看護実践情報

個人情報と倫理

倫理的課題の概要

社会的背景

近年、インターネットが普及し、知りたい情報をすぐに調べることができるようになった反面、個人情報の漏洩に関するトラブルが増えている。日本では、個人情報を適切に取り扱い、個人の権利を守るため、「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」が制定されている。

また、保健師助産師看護師法においても、看護職は業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないことが述べられており(第42条の2)、これに反した者は、6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処される(第44条の3)。ほかにも、刑法(第134条1項)、母体保護法(第27条)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(第53条)、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(第73条)などにおいて、業務上知り得た人の秘密を保持しなければならない旨が罰則とともに定められている。

このように、看護職には看護の実践にあたってその対象となる人々の権利を尊重することが求められているが、ブログ・ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)への書き込みや患者又は利用者等のデータの紛失など、看護職が関与する個人情報の漏洩は後をたたない現状がある。

「個人情報」とは

個人情報保護法では「個人情報」について、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)」とされている(第2条1項)。これは、例えばある日のブログに書かれた情報をつなぎ合わせたり、その他の情報との組み合わせで一人の人物を特定できるようであれば、それらの情報は全て「個人情報」となることを意味する。

SNSの普及における倫理的課題

近年、SNSの普及により、自らの日々の体験など様々な情報を、不特定多数の人に対して容易に発信することができるようになった。SNSでブログや写真等を掲載する看護職も少なくない。

ブログ等は、私的な内容や感情を気軽に記載しやすいことから、看護職が書く内容によっては、患者又は利用者等の個人情報の漏洩や、社会的信用の損失につながる場合もある。これらは、掲載した内容が個人情報にあたる自覚がないことも多く、長期にわたり知らず知らずのうちに大きな倫理的課題を引き起こしている可能性もある。

個人情報の研究等への利用に関する倫理的課題

看護職には、勉強会や研究発表等のために、多くの患者又は利用者等の情報を収集し、それをデータ化する機会も多くある。看護職がケアを行う際の着眼点が「全人的」なものであることから、他の保健医療福祉サービスに関わる専門職と比べると、看護職が研究等のために収集する情報は、患者又は利用者等の療養生活の実態などに関する文字データが中心であり、プライバシーに直結するものが多いという特徴を持つ。

そのため、データの収集にあたっては、目的や管理方法等について説明し、患者又は利用者等の同意を得た上で行い、慎重に取り扱うことが求められる。データを入れたUSB等の紛失やメールによる誤送信など、そのデータが他人の目に触れてしまうような取り扱いは避けなければならない。

考える際の視点

看護職が書くブログにおいて、個人情報と気付かずに掲載してしまうものとして、以下の例がある。

  • 著者がどこの施設に勤めているかを推測できる状態で、患者や利用者の病状等を記載すること
  • 患者又は利用者等、もしくはその家族について、本名や職業、家族構成などを記載すること
  • 患者又は利用者等、もしくはその家族について、写真や動画を掲載すること
  • 患者又は利用者等の病状や個人情報を含む会話等を記載すること

看護職として不特定多数に発信する際には、記載した内容に個人情報と捉えられる内容は含まれていないか掲載前に慎重に見直し、倫理的なトラブルを未然に防ぐことが重要である。

勉強会や研究発表等のための患者又は利用者等の個人情報については、匿名性を担保できるよう十分な配慮をした上で、必要最小限の収集とすることが前提となる。

また、所属施設や関連省庁、職能団体などが作成している倫理指針に沿い、自分の研究等における個人情報の取り扱いの妥当性を確認した上で、保管方法への配慮を含め、徹底した個人情報保護のための手順を踏むことが望ましい。