看護実践情報

樋口秋緒さん(北海道)

協会ニュース2016年8・9月号 連載:在宅療養を支える新しい風

特定行為研修修了看護師  活動レポート  第1回

樋口秋緒さん
医療法人北晨会恵み野訪問看護ステーション「はあと」

樋口秋緒さん

特定行為に係る看護師の研修制度の施行から1年。本連載では、研修での学びを在宅療養支援に生かし活動する看護師たちを紹介していく。

医療ニーズが高い人の在宅療養を支えたい

新千歳空港にほど近い恵庭市にある医療法人北晨会恵み野病院は、市内の中核的な急性期病院だ。2015年に北海道医療大学大学院のナース・プラクティショナー(NP)養成課程で特定行為研修を修了した樋口秋緒さんは、同法人で訪問看護に従事し12年余り。現在、訪問看護ステーション「はあと」の管理者を務める。

「はあと」は、恵み野病院を退院し、がんや老衰などのターミナル期であったり、ドレーンやカテーテル留置中など医療ニーズの高い利用者を多く支援している。樋口さんは訪問看護の実践経験と、特定行為研修を活用したNP養成課程で培った実践力を生かし、恵み野病院内の各病棟のカンファレンスに参加し、医師や病棟の看護師と“帰れる時期に帰りたい場所に帰す”ための準備・支援について話し合う。また、在宅療養中の利用者の疫病管理を行い、胃ろうカテーテルの交換など、特定行為が必要な人への訪問看護を担当している。

医療ニーズの高い人にとって、在宅療養という選択は不安が大きい。恵庭市は降雪量こそ少ないが冷え込みが厳しく、冬の路面凍結は通院の大きな壁となる。しかも、最近まで市内には24時間対応の介護タクシー事業者がなく、急な体調悪化で夜間受診した際の帰宅手段に困ったり、外来受診が1日がかりになるなど大きな負担だった。さらに、恵庭市は訪問診療を行う医師が少ない。樋口さんは「カテーテルや点滴があるから家に帰れないと諦めてほしくない」「訪問看護師に連絡すれば、少し時間がかかっても来て対応してくれるという安心感があれば、家で暮らし続けられる」という思いから、自身の判断力や実践力を高めたいと、特定行為研修を活用したNP養成課程への進学を決めた。

必要なことを判断し、必要なときにできる力

訪問看護では、利用者の状態変化を逃さず捉え、生活状況なども含めてその要因を推定し、起こり得る変化を予測して必要な対処を医師と相談し、対応することが求められる。特に、医療ニーズの高い利用者が脱水や感染症などになったときは“必要なことを今やる”機動力や判断力、実践力の高さが不可欠だ。「訪問看護師は、離れた所にいる医師が患者の状態を理解し、方針を決定するのに必要な情報を提供することが大切。そのために必要な、全身状態を的 確に把握するアセスメント能力、臨床推論に基づいた判断力を高める上で、NP養成課程で学ぶことは不可欠だった」と樋口さん。

以前なら脱水から救急搬送となるなど、入退院を繰り返していたケースも、状態の変化を予測して未然に防げることが増えた。例えば、訪問先で状態を把握し、脱水と判断した際は、手順書に基づき輸液を行う。量や滴下速度に関しては、日常の水分摂取量などを把握する看護の視点が生きる。

大学院の講義や実習を研修扱いにするよう事務部門と交渉するなど、樋口さんを支えてきた恵み野病院の佐藤真理看護部長は「NP養成課程で修得した高い判断力で、退院後の病状の変化を予測し、在宅療養に関する専門的なアドバイスをくれる。病棟の看護師たちが、患者さんが帰るにはどうしたら良いかを考えられるようになってきた」と樋口さんの大学院での学びの意義を評価し、法人全体の在宅療養支援の中心になってほしいと期待を掛ける。「地域包括ケアの要は訪問看護。まだまだやることはいっぱいある」と樋口さん。その意気込みは大きい。