看護実践情報

カリウム製剤の投与間違いをなくす実践例

ここではカリウム製剤の投与間違いゼロに向けて取り組んでいる各施設の実践例をご紹介しています。

上尾中央総合病院(埼玉県)

病院概要

病床数:733床(ICU16床、CCU6床、HCU16床)
看護職員数:763人
上記内容は2017年12月時点

取り組みの経緯と経過

2003年、財団法人日本医療機能評価機構 認定病院患者安全推進協議会の緊急提言「アンプル型高濃度カリウム製剤の病棟および外来在庫の廃止」の発出を契機に、院内でカリウム製剤の管理や運用について協議を行い、翌年から高濃度カリウム製剤の関する独自の規定をつくり運用している。運用後、カリウム製剤の重大な投与間違いは発生していない。

2003年 ①高濃度カリウム製剤取り扱い規定(初版)を作成し、運用を行う
②カリウム製剤の配置場所を限定(手術室、心臓カテーテル室、ICU、一部病棟)
2007年 カリウム製剤の配置を手術室のみにし、病棟配置を撤廃
2008年 ベース点滴等へのカリウム製剤の追加混注を禁止
2012年 ①手術室に薬剤師を常駐
②カリウム製剤の定数配置を撤廃し、薬剤部に限定へ
2016年 高濃度カリウム製剤取り扱い規定(第4版)

主な取り組み

1. カリウム製剤を含む処方は全て薬剤部で調製

薬剤部以外の場所へのカリウム製剤の持ち出し禁止を規定化した。このため、カリウム製剤を含む処方は、全て薬剤部で確認して輸液等を調製(薬剤部で計4回確認)し、例外なく院内全ての部署に対して原液での払い出しは行っていない。

手術室で使用する心臓外科手術用心停止および心筋保護液(ミオテクター冠血管注)についても、臨床工学技士からの請求により薬剤部でカリウム製剤を混注し、10分以内に運搬する手順を定めたことで、手術室の配置を廃止している。

2. カリウム製剤をシリンジに移し替える行為および施行中の点滴内への追加混注を禁止

プレフィルドシリンジを採用し、カリウム製剤のシリンジへの移し替え、ならびに患者に施行中の点滴内にカリウム製剤を追加で混注することも禁止している。

3. カリウム補正用の院内製剤を考案・使用

カリウム製剤の原液投与を防止するため、点滴バッグ式の(「K液」注射用水80ml+KCL20mEq)オリジナル製剤を考案して使用している(=写真)。バッグ式のためワンショットも防止できる。
医師からの要望等があり、体への水分負荷を抑えたい患者向けの製剤内容を時間をかけて協議。「K液」は輸液ポンプのみで1時間以上かけて投与し、使用後6時間以内に血中カリウム濃度を測定することをルール化している。

4. 院内研修の実施

例年、新人職員や中途入職看護職員に対して、院内規定の周知を徹底するために、過去に他施設で発生したカリウム製剤に関する事故事例を紹介し、規定の意義等を研修等で伝えている。また病棟別年度品質目標で、ハイリスク薬の勉強会の実施を全病棟で義務付け、病棟専任薬剤師による定期的な研修を行っている。

  • 勉強会の開催回数や参加率など、病棟ごとに目標を立てて取り組む仕組みを運用し、主体的な活動を促している
5. 取り組みに対する院内の評価

同院の医療安全管理者や薬剤部長は次のようにコメントしている。

  • 年間を通じて看護師等の中途採用者が多い。一定の安全を担保する対策として、カリウム製剤の払い出し前に投与間違いを防ぐ方法が適している。カリウム製剤の投与間違いをなくすには、各施設の状況に応じたルールづくりが重要だ。
  • カリウム製剤の扱いに関する考え方を文書として明示している意義は大きい。非常勤の医師にも、当院の方法を示し理解を得ることができている。
  • 病院長の強いリーダーシップの下、組織全体で規定を決め、関係者のコンセンサスを得てきたプロセスが非常に重要。現在では、科ごとの例外的な使用もなく、異論を唱える者もいない。

社会福祉法人恩賜財団済生会支部 栃木県済生会宇都宮病院

病院概要

病床数:644床(ICU/CCU16床、小児ICU18床)
看護職員数:769人
上記内容は2017年12月時点

取り組みの経緯と経過

2003年 高濃度カリウム製剤および希釈型リドカインの急速静注や過量投与について、心停止のリスクを考慮して医療事故防止のための運用方法を規定
2005年 「静脈注射教育プログラム」にのっとり研修を実施
2010年 院内に設置されている中央安全委員会により「要注意医薬品当院管理マニュアル」を作成し運用開始

主な取り組み

1. カリウム製剤の管理に関するマニュアル作成と特例事項のルール化と明示

同院では、事故発生により患者に及ぼす影響の大きさを十分配慮し、使用上および管理上、特に取り扱いに留意しなければならない医薬品を要注意医薬品として「要注意医薬品当院管理マニュアル」にまとめている。その中で、カリウム製剤は要注意医薬品の1つに分類されており、定数配置、原液投与は原則禁止としている。
しかし、「原則通りにはいかない」という現場の声を受け、MRM(メディカルリスクマネジメント委員会)で検討をし、救急外来、手術室、ICU、HCU、NICUについては、患者の有益性を担保し、危険性を考慮した上で使用するとし、配置と原液使用を認めている。
これは、安全が担保されている(投与後、カリウムの血中濃度の測定をタイムリーに実施できる環境など)との院内の合意を得て、決定された特例事項としてのルールとして定められている。対象となる部署はMRMなどで明示されている。

2. 静脈注射の実施に関する段階に応じた看護職の育成

厚生労働省からの通知「看護師等による静脈注射の実施について」(2002年)を踏まえ、同院では05年から「静脈注射教育プログラム」にのっとり、院内研修を行っている。また、日本看護協会の「静脈注射に関する指針」(2003年)に基づき、4段階のレベルに応じた静脈注射の実施内容が定められている。同プログラムの研修において、カリウム製剤はレベル3以上(静脈注射基礎U修了)で取り扱いが可能となっている。特例でカリウム製剤の取り扱いが認められている部署では、レベル3以上の者が安全を担保してカリウム製剤を取り扱っている。
同院では、入職後2カ月で「静脈注射基礎T」を、その年度下期に「静脈注射基礎U」を受講する。

「静脈注射教育プログラム」では、院内における高度な静脈注射の実施などを認定するためのコースも設けられている。同コースの修了者は10人程度おり、「静脈注射基礎T」と「静脈注射基礎U」の講師となるとともに、査定表に基づき研修修了者のレベルの評価を行うことでカリウム製剤の取り扱いの可否を検討する役割も担う。さらに、同コースの受講者が各部署から1人ずつ集まり、小グループとなって注射業務の要綱や静脈注射に関する問題の検討などを行い、カリウム製剤を含む院内の注射に関する看護業務の安全を担保している。

※静脈注射教育プログラム
静脈注射基礎T(集合研修時間660分およびOJT)
【目的】同院における看護師による静脈注射の実施範囲レベル1・2に対して安全に静脈注射を実施できる看護師を育成する
【対象】主に新人看護師
【認定基準】静脈注射基礎Tの全研修を修了した者(研修限定の期間は2年以内)
【そのほか】看護師による静脈注射の実施範囲レベル3に対しての実施は静脈注射基礎Uレベルの者の指導の下に行う実技の指導はOJT・OFF−JTの併用で行う。

静脈注射基礎U(集合研修時間360分)
【目的】同院における看護師による静脈注射の実施範囲レベル3に対して安全に静脈注射を実施できる看護師を育成する
【対象】静脈注射基礎T履修認定者、新規採用者(実務経験者
【認定基準】静脈注射基礎Uの全研修を修了した者(研修限定の期間は2年以内)

3. 取り組みに対する院内の評価

同院の医療安全管理者(看護師)は次のようにコメントしている。

  • 過去、カリウム製剤に関するヒヤリ・ハットなどは経験しておらず、これまでに築いてきた体制の成果だと考えている。今後も組織的なカリウム製剤を含むハイリスク薬の投与間違いを防止するための取り組みを続けたい。