看護実践情報

多職種連携と倫理

倫理的課題の概要

社会的背景

近年、看護職を取り巻く環境において、医療の高度化・複雑化、さらには地域包括ケアシステムの構築といった変化が起きており、保健医療福祉サービスに関わる様々な職種と協働する機会が増えている。

倫理的課題の特徴

保健医療福祉サービスに関わる専門職がサービス提供にあたって挙げる最終的な目標は、患者又は利用者等の疾患・障害の回復や穏やかな最期、患者又は利用者等の意向を尊重したQOLの向上などに共通するが、それぞれの専門性によって、問題の捉え方や判断の内容と根拠は異なることが多い。

多職種によるチームでサービスを提供する際には、それぞれの専門職の持つ価値観に相違が見られることも多く、倫理的課題に対する解決策を検討する場合であっても、ときに職種間での対立が起こる例もある。多職種がチームとして倫理的課題に向き合う際には、患者又は利用者等、もしくはその家族に対する目標のためにそれぞれの専門性を発揮することが重要であり、その立場は対等である。しかし、対立を避けたいという思いや相手の立場への配慮や遠慮から、発言や提案をあきらめてしまうことも少なくない。

考える際の視点

他職種の「倫理綱領」

看護職を対象とした行動指針である「看護者の倫理綱領」(日本看護協会、2003)や「ICN看護師の倫理綱領」(国際看護師協会、2005)があるように、他職種にも行動規範を示すものがある。
例えば医師は、2,000年以上前に医師の職業倫理として書かれた宣誓文「ヒポクラティスの誓い」からはじまり、現在では「医の国際倫理綱領」(世界医師会、2006)、「医の倫理綱領」(日本医師会、2000)を通して専門職としての倫理綱領を明示している。
さらに、「薬剤師倫理規定」(日本薬剤師会、1997)、「日本臨床工学技士会倫理綱領」(日本臨床工学技士会、2003)、「理学療法士の職業倫理ガイドライン」(日本理学療法士協会、2012)、「日本介護福祉士会倫理綱領」(日本介護福祉士会、1995)など、それぞれの専門職を対象とした職業倫理の規範を倫理綱領等によって表明している。
多職種で倫理的な判断をする場では、それぞれの職種が拠り所になるものを持っていることを理解しておくことが望ましい。

様々な価値観の理解

日々の現場で看護職が思い悩むこととして、多職種の間で意見が一致せず、何をするべきかわからなくなることも多い。そのような場合、対立する意見や判断の基盤になっている価値を理解しようとすることで、自分とは異なる価値観や様々な考え方を知ることができる。同時に、看護職の視点で考えや判断について他職種の理解が得られるよう伝えていくことも必要である。

そして、多職種間で出された意見から、どこに見解の違いがあるのかなどを共有し、チームとして解決のための方針を検討していくことが求められる。このとき、患者又は利用者等及びその家族の希望についてチーム全員で理解し、患者又は利用者等が中心であるという前提を共通認識としなければならない。その上で、チームの中で看護職として行うべきことを検討し、専門性を発揮しながら他職種と協働していくことが重要である。

組織的な検討の場の活用

最近では、医師、看護職などに加えて法律や臨床倫理に関する有識者などによる臨床倫理委員会が設置され、臨床で抱える様々な倫理的課題について検討している施設もある。日本看護協会で示している「臨床倫理委員会の設置とその活用に関する指針」(2006)では、臨床倫理委員会が持つ機能のひとつに「臨床倫理問題に関する事例の相談対応」を挙げている。臨床で抱える倫理的課題は、看護職だけで解決が可能なものばかりではなく、他職種が関わっていることも多い。各部門のみで解決が困難な事例については、多角的に検討することができる臨床倫理委員会などを組織として設置・整備し、活用することも必要である。

さらに理解を深めたい方のために