看護実践情報

入院直後に急死した患者の遺族への対応

事例紹介

経緯

80代前半/男性/精密検査を目的に当院に入院
妻は病死しており、現在は1人暮らし。子供3人は独立

  • 半年前より、時折動悸、疲れやすさがあり、精密検査を目的に当院を紹介受診したところ即日入院となる。血液検査が行われ、バイタルサインに著明な異常は認められなかったが、胸部レントゲン上において心胸郭比の増大が見られた。
  • 当日深夜2:30頃ナースコールで看護師が訪問すると、患者が呼吸困難を訴える。その後、意識レベルが急激に低下し、5分ほどで心肺停止状態となった。当直医・担当医・家族・当直看護師長へ連絡し、救急蘇生を行った。
  • 15分ほどで長男・長女が到着し、看護師が経過と蘇生中であることを説明した。その後、10分ほどで担当医が到着し、最後に次女が到着した。
  • 担当医は、家族へ状況を説明しながら蘇生を行ったが、患者は回復せず死亡した。
  • 死亡確認後、看護師同席の下、担当医が家族に一連の経過を説明した。具体的に何が起こったのかの判断が困難であること、高血圧症という既往や急激な変化から、脳血管疾患や心疾患が疑われることが説明された。家族は「調子は悪かったが歩いて病院へ来たし、食事も食べていた…、いったい何が起こったのか?」「必要な診療がされたのか?」「病状変化時、適切に対応されたのか?」と、疑問と怒りをぶつけた。
  • 看護師は、自分が厳しく責められていると感じ、記録をとることもできずに泣いて退席した。その後、担当医は同様の説明内容を何度か繰り返した後、退席して、家族だけが取り残された。
当事者の思い
家族
  • 入院から死亡までの間に何が起こったのか、最善の医療を受けた結果なのかを詳しく知りたい。
  • 医師からの説明は期待する内容とは異なるものであり、混乱している。
  • 医療職は誰も自分たちの悲嘆や苦しみを受け止めてくれない。
医師
  • 最善は尽くした。
  • 家族にはその時点でわかる限りのことを丁寧に説明してきた。心情は理解できるが、家族がこれ以上どのような説明を求めているのか理解できない。
看護師
  • 不測の事態であり死は避けられない結果だった。
  • しかし、面談時の家族の固い表情や矢継ぎ早な質問によって、適切な対応を怠ったためにこのような結果になったのではないかと、自分が責められているように感じ、退席してしまった。
  • 辛い状況にある家族を支えることができず、申し訳ない。

患者の突然の死という危機的な状況において、家族は求めている情報の提供や納得できる説明が提供されていないと感じている。一方、担当医は、十分な説明をしてきたと認識しており、認識に大きなズレが生じている。

担当看護師は、担当医から家族への説明の場に同席したが、家族が表出した感情に強い不安や自責の念を感じ、専門職として家族の思いや状況を冷静に観察し、対応することができず、退席してしまった。このことにより、家族は危機的な状況であるにもかかわらず、医療職は誰も手を差し伸べてくれなかったと感じている。

解決に向けて

家族にとっての最善を考える視点
  • 患者の突然の死という危機的な状況にある患者の家族に対し、求められている情報の提供や納得できる説明、家族が患者の突然の死を受け止められるような支援が提供されているか。
  • 担当医が行った説明や看護師の対応について、家族はどのように受け止めているか。
解決に向けた取り組み

患者の急死に直面し、悲嘆している家族の苦痛を和らげ、受け止めることができるよう支援することが求められる。そのためには、家族の知る権利を保障し、必要な情報を提供するとともに、家族が事実を受け入れられるよう支援していくことが重要である。家族が死因の究明を強く希望するのであれば、その具体的な方策を医師や看護管理者と検討する必要がある。その時点で家族が望むことに対し、一つ一つ丁寧に対応していくことで、「家族が医療職から尊重されている、支えられている」という実感を得られるようになる。

また、「看護者の倫理綱領」の第1条「看護者は、人間の生命、人間としての尊厳及び権利を尊重する」及び第3条「看護者は、対象となる人々との間に信頼関係を築き、その信頼関係に基づいて看護を提供する」に照らして考えると、患者や家族から怒りや非難を受ける場面であっても、看護職は相手を理解し、尊重して、信頼関係づくりに最大限の努力をする必要がある。

しかしながら、看護職1人でこのような困難な状況に立ち向かうのではなく、保健医療福祉サービスに関わる専門職チームとして、協働しながら患者や家族に最善のケアがなされるよう、組織的な体制整備も必要である。