看護実践情報

ICM助産師の倫理綱領

ここに掲載している日本語訳の「ICM 助産師の国際倫理綱領」は、こちらからPDF形式でダウンロードできます。

ICMホームページでは、英語の「ICM 助産師の国際倫理綱領」をダウンロードすることができます。

はじめに

「助産師の国際倫理綱領」(2008年)の理解と活用を促進する一環として、ICM理事会はこの冊子の発行を決定した。この冊子には、倫理綱領ならびにそこで使用されている用語の解説、綱領の倫理的分析、開発の経緯、実践・教育・研究の場で助産師がこの綱領をどのように活用したらよいかという点が記載されている。

「ICM 助産師の国際倫理綱領(ICM International Code of Ethics for Midwives)」の原文(英語)は、ICMホームページから入手することができる。

前文

国際助産師連盟(ICM)の目的は、専門職としての助産師の発展と教育および適切な活用を通じて、世界中の女性、乳児および家族に提供されるケアの水準を向上させることである。この目的に沿って、ICMは、助産師の教育、実践および研究の指針として以下の倫理綱領を宣言する。この倫理綱領は、女性が人として人権を有することを認知し、すべての人々に対する正義および保健医療へのアクセスにおける公平性を求めるものであり、社会を構成するすべての人々の敬意・信頼・尊厳の相互関係を基盤としている。

綱領は、助産の専門性の完全性を保証する働きをするために、どのように助産師が他者と関わり、助産を実践し、専門職としての責任と職務を担い、そして助産師がどうあるべきかという点に関連して、ICMの目的と目標を達成する助産師の倫理的な義務について述べている。

綱領

  • I. 助産における関係性
    • a. 助産師は、女性が情報を得た上で意思決定し、ケア計画に同意し、自己選択の結果に対する責任を引き受けられるように、関連した情報を女性と共有できる協力関係を築く。
    • b. 助産師は、女性及び家族が積極的に自己のケア決定に参加する権利を支援する。
    • c. 助産師は、それぞれの文化・社会において女性と家族の健康に影響を与える問題に対して、女性及び家族が自らの考えをのべられるようにその力を高める。
    • d. 助産師は、専門職としての役割を果たす上で相互に支援、支持し、自己および他の助産師の自尊心を積極的に育む。
    • e. 助産師は、女性のケアに対するニーズが助産師の能力を超えている場合は、必要に応じて相談・紹介を行い、他の保健医療専門職を尊重しながら協働する。
    • f. 助産師は、実践領域に関わる人々の相互依存性を認識し、積極的に内在する葛藤の解決を図る。
    • g. 助産師は、道徳的価値をもつ人間として自己に対する責任があり、道徳的に自己を尊重し、人格を保つ義務がある。
  • II. 助産の実践
    • a. 助産師は、女性および出産をむかえる家族にケアを行う際に、文化的多様性を尊重するとともに、その文化における有害な行為をなくすよう働きかける。
    • b. 助産師は女性が社会において、出産に対する現実的な期待をもち、少なくとも妊娠・出産によって傷つくことがないよう奨励する。
    • c. 助産師は、あらゆる環境および文化において安全な出産を保証するために、最新で根拠に基づいた専門的知識を活用する。
    • d. 助産師は、保健医療を求める女性に対して、その状況がどのようなものであっても、精神的・身体的・情緒的・霊的なニーズに応える。
    • e. 助産師は、あらゆるライフステージの女性、家族、他の保健医療専門職に対して、健康増進における効果的な役割モデルとして行動する。
    • f. 助産師は、助産師としてのキャリアを通して、人格的・知的な成長および専門職としての成長を積極的に目指し、その成長を日々の実践に反映させる。
  • III. 専門職としての助産師の責任
    • a. 助産師は、法律で義務付けられている場合を除いて、プライバシーの権利を保護するためにクライアント情報の秘密を守り、情報を共有する場合には適切な判断に基づいて行う。
    • b. 助産師は、自己の決定と行動に対する責任を有し、女性へのケアの結果について、説明する責任がある。
    • c. 助産師は、道徳的に強い抵抗を感じる行動への参加を拒否することができる。しかし、個人の良心を重視することで、女性から基本的な保健医療を受ける機会を奪うようなことがあってはならない。
    • d. 助産師は、倫理と人権の侵害が女性や子どもの健康に与える害を理解し、これらの侵害をなくすよう働きかける。
    • e. 助産師は、すべての女性および出産をむかえる家族の健康を増進する保健政策の策定と実行に参加する。
  • IV. 助産の知識と実践の向上
    • a. 助産師は、助産の知識の発展は、人としての女性の権利を保護する活動に裏付けられるものであることを保証する。
    • b. 助産師は、同僚評価や研究など様々な過程を通じて、助産の知識を発展させ、共有する。
    • c. 助産師は、助産師学生の公式な教育及び助産師の継続教育に参加する。

2008年、グラスゴーでの国際評議会において採択 次回見直し予定:2014年

2009年12月 日本看護協会・日本助産師会・日本助産学会訳

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他の言語への翻訳権も含めて、この出版物は著作権を有しています。国際助産師連盟(ICM)から文書による許諾を得ることなく、本書の一部または全部を何らかの方法で複写することや検索システムに登録することなど、一切の伝播を禁じます。ただし、短い引用(300語未満)に関して、許可は不要ですが、その場合は出典を明記し、ICMへご連絡ください。

Copyright © (2008) by ICM- International Confederation of Midwives Laan van Meerdervoort 70, 2517 AN The Hague, The Netherlands

ICM 倫理綱領のための用語集

ICMは、この倫理綱領の活用を図り、これが助産実践および助産師にとって適切であるかを検証することを目標としている。内容理解に関わる要素の一つとして、様々な文化や社会で言語がどのように用いられているかという点が挙げられる。そこで、ICM 倫理綱領で用いられている各用語を以下のように定義する。

ヘルスケアへのアクセスにおける公平性(前文)
  • 限られた資源を、ニーズに基づいて適切に分配すること。たとえば、社会的弱者である人口集団やグループにおける健康ニーズやサービスへのアクセスに対しては、それらを自ら購える人々に対する以上に、注意・関心を払うこと、などである。
情報を得た上で選択する権利(I.a.)
  • 「情報を得た上で」とは、活用可能な選択肢のそれぞれにともなうリスクおよび利益、得られる結果に関して、女性が完全な情報を得て、それを理解すること。
人々の相互依存性(I.f.)
  • 助産師は女性や他の人々との関係の中で活動しているが、そこでは、何が正しく、何をすべきかという点について常に意見が一致するとは限らない。従って、助産師はクライエントや同僚と意見の合わない点について、その理由を理解するよう努めることが重要である。しかし助産師は、理解するだけにとどまるものではない。倫理的なケアを継続する上で解決を要する対立があれば、これを解決するよう努めることも重要である。
個人の良心(III.c.)
  • 道徳的見解について熟考・分析し、それを堅固に保持すること。この条項の文脈としては、必要なケアが他の人から提供される場合にのみ、助産師はケアの提供を拒否できる、ということである。
専門職(前文)
  • 「専門職である」ということは「倫理的である」ということであり、倫理的でなければ専門職ではない、という考え方を示す。
専門的知識(II.c.)
  • 正規の教育機会および私的な教育機会を通じて得られた助産の知識で、実践能力を高めるもの。
専門職としての責任(III)
  • 実践・教育・研究のいずれにも限局されることのない、助産師の幅広い倫理的義務・責務。
ケアの結果(III.b.)
  • 助産師は、自己の決定や行動がもたらす結果に関して責任を有する。助産師は、自らがコントロールできない事柄(例:遺伝上の問題)の結果に関して責任を負うことはない。権限をもつ人が、助産師に非倫理的な実践を指示する場合がある。こうした状況における難しさは十分に理解できるが、助産師がそうした指示に従うことは、やはり、非倫理的である。しかし助産師は、こうした指示に従わない場合のリスクについても認識しておく必要がある。
人としての女性の権利(IV.a.)
  • 研究への参加に関連する人権としては、プライバシー、敬意、真実の告知、善行と無害、自律、インフォームド・コンセントが挙げられる。
あらゆるライフステージ(II.e.)
  • 助産ケアは、出産に関連するケアだけにとどまらない。助産師はあらゆる年齢の女性をケアするが、そのなかには終生、妊娠や出産を経験しない女性も多い。またこの語は、女性への生殖ケアと婦人科ケアの双方に言及するものである。
女性が人として(前文)
  • 女性は、人として尊厳を有していることから敬意をもって遇される。(ものとして扱われるのではない。)真実の告知、プライバシー、自律、インフォームド・コンセント、善行と無害などの倫理的原則が、女性と助産師のあらゆる相互作用を方向付ける。

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