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メンタルヘルスケアの基本的考え方

ストレスの原因となる要因は、仕事、職業生活、家庭、地域等に存在しています。心の健康づくりは、労働者自身がストレスに気づきこれに対処する、セルフケアの必要性を認識することが重要です。しかし、職場に存在するストレス要因は、労働者自身の力だけでは取り除くことができないこともあり、労働者の心の健康づくりを推進していくためには、事業者によるメンタルヘルスケアの積極的推進が重要です。労働の場における組織的かつ計画的な対策の実施は大きな役割を果たすものであると考えられます。

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看護職のストレス

職業性ストレスの職種差を検討した研究において、看護師は他の職種に比べ、量的労働負荷(仕事量)や労働負荷の変動(仕事量の変動)が大きいといわれています※1. 。さらに、仕事のコントロールに関しては、他の専門技術職や事務職に比べて低いという報告があります※2. 。職業性ストレスにおいては、仕事量が多く、仕事のコントロールが低い組み合わせの場合に、ストレスが高まり疾患発生の危険性が高くなるとされています※3. 。

また、看護職特有のストレッサーの具体的内容としては、仕事内容による緊張感(例 人命に係る仕事等)、チーム医療に関すること(例 看護師に対する医師の理解不足等)、労働環境に関すること(例 時間に追われる仕事、仕事量が多く時間外勤務になる等)、患者・患者家族との関係に関すること(例 無理な要求をされる、威圧的な態度を取られる等)など様々なものが指摘されています※4. ※5. ※6. 。心身の健康に影響を及ぼす過重労働の原因としては、主に労働時間が問題視されていますが、看護職においては、労働時間以外にもこのようなさまざまな要因により過重な労働が生じる可能性が考えられます。

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組織的な取り組み

【事業者の役割】

一次予防
メンタルヘルス不調の看護職への対応(早期発見、早期治療勧奨、復帰時の対応など)のみならず、メンタルヘルス不調を発生させないための取組みが不可欠です。
事業主は事業場におけるメンタルヘルスケアを積極的に推進することを表明すること、また、労働者が労働時間、配置、業務量等による過剰なストレスを受けないように、適切な雇用管理を行うことが重要です。
二次予防
メンタルヘルス対策では、二次予防として心の健康づくりが重要です。厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」によると、次の1. から4. の4つのステップで取り組みます。
  1. 衛生委員会又は安全衛生委員会において十分調査審議を行い、メンタルヘルスケアに関する事業場の現状とその問題点を明確にする。
  2. その問題点を解決する具体的な実施事項等についての基本的な計画(以下「心の健康づくり計画」)を策定し、実施する。
  3. 心の健康づくり計画に基づき、「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、「事業場外資源によるケア」の4つのメンタルヘルスケアを継続的かつ計画的に実施する。
  4. 4つのメンタルヘルスケアの継続的かつ計画的実施のための教育研修・情報提供、職場環境等把握及び改善、メンタルヘルス不調への気づきと対応、職場復帰のための支援、計画の実施結果の評価等を行う。

【参考 メンタルヘルスケアの具体的進め方について】

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」7ページから13ページ [PDF 198KB]

【事業者の方へ】

職場のメンタルヘルスへの取り組みをチェックし、判定表で評価してみてください。
職場のメンタルヘルスへの取り組みのチェックリスト [DOC 190KB]
(平成14年度厚生労働省労働安全衛生総合研究事業「労働者の自殺リスク評価と対応に関する研究」)
職場の従業員の参加のもと、仕事の負担やストレスを減らして、快適に安心して働くための職場環境に関する改善アイデアが盛り込まれています。
職場環境等改善のためのヒント集
(平成16年度厚生労働科学研究費補助金事業「職場環境などの改善方法とその支援方策に関する研究」)

【メンタルヘルス対策を推進する上での留意事項】

メンタルヘルス対策の推進にあたっては、いくつか留意すべきことがあります。

心の健康問題は、すべての労働者に生じる可能性がある、ごく一般的な問題であるにもかかわらず、心の健康問題自体への誤解や偏見等解決すべき問題が存在しています。また、心の健康問題の発生には、ごく身近な職場環境における労働時間や職場配置等の人事労務管理が大きな影響を及ぼすことが多々あります。同時に、これらの要因が家庭や個人生活等の職場以外の問題と相互に影響しあうという特徴もみられます。そのため、事業主がメンタルヘルス対策に取り組むに当たっては、これらの点を配慮するとともに、健康情報の取扱いにおいて、個人情報の保護及び労働者の意思の尊重という側面にも留意することが重要です。また、中小規模事業場においては基盤整備のあり方として事業規模にあった適切な方法を選択する必要があります。

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セルフケア

心の健康づくりにおいて、労働者自身がストレスに気づき、これに対処するための知識、方法を身につけ、それを実施することが重要です。ストレスに気づくためには、労働者がストレス要因に対するストレス反応や心の健康について理解するとともに、自らのストレスや心の健康状態について正しく認識できるようにしておきましょう。

【ストレスのセルフチェックリスト】

ストレスをためてはいませんか?チェックしてみましょう。

職業性ストレス簡易調査票 [PDF 30KB]
(旧労働省「作業関連疾患の予防に関する研究班」 - ストレス測定研究グループ)
質問項目は57項目、回答時間は約5分となるように工夫された質問票でありながら、職業性のストレス因子と、それによるストレス反応(抑うつ、活気などの気分プロフィールや、身体愁訴など)、及びそれらの関係に影響を与える因子(家族や同僚の支援)を同時に測定し、ストレスを総合的に評価することが可能です。調査票チェック後の評価は、「職業性ストレス簡易調査票を用いたストレスの現状把握のためのマニュアル」 [PDF 1173KB] 4ページから5ページ及び10ページの「資料1. 簡易採点法」を用いて行うことができます。

【ストレスマネジメント方法の紹介】

効果的なストレスマネジメントは、ストレスの原因やその人のストレス対処能力、ストレスを感じたときの対処の習慣等によっても異なります。また、人それぞれ自分に合ったストレスマネジメント方法はいろいろです。自分に最適な方法を見つけましょう。

ストレスマネジメント方法の例
ストレスマネジメントにはさまざまな方法がありますが、それぞれ期待される効果が違います。例えば、ストレスを発生させる状況を作らないためには、自己学習やコミュニケーションの工夫などが有効です。また、ストレスに対する抵抗力を高めるためには、十分な睡眠やバランスの良い食事が効果的です。その他、ストレスによって生じる身体的な症状を避けるためには、自律訓練法などのストレスに対する生理的な反応を意識的にコントロールするための訓練があります※7. 。
これらをふまえ、ここでは、「リラックス方法」「ものの見方や捉え方」「生活習慣の改善」等に関する、いろいろなストレス対処方法を紹介します。

【リラックス法を身につける】

アクティベーション
過剰なストレスを運動や活動によって発散させましょう。気持ちよく汗をかくことで、ストレスによって作り出された物質は解消されます。
歌ったり、踊ったり、しゃべったり、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、得意スポーツ活動、自然と親しむなど
リラクセーション
過剰なストレスにより緊張した筋・神経をリラックス。骨格筋の収縮・緊張 → 中枢神経の興奮 → 自律神経の刺激 → 筋肉群への興奮刺激 → 緊張の亢進という筋肉の悪循環を断ち切りましょう。
ストレッチング、入浴・睡眠、アロマセラピー、音楽療法、筋弛緩法、瞑想法(座禅法)、呼吸法、自律訓練法など
コミュニケーション
普段からの会話・理解・支え合いで、職場内のコミュニケーションを図りましょう。対人関係から生じるストレスは、職業生活でのストレスのトップです。その原因として、コミュニケーション不足(質・量ともに)が指摘されています。
あいさつ、話し相手・話を聴いてくれる人を見つける、コミュニケーション・ワーク、ふれあいのゲームなど

【認知(ものの見方や捉え方)の歪みに気づく】

自分の認知の仕方の傾向を振り返ってみると、ストレスへの対処法が見つかるかもしれません。

「全か無か」思考(完璧主義思考)
物事を白か黒か、成功か失敗か、の両極端に分けてしまう⇒わずかなミスでも完全な失敗と考えてしまう
対策:
できていることに目を向け、0から100の間で評価してみましょう
「過度の一般化」思考
否定的なことが何か一つあると、"いつも"と一般化してしまう⇒ひとつの出来事で自分を責めたり、他者への怒りを増す
対策:
「本当に毎回だろうか」と考え、そうでないときを発見しましょう
「結論の飛躍」思考(心の読みすぎ、先読みの誤り)
明確な根拠のないものに、否定的・悲観的な結論を出したりする → 勝手に悪い方に憶測したり、不安に陥ったりする
対策:
「本当にそうだろうか」と考え、憶測しないようにしたり、プラスのイメージをしてみましょう
「すべき」思考
考えや態度に柔軟性がなく、自分や他人を「〜べき」と批判してしまう → 自分の基準でしか行動できなくなり、うまくいかないと罪の意識を持ったり、相手に腹を立てたりする
対策:
「〜であれば良い」という程度に言い換えてみましょう
「マイナス」化思考
物事の良い面を無視または軽視してしまう → 自分の行動がマイナスに見え、努力や成果も認められない
対策:
良いものを良いものとして素直に受け取ってみましょう

【健康的な生活習慣】

健康的なライフスタイルはセルフケアの基本です。自分のライフスタイルを見つめてみてください。

ブレスローの7つの健康習慣
  1. 7から8時間の睡眠をとる
  2. 朝食を必ず食べる
  3. 間食はあまり食べない
  4. 標準体重を保つ
  5. 適度に運動を行う
  6. タバコは吸わない
  7. 適正飲酒を心がける

出典 中央労働災害防止協会研修資料

参考文献
事業場におけるストレス対策の実際:中央労働災害防止協会
ストレスマネジメント方法の実際
ここでは、セルフケア方法の具体的な内容を掲載しているサイトを参考として紹介します。
パブリックヘルスリサーチセンター
ストレスに関する解説やストレスの解消方法の具体的説明を見ることができます。

【研修・セミナー等情報】

社団法人日本看護協会 看護教育研修センター
研修コースは看護領域別に区分され、主たる研修内容が記載されています。看護管理の領域では、ストレスマネジメントの研修が実施されています。社団法人日本看護協会 看護教育研修センターの研修コースはこちらから検索することができます。
都道府県看護協会主催研修
各都道府県看護協会の研修情報をご確認ください。
その他
財団法人労働科学研究所
文部科学省所管の民間研究所であり、工場やオフィスなど産業現場の労働について実証的な調査研究を行い、作業方法、職場環境や労働生活の改善に役立てることを目的とした活動をしています。メンタルヘルスケアに関するセミナー等の開催もしています。「セミナー・研究会」の情報をご確認ください。
中央労働災害防止協会
「労働災害防止団体法」に基づき労働大臣(現:厚生労働大臣)の認可により設立された公益目的の法人です。事業主の自主的な労働災害防止活動を促進し、働く人々の安全と健康を確保するための総合的活動を実施しています。企業等における従業員の方の心とからだの健康づくりを推進するため、中核となるスタッフ養成の研修の実施として、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に示されている、心の健康づくり計画の策定、職場環境等の改善、メンタルヘルス不調への対応、職場復帰のための支援までを包括的に学ぶことができるセミナーなど、さまざまなセミナー等を開催しています。「心とからだの健康づくり研修・セミナー」の情報をご確認ください。

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困ったときに活用できる社会資源

メンタルヘルス対策においては、事業場が抱える問題や求めるサービスに応じて、専門的な知識を有する各種の事業場外資源の支援を活用することが有効です。また、中小規模事業場においては、地域産業保健センター等の事業場外資源を活用することが有効です。中央労働災害防止協会の「平成17年度職場におけるメンタルヘルス対策のあり方検討委員会報告書(49ページから51ページ)」 [PDF 928KB]では、事業場外資源について以下の内容が紹介されています。

医療機関
専門的な診断・治療および事業場内産業保健スタッフ等との連携による教育研修、相談、復職支援等の実施が期待されます。
相談機関
公的な相談機関と民間の相談機関があります。
公的な相談機関は、サービスが無料で、プライバシーに関する保護が確実であるため、あらゆる労働者が安心して利用できます。ただし、個別継続的面談等を含む特定の事業場に対する専属的支援や関わりは困難であるという特徴があります。
民間の相談機関は、労働者本人からの相談だけでなく、一部では事業場内産業保健スタッフ等からの相談にも応じています。事業場が利用する際には、活動内容等を確認した上で相談機関を選び有効に活用しましょう。
【相談機関例】
機関 名称 概要
公的機関 労災病院勤労者メンタルヘルスセンター

労災病院に設置され、全国に12か所ある。事業場の労働者に対して電話やメールによる相談活動を実施している。

勤労者メンタルヘルスセンター(診療・相談)

勤労者心の電話相談(無料)

産業保健推進センター 全国都道府県に設置され、常用労働者50人以上の事業場の事業場内産業保健スタッフ、労務管理スタッフに対する支援を目的としている。産業保健に関するあらゆる分野の専門家を配置していることが多い。
精神保健福祉センター 全国都道府県及び政令指定都市に設置される。精神科・心療内科の医師が常駐している。
全国の精神保健福祉センター一覧
地域産業保健センター 各労働基準監督所管内に常用労働者50人未満の事業場の労働者を対象とした産業保健に関するあらゆる分野の支援を行うことを目的としている。
民間機関 いのちの電話 日本いのちの電話連盟に加盟する都道府県ごとのセンターがある。
公益法人
例:
(社) 日本産業カウンセラー協会
(財) パブリックヘルスリサーチセンター 心の健康電話相談室
専門家の研究会 臨床心理士等
労働組合  
EAPサービス機関 EAPはEmployee Assistance Programの略で、従業員支援プログラムと訳されることが多い。大規模事業場では内部EAPが機能しているところが多いと考えられるが、事業場内産業保健スタッフの配置が不十分な事業場では、外部EAPとしてEAPサービス機関に業務委託する方法がある。EAPサービス機関では、労働者、事業場内産業保健スタッフ、管理監督者・人事担当者の相談を受けて、評価、診断、助言、カウンセリング等を行うとともに、労働者の教育・啓発を行い、さらに必要に応じて当該労働者を適切な医療機関・相談機関に紹介するなどの機能を持つ。現時点では、各サービス機関のサービスおよび相談担当者の技術の標準化は十分ではない。

※表の内容は一部追記しています。

【引用・参考文献】

※1.
原谷隆史,川上憲人,荒記俊一:職業性ストレスの職種差 - 日本語版NIOSH職業性ストレス調査票を用いた3調査の解析 - ,産業衛生学雑誌,vol38,S267,1996.
※2.
三木明子,原谷隆史他:医療従事者(医師及び看護職)のストレスとその問題点, 労働省平成10年度「作業関連疾患の予防に関する研究」, 労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究報告書,1999.
※3.
Karasek RA.Job demand.job decision-latitude,and mental strain:implications for job redesign,Adm Sci Q,24,285-308,1979.
※4.
原谷隆史:看護婦のストレス,ストレス科学,12(4),17-18,1998.
※5.
森俊夫,影山隆之:看護者の精神衛生と職場環境要因に関する横断的調査,産業衛生学雑誌,37(2),135-142,1995.
※6.
足立はるゑ,井上眞人,井奈波良一:看護職のストレスマネジメントに関する研究 - ストレス・ストレスコーピング尺度(SSCQ)の看護職への適用 - ,産業衛生雑誌,47,1-10,2005.
※7.
小林優子:看護職のストレス特性とその対応,看護, 看護53(10), 46-49,2001.

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