看護実践情報

田村真美さん(北海道)

協会ニュース2016年12月号 連載:在宅療養を支える新しい風

特定行為研修修了看護師  活動レポート  第4回

田村真美さん
医療法人北海道家庭医療学センター本輪西ファミリークリニック

田村真美さん

住宅街の一角にある本輪西ファミリークリニックは、外来診療に加え、訪問診療、訪問看護も行い、人々が住み慣れた場所で暮らし続けるための支援に力を入れている。同クリニックで、特定行為研修制度を活用し、地域の人々の在宅療養を支えているのが田村真美さんだ。

その人の生活に合わせた医療の提供を重視

以前は病院勤務だった田村さん。痛みや不安を抱えて医師の診察を待つ患者さんを目にし、 自身の実践能力を高めることでより良い医療が提供できるのではないかと、北海道医療大学の大学院看護福祉学研究科ナース・プラクティショナー養成課程に進み、2013年3月に修了した。同大学院は、15年10月に特定行為研修の研修機関の指定を受けており、田村さんは16年2月に特定行為研修の修了が認められた。

学院では、疾病予防や疾病管理などの医学的な知識や思考、アセスメントを学び、さらに、対象者を全人的に把握した上で、その人の生活に合わせた医療を提供する能力を修得した。「話をじっくり聞くことで、病気の背景にある生活状況がみえてくる。その人の生活を踏まえた治療を提案することで、状態を改善したり、悪化を予防することができる」と田村さんは話す。

医学の知識と看護の専門性を生かした支援

学院を修了後、地域で働きたいと、本輪西ファミリークリニックに就職した。院長代行の 佐藤弘太郎医師や大杉直美看護師長とどのような活動をしていくか検討を重ねた。そして15年秋から週1回、3〜4人の外来枠を確保し、主担当の患者さんの診療に関わる。

田村さんは、まず患者さんの話をじっくり聞く。本人や家族がつらいこと、気になっている ことなどに耳を傾け、話の流れの中で細かな生活の様子も尋ねていく。そして、全身のフィジカルアセスメントを行い、得られた情報を統合しながら、全人的に理解していく。その上で、生活状況を踏まえ、その人の状態を改善する方法について、治療、療養生活指導、療養環境の調整など、さまざまな観点から検討・判断する。佐藤医師は、田村さんが得た情報や判断の報告を受け、直接患者さんに会い、診断や治療方針を決めて説明する。

田村さんがアセスメント・判断した上で医師が診察することにより、患者さんの高い満足度を保ちながら、効率化も図れる。先月から通院を始めたAさんは「じっくり話を聞いてくれ、高齢者にとても良いクリニックだという評判を聞いて来た。田村さんは丁寧に話をしてくれるので安心できる」と話す。

こうした高い患者満足度は、田村さんが医学的な知識・思考を活用しながら、看護の専門性を発揮しているからこそだ。糖尿病の患者さんへの関わりでは、丁寧に話を聞くことで、胼胝腫(たこ)の痛みで運動できないことが分かった。皮膚ケアをしながら生活状況に合う提案をしたことで「こんなにじっくり話を聞き、丁寧に処置をしてくれるのだから私も頑張らなければ」と、生活習慣の改善に励み、HbA1cが安定した。

佐藤医師も「協働していると、田村さんの病態を判断するスピードや的確さが伝わってく る。看護の視点で生活まで深くアセスメントしているからこその提案だと感じることも多い。そのため、軽症の人よりも、包括的にみたほうが良い患者さんをお願いしている」と話し、不安が強い人や認知症が疑われる人など、疾病管理だけでなく療養環境の調整なども必要な人を田村さんが担当することが多い。

看護管理者としてサポートしてきた大杉師長は、医師と看護管理者が協働し、活動の在り方 や支援、教育を検討できる組織体制が同クリニックの強みだと認識する。その上で、「看護が地域の人々の健康を支えるための新しい役割を果たす1歩になるようにしたい」と話し、田村さんに地域の介護施設で暮らす人々の健康を支える役割なども期待する。こうした期待を受け、田村さんは「手順書を作成し、佐藤医師以外の医師とも協働できるようにするとともに、地域や組織のニーズに応えられるよう活動を広げていきたい」と意欲を燃やしている。