看護実践情報

労働と看護の質データベース事業


常任理事
川本利恵子

日本看護協会では2012年度から「労働と看護の質向上のためのデータベース(DiNQL、ディンクル)事業」に取り組んでいます。
2012年度は多くの病院にご協力いただきながら評価指標を策定し、13年度と14年度の2年間は、事業の本格実施に向けた課題と対応策を検討することを目的に試行事業を実施しました。そして、15年度から本格実施されたDiNQL事業は、16年度に583病院4964病棟まで拡大し、着実な広がりを見せています。
また、厚生労働省の「保健医療2035提言書」および内閣府の「経済・財政再生計画 改革工程表」に、DiNQL事業への参加・利活用を支援していくことが示されており、今後ますます大規模な看護の質データベースとなることが期待されています。
「いい看護がしたい!」―看護職の誰もが願う、その思いを、DiNQLを活用して共に実現していきましょう。看護職一人一人の思いと素晴らしい看護実践を、日本看護協会としてしっかりと看護政策の実現につなげられるように、DiNQLの貴重なデータを積極的に活用してまいります。

事業の目的

  • 看護実践をデータ化することで、看護管理者のマネジメントを支援し、看護実践の強化を図る
  • 政策提言のためのエビデンスとしてデータを有効活用し、看護政策の実現を目指す

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事業の概要

DiNQLは、看護職が健康で安心して働き続けられる環境整備と看護の質向上に向けた、看護管理者のデータマネジメントの取り組み(PDCAサイクル)を支援する仕組みです。そのツール(道具)として、ベンチマーク評価を行うITシステムを提供します。

ベンチマーク評価のために利用する評価指標は、ドナベディアンが提唱した医療の質評価の枠組みである「ストラクチャー(構造)」「プロセス(過程)」「アウトカム(結果)」の側面から、労働と看護の質に関する項目を整理しました。

  • 「ストラクチャー(構造)」とは看護組織の情報で、人員配置や労働時間などの労働状況や看護職背景、患者背景など
  • 「プロセス」とは看護実践の内容で、どのような看護を提供したかなど
  • 「アウトカム」とは看護実践の結果で、転倒・転落や褥瘡、感染、誤薬の発生率など

各病院は専用のIDとパスワードを用いて、インターネット経由で本事業専用のデータベースシステムにアクセスし、評価指標データを病院および病棟単位で入力します。入力されたデータは、システム上で同規模・同機能の医療施設と比較したベンチマーク評価の結果としてグラフ化されて、参加病院や病棟へフィードバックされます。また、同じ医療機関内の他病棟との比較や、自分の病棟の経年変化などもグラフ化されます。

ITシステムによるベンチマーク評価のほかにも、看護管理者が「データに基づく病棟マネジメントのPDCAサイクル」を回せるよう、研修会やワークショップなどを開催します。

なお、本事業で実施するベンチマーク評価は、医療施設間の優劣を示すために行うものではありません。各施設の看護実践の改善度合いや変化を客観的に示しながら、行動変容につなげるために行うものです。客観的なデータを基に、看護の質向上のための看護実践の改善を行うこと、PDCAサイクルを回すことが目的であり、ベンチマーク評価はそのための手段の1つです。

ITシステムを利用したイメージ図

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データマネジメントへの期待

看護実践の強化を図り、質改善活動を推進するためには、意図的に収集したデータから課題を見出し、課題に取り組み、その結果をデータで評価する“データマネジメント”が重要です。
医療のIT化も進み、さまざまなデータが集積されています。看護管理者には、それらのデータから、マネジメントに意味のある情報を収集し、統合的に分析する分析的思考力と、データに基づいた課題解決力が求められています。
DiNQLへの参加によって、看護管理者が他施設との違いや自分の施設の強みと弱みをデータで把握し、経年的な変化をデータで確認しながら、「データに基づく病棟マネジメントのPDCAサイクル」を実践することが期待できます。

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データの取り扱いに関する倫理的配慮

本事業で提供を依頼する評価指標項目のデータは、既存の病院情報(集計データ)であり、患者さんおよび看護職員の個人情報は含まれません。ベンチマーク結果については、自分の施設のデータは分かりますが、他施設のデータについては匿名化されており、データにひもづく形で病院名が公開されることはありません。本事業の実施については、本会の研究倫理委員会で承認されており、収集されたデータは厳重に管理します。