看護実践情報

やさしく読み解く「看護者の倫理綱領」第7〜11条

第7〜11条は、看護の責任を果たすために求められる努力について述べています。
看護を提供する際の倫理に直結するものではありませんが、十全に果たそうとする上で、看護職にとって重要な義務であると言うことができます。

第7条:看護者は、自己の責任と能力を的確に認識し、実施した看護について個人としての責任をもつ。

個々の看護職の責任に言及している7条は、実施責任が重く問われるようになった今日、その重要性が増しています。医療が高度化・複雑化し、業務の煩雑性が高まっていますが、看護職は自分が行おうとする業務内容の本質を把握し、自身の能力がその業務を行うに十分か、責任をもてるかを常に念頭において職務に臨むことが大切です。この自覚が患者と看護職自身を守ることになるからです。

この条文の遵守を実効性あるものにするには互いに教え合う、助け合うという職場文化の醸成が不可欠と考えられます。解説文にあるように、「自己の能力を超え」ていると判断される場合には、そのことをチームの仲間に申し出て、助けを得る必要があります。チーム全員で看護の責任を分かちあっているという自覚とそのために協力し合うという仲間意識が支えになるはずです。

第8条:看護者は、常に、個人の責任として継続学習による能力の維持・開発に努める。

看護職としての専門的な能力を維持し高めることは、専門職としての基本的務めです。条文の解説では、施設における現任教育に加えて様々な研修、学会等の継続学習の機会を積極的に活用するよう促しています。

新人看護職員の研修については、現時点では各医療機関に委ねられており、制度化されてはいません。厚生労働省が諮問した検討会により示された基本的な考え方(2004年「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会」報告書)(厚生労働省のホームページから確認できます)においても、国としての制度化は将来課題として残されています。看護職としてのスタートをどのように踏み出せるかは、職業生活を方向付ける上で重要な意味を持つので、制度化が期待されるところです。

第9条:看護者は、他の看護者及び保健医療福祉関係者とともに協働して看護を提供する。

施設から地域・在宅へ、病院の機能分化等の政策転換が急ピッチで進み、患者・家族が受ける医療や環境の変化にうまく適応していけるよう援助するために、かつてないほど第9条に示される協働が重要になりました。

職種エゴイズム(職種間の利権争い等)に陥ることなく協働を図るには、解説に示されるように、自立と互いの専門性の理解のうえで、対等で相互尊重的な関係を構築することが不可欠となります。そのためには、看護の立場から問題解決に資する考えを他職種に提示すると同時に、他職種からも意見を取り入れそれを看護に反映することのできる能力を持つことが必要です。

第10条:看護者は、より質の高い看護を行うために、看護実践、看護管理、看護教育、看護研究の望ましい基準を設定し、実施する。

解説文にあるように、専門職としての必須要件のひとつを示す条文です。条文に示されるような基準については、日本看護協会が看護実践と看護管理の基準を「看護業務基準(2016年改訂版)」[PDF 840KB]として提示している他、日本看護系大学協議会を始めとする教育機関組織や各学会が教育及び研究についての基準もしくは考え方を提示しています。看護職は、それらに則り、活動することが求められます。

第11条:看護者は、研究や実践を通して、専門的知識・技術の創造と開発に努め、看護学の発展に寄与する。

第11条も専門職にとって必須の要件であり、研究者のみならず、看護実践に携わる者も等しくこの義務を負っていると考えられます。看護学は理論知だけではなく、実践知の探求が重要であるだけに、実践家と研究者の協働による研究の活発化が望まれるところです。

すべての看護職は専門職として、日常の看護実践において、研究的な視点と姿勢を持つことが求められています。これらは、対象者のニーズに即したより良いケアを提供するために、研究成果を実践に応用すること(evidence-based nursing)や提供したケアの効果を評価するなどの行動によって実現されていると言えます。

また、解説文には、研究を遂行する際の対象となる人々の権利擁護の観点が述べられています。看護職は、自分の担当する患者等が研究対象となる場合、研究のプロセスでどのような倫理的配慮を受ける必要があるかを確認することが大切です。