言って病院の目指す方向性を中心に話して本人との今後の方向性の確認を行う。
結果のフィードバック 方法は各部署の評価者の判断により異なるが、どう評価したかが記載された書面により評価基準書に基づいて説明。  
評価者訓練 成績評価基準書の活用方法などについて、経営サイドとの面接でレクチャー。  
研修について
  • 個人の希望(院内外)は勤務表に可能な限り組み入れる支援を実施。
  • 義務的参加の研修は、倫理、安全と感染予防に関するもので、全職員参加。
  • 院内研修の基本は時間内に実施すること。
  • 年間計画にある研修は有給(報告義務有)
その他
  • 中途採用者が多数であり、年代で区切った研修計画が難しいため、職員の希望に応じた研修を支援する体制。
  • 院内開催に限界があるため、県や看護協会(清瀬)の研修を積極的に活用。

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組織体制

1.働くことが楽しい風土への変遷

人間関係が良好で働くことが苦しくない病院を作ることを目標に、20年の年月を費やし改革を行い今は職員みんながやめない職場になった。未熟な病院だった時は、平均離職率が17%ぐらいあり、人の出入りが激しいのでストレスも多かったが、現在の離職率は0%から3%位。激しい人の入れ替わりがないため患者さんからの信頼が増し、予期せぬ離職がなく経営者としても人員管理 が行いやすい。

2.患者の意向を吸い上げ積極的に病院改善

患者満足度調査(1回/年)をS63より毎年実施。経年変化をみるため、質問項目はほぼ固定して行っている。結果をホームページで公開し、意見に対する対策・改善策も併せて掲載している。

3.組織体制づくりのポイント

病院作りは仕組みから入る事があるが、人事制度や、給与制度などに大切なのは、職員の育成と職員との信頼関係である。信頼関係とシステム作りが両輪になっていないのに、先行して制度だけ導入しても、私はこんな人に評価されたくないとの思いが生じるとうまくいかない。

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労働条件等

1.労働時間(残業・夜勤)について

時間外労働削減の工夫
業務量は多少増えているが、基本的には時間内に終えるように配慮をする。どうしても残る場合は、師長が指示して1時間以内の残業内で処理。

2.役割の適切性

人材採用についての考え方
  • 離職の有無にかかわらず年間を通して、いい人材がいれば採用する方針。常時、妊娠や、夫の転勤などで抜ける職員もいるので、多少余裕をもった人材雇用を考えている。
  • 入職時の面接では、病院の理念・病院として大切にしている考え・方針、職員に期待することなどを説明するとともに、職場に求める条件などを確認し、2〜3回の面接を通し共感できるかどうか聞いていく。

3.福利厚生について

子育て支援の充実
20年前から無事故運営の直営院内保育所があり、病児保育も行っている。病院で傷害・施設保険に入っている。24時間保育のニーズはあるが、現在は日中のみで運営中。

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その他

1.職員モチベーション(生産性)アップの工夫について

  • 「経済的満足」のため、職員の努力が給与につながることが重要と考え、成績評価と処遇の連動させている。「心理的満足」と「社会的満足」のため、患者や病院からの評価が重要だと考え、患者満足度調査や成績評価を処遇に反映させている。
  • 評価結果が、給与、賞与額に目に見える形で反映されることがやる気につながっている。
  • 患者満足度調査の結果を部門ごとに集計し賞与に反映させている。良い意味での部門の競争につながっている。

2.患者満足・医療サービスの質アップの工夫について

患者満足度調査(1回/年)を実施している

3.健全経営について

経営理念について
  • 以前は、良い医療技術を目指す病院はあっても、職員を幸せにしたいと公言している病院はなかった。経営のトップになって、人が幸せになれる職場を作ろうと考え改革を始めた。
  • 職員満足、患者満足、病院の業績がお互いにつながっているという好循環スパイラルという考え方をベースにしている。
人件費についての考え方
  • 人件費に関しては、職員の処遇と職員の幸せを主眼に今の給与制度を運用し、経営の努力をしてきている。人件費の配分をどれだけできるかについては、経営者の人格みたいなものもあって、そういう意味ではかなり頑張ってきていると思うが、社会の状況としてこれからこの先どれだけ維持していけるか先が見えないところがある。
  • いい時は収入が増えて誰の心にも余裕があって職員への処遇ができるが、収入が落ちて利益がなくなり余裕がなくなった時、当院でも単年度では赤字を計上した時もあったが、そういう時に職員を幸せにするという姿勢をくずさないというのは相当の覚悟がいる。だから病院だけのことを考えたら、今のような方針は維持できない。
  • 人件費比率は、最初に○%ありきとは考えていない。結果的に、50〜55%くらいで推移しているが、年々増えている。
人材採用についての考え方
  • 離職の有無にかかわらず年間を通して、いい人材がいれば採用する方針。常時、妊娠や、夫の転勤などで抜ける職員もいるので、多少余裕をもった人材雇用を考えている。
  • 入職時の面接では、病院の理念・病院として大切にしている考え・方針、職員に期待することなどを説明するとともに、職場に求める条件などを確認し、2〜3回の面接を通し共感できるかどうか聞いていく。
経営努力・方針
  • 黒字を維持できている理由の1つ目は、単科の病院としては非常に多くの患者数を受け入れていること。2つ目は、診療のコアである内視鏡検査・処置の件数が日本全体で上から数えられる程多い件数であるため診療報酬上大きな収入源となっている。3つ目が、自信のある疾患に限定した集約的な治療を行う中で、メジャー手術を中心とした手術件数が多く、その中でも悪性疾患の占める割合が多いことが収入源となっている。

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病院概要

【H病院概要 ※2008年度データ】
設置主体 医療法人 病院機能 専門病院
地域情報 地区名 南関東地区
対人口比(1万人あたり) 看護師数52人(04年)、医師数21人(04年)
病床数130床(05年)
病床数 100床未満 入院基本料 7:1
平均病床利用率 84.4% 平均外来患者数 279.2人/日
平均在院日数 7.5日/年
人事管理部門 なし(役員) 労働組合 なし
【看護職員データ】※看護職員…保健師、助産師、看護師、准看護師
平均在職年数 7年 平均年齢 36歳
離職率 2006年度 0%、2007年度 2.9%、2008年度 0%
既婚率 73.5% 有子率 67.6%
【労働時間、休暇等情報】
所定労働時間 38.5時間/週
平均超過勤務時間 スタッフナース 1.1時間/月(主任などを含む)
師長以上 0時間/月(看護部長などを含む)
夜勤体制 2交代
平均夜勤回数 スタッフナース 4回/月(※夜勤専従者除く)
年間休日(2007年度) 98日 ※有給休暇、夏季休暇、特別休暇は除く
有給休暇付与日数 初年度 10日/年 、最高 20日/年
  • 未使用分は翌年まで使用可能。20日間を翌年に繰り越した場合は、最大40日/年取得可。
有給休暇の平均取得日数・率 スタッフナース 11日/年(55%)
師長以上 13日/年(65%)
  • 平均取得率は年間有休付与日数20日として算出
【経営関連情報】
医業収支率 106.7%
給与費率 55.9%
給与費配分比率 看護職36%、医師34%、その他30%
職員数比率 看護職36%、医師(非常勤を含む)22.5%、その他41.4%
全体予算の決定体制 決定者:役員会(5〜6回/年)
看護部長権限:あり
給与費配分の決定体制 同上

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現給与制度の導入のプロセス

1.きっかけ

中途採用者が多く、新しい人が入ってくるたびに給与制度を変更したり苦労していた時代に、人が変わるたびに制度を変えるのではなく、長く活用できる制度を検討する中で現給与制度の導入に至った。

2.導入プロセス

S58 現給与制度を導入
賃金管理研究所(ホンダ等全国で6,000社導入)の設計・指導による
H16 BSC導入
現在 25年間同給与制度を続けている。

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経営三者のコメント

  • 年功序列が当たり前な時代は、給与制度と成績評価が連動することに抵抗があったが、説明し続けて職員にも信頼されるようになった。
  • 給与制度はわかりやすく使いやすくて、長く活用できることが望ましい。
  • 職員や外部者に対してもわかりやすく説明しやすい制度がよい。
  • 適切な給与制度の運用をすることで、人事管理面、経営管理面の双方が合理的になる。
  • 給与制度はよい仕組みありきではなく、人材育成と職員の幸せという経営理念に基づいて自施設に会う給与制度を選んでいる。
  • 基本給が高く、手当の種類は少ない。

人材育成制度について

職員が育ってきたら、それまで不可能だったことも不可能じゃなくなったことが多くなったと実感しています。