看護実践情報

多田朋子さん(埼玉県)

協会ニュース2016年11月号 連載:在宅療養を支える新しい風

特定行為研修修了看護師  活動レポート  第3回

多田朋子さん
医療法人熊谷総合病院

多田朋子さん

埼玉県熊谷市にある熊谷総合病院。3市4町からなる県北部医療圏の中核病院として地域での役割は大きい。同院の外来で、糖尿病を抱えながら地域で暮らす人々を支えているのが多田朋子さんだ。

タイムリーに患者さんを支えたい

多田さんは看護師として働く中で、医療者の的確かつタイムリーな対応が患者さんの状態を早期安定に導き、安心させることができると感じていた。しかし、医師は重責を担っており、1人1人の患者さんに多くの時間を割けない状況があった。自身がもっと医師と協働し、患者さんを支えることはできないかと考え、2009年に国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科ナースプラクティショナー養成分野に入学し、11年に修了した。同大学院は15年10月に特定行為研修の研修機関として指定を受け、多田さんは16年1月に特定行為研修の修了が認められた。大学院では、疾病管理や治療に関する医学的な知識や思考、アセスメント能力などを習得。これらを学んだことは、逆に看護の専門性を再認識することになった。「看護師は何をする人か、常に考えるようになった」という。

学院修了を控え、熊谷総合病院での自身の役割を考えた多田さんは、糖尿病患者を対象とした活動に絞ることにした。地域に糖尿病の患 者さんが多い中、同院では非常勤の医師が週3日、糖尿病外来で診療を行っており、専門看護師や認定看護師もいないために、医師不在時の対応とともに細やかな療養指導ができていない状況があった。自分が研修制度を活用し外来を中心に活動することで、的確かつタイムリーな療養支援に貢献できると考えたのだ。

11年秋、看護師特定行為・業務試行事業として活動を始めた当初は、組織やスタッフの理解を得て協働するための模索が続いた。良き理解者となったのは、当時の看護部長と内科医局長だった。特に看護部長は、上層部の会議で組織での新たな取り組みへの理解を求めたり、何かと相談に乗ってくれた。多田さんも、医師らに自身が学んだ医学的知識や活動を通して担える役割を伝え、理解を求めた。こうした努力と実績が重なり、今では「糖尿病の患者さんは多田さんに」という認識が院内に浸透している。

医学の知識と看護のスキルで在宅療養を支援

現在、糖尿病外来で月160人ほどの患者さんに関わるほか、入院患者にも対応する多田さん。医学の知識と看護のスキルを持つ看護師として、大学院で得た学びと看護の専門性を基に個々の患者さんを捉え、療養生活を支援する。看護のスキルがあるからこそ、患者さんの病気の受け止め状況や思い、生活状況を理解した上で、どのような治療法が最善か、患者さんや医師と話し合うことができる。また、病状や治療について患者さんが理解しやすいレベルまでかみ砕いて説明できるとともに、研修制度を活用し、医師とのスムーズな連携の下、的確でタイムリーな対応を可能にしている。

「病気の知識が豊富で、患者目線も持っている。『特別な看護師さん』という感じ」と多田さんを評するのは、糖尿病外来に通うAさん。肝疾患の治療の影響で高血糖になり、血糖コントロールに努める毎日だ。「糖尿病だけでなく、身体のことをよく分かっていて的確な情報をくれる。良くなれば一緒に喜んでくれるから頑張りがいがある。病気に向き合っていくのを支えてくれる多田さんのような立場の人が増えれば、治療効果が上がると思う」と話し、療養生活のパートナーとして信頼を寄せる。

多田さんは「患者さんは、連絡すれば的確に判断し、タイムリーに対応してくれるところがあると安心でき、在宅療養が継続できる」と考え、必要な患者さんには受診後に電話でフォローしたり、気になることや不安があるときは連絡するよう伝えている。常勤医がいないために以前はこうした体制がなかったが、今では多田さんがタイムリーに対応する体制が整う。

活動する上で大切なことは「継続」と話し、「看護師だからできることを大切にし、こだわっていきたい」という多田さん。患者さんが安心して在宅療養ができるよう支援するため、活躍は続く。