地域包括ケアにおける看護提供体制の構築

妊娠

第12回(11月22日)妊娠について

みなさま、こんにちは
これまで、助産師の仕事や働いている場所、歴史について、ご紹介してきました。今回からは、妊娠中のこと、お産のこと、そして子育てについて、順にお話をしていきたいと思います。
まずは、「妊娠」についてです。少し難しい話になりますが、妊娠とは、「受精卵の着床から始まり、胎芽または胎児および付属物の排出をもって終了するまでの状態」(日本産科婦人科学会)をいいます。つまり、卵子と精子が出会って「受精」し、受精卵が女性の子宮に「着床」するところから妊娠はスタートするのです。
受精から約35時間後、たった一つの細胞だった受精卵は、細胞分裂を開始し、そして、驚くべきことに、皮膚や筋肉、骨、内臓など、ほとんどの器官や組織の土台が、受精後4〜8週(妊娠6〜10週)という早い段階で形成されていきます。そして、約10カ月間(40週間)、子宮に優しく包まれ、温かい羊水の中で赤ちゃんは育っていくのです。 太古の地球で、初めて生命が誕生した場所は、海であったと言われています。そして、また、わたしたちの新しい生命も羊水の中で育まれていくなんて、とっても神秘的なことだと思いませんか?
一方、現在、日本では、7〜10組に1組のカップルが妊娠したくても妊娠できないという問題を抱えています。そして、「いつ」「どんな」治療をするか、「何回」治療するかなど、難しく葛藤に満ちた選択を何度も行うこととなります。助産師は、すべての妊婦さんや、お産をする女性、子育て中のママやそのご家族の力になるとともに、不妊に悩み、多くの不安を抱える女性とその家族に寄り添い、支援する存在でありたいと思っています。

第13回(11月26日)妊娠中の体重増加について

みなさま、こんにちは
今回から妊娠中の過ごし方について、お話をしたいと思います。
妊娠中の体重増加は、どのくらいが望ましいのでしょうか?大切なことは、お母さんと赤ちゃんにとって望ましい体重増加である、ことです。
みなさんは、ご自分の体形(BMI)をご存知ですか?BMI(Body Mass Index)とは、体重と身長の関係から計算される体格指数で、以下により計算することができます。
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
妊娠する前の体重をもとに計算したBMIにより、妊娠期における望ましい体重増加量を知ることができます。詳細は表1を参照ください。

体格区分(非妊娠時) 推奨体重増加量
低体重(やせ):BMI 18.5未満 9〜12kg
ふつう:BMI 18.5以上25.0未満 7〜12kg(※1)
低体重(やせ):BMI 25.0以上 個別対応(※2)

※1:体格区分が「ふつう」の場合、BMIが「低体重(やせ)」に近い場合には推奨体重増加量の上限側に近い範囲を。「肥満」に近い場合には推奨体重増加量の下限側に近い範囲を推奨することが望ましい。

※2:BMIが25.0をやや超える程度の場合は、およそ5kgを目安とし、著しく超える場合には、他のリスク等を考慮しながら、臨床的な状況を踏まえ、個別に対応していく。
資料:妊産婦のための食生活指針(厚生労働省)

妊娠中にお母さんの体重が著しく増加した場合、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高くなる、赤ちゃんの体重が増加し難産になりやすい、と言われています。
一方、妊娠中にお母さんの体重が適切に増加しない場合、貧血や早産のリスクや、低出生体重児(生まれたときの体重が2,500g未満である児)のリスクが高くなると言われています。日本は先進国の中で、低出生体重児が増加している唯一の国で、こうした小さく生まれた赤ちゃんは将来、糖尿病、高血圧、心臓病といった成人病のリスクが高くなることが研究によりわかってきました(成人病胎児期発症説)。
おなかの中の赤ちゃんは、ものすごいスピードで成長しています。その成長に欠かせないものは、「栄養」です。おなかの中の赤ちゃんが、すべての栄養をお母さんの体を通して得ていることを考えると、妊娠中の体重増加を上手にコントロールすることは、お母さんと赤ちゃんの両方にとって、とても重要です。
おなかの中の赤ちゃんがよりよく育つ環境を整えるために、妊娠中、そして妊娠前に何ができるのか。助産師は、お母さんと一緒に考えていきたいと思っています。

第15回(12月3日)母子健康手帳について

みなさま、こんにちは、今日は、母子健康手帳について、お話します。
母子健康手帳とは、お母さんと赤ちゃんの健康を守るために作られたもので、母子保健法(16条)に基づき、妊娠の届出をした妊婦に市町村から交付される手帳のことです。
母子健康手帳の歴史は古く、1942年(昭和17年)まで遡ることができます。お母さんにとっては妊娠からお産後まで、赤ちゃんにとっては生まれてから小学校入学頃までの健康・成長の様子や予防接種の接種状況を、医療者とお母さん自らが記載し管理することができます。また、母子健康手帳には、妊婦健康診査の検査費用の助成(一部)が受けられる「妊婦健診受診票」が入っています。妊娠が確定したら、できるだけ早く母子健康手帳をもらってくださいね!(母子健康手帳の交付施設は、お住まいの地域によって異なりますので、役所または保健センターにお問い合わせください)
さらに、母子健康手帳には、妊娠中や赤ちゃんが生まれた時、誕生日などの節目に、その時の気持ちを記載できる欄があり、子育ての記録としても活用することがきます。お子さんが成長し成人された際に、お母さん・お父さんから手渡してあげるのもよいかもしれませんね。健やかな妊娠・出産・育児生活を送るためには、定期的に妊婦健康診査を受け、お母さん自身が体の変化や赤ちゃんの成長、日常生活や環境について気を配ることが大切です。
日本看護協会では、助産師や医師が妊娠・出産・産後の経過や思い共有し、お母さんやその家族のニーズや希望にあった妊娠・出産・育児となるようお手伝いをさせていただくために、「マタニティパス」を作成しています。ぜひ、母子健康手帳と合わせて、ご活用ください。

第16回(12月5日)妊娠中の体の変化とマイナートラブルについて

今回は、妊娠中のからだの変化とマイナートラブル(日常生活において気になる、ちょっと困った症状)について、お話をします。
おなかの赤ちゃんは、ものすごいスピードで成長しています。それに伴い、おなか(子宮)はどんどん大きくなっていきます。この大きくなるおなかと、妊娠中に分泌されるホルモン(黄体ホルモン)の影響で、妊娠前にはなかった様々な症状が起こることがあります。
では、この黄体ホルモンとは、何でしょう?そして、なぜ、様々な症状が起こるのでしょうか?
黄体ホルモンとは、妊娠の成立や継続に深くかかわっているホルモンです。赤ちゃんの成長とともに一緒に大きくなる子宮は、平滑筋といわれる筋肉の壁でできた袋状の構造をしています。「おなかが張る」とは、この子宮の筋肉(平滑筋)が収縮するために起こります。妊娠中、赤ちゃんをやさしく包み、おなかの張りが起こらないようにしているのが黄体ホルモンです。
でも、この子宮の筋肉、平滑筋は、子宮だけでなく、からだのあちらこちらに存在します。そのため、黄体ホルモンが妊娠中に分泌されることで、妊娠前にはなかった様々な症状が起こってくるのです。中でも、症状を訴える方が多く、この寒〜い時期も少なからず影響しているマイナートラブルについてお話しますね。

【腰痛】
おなかが大きくなることに伴い、からだの重心が前の方に移動した姿勢(おなかを突き出し猫背になりがち)が続くこと、黄体ホルモンにより骨盤を支える筋肉が緩むことが腰痛の原因といわれています。

【便秘】
大きくなるおなかが腸の動きを妨げてしまうこと、黄体ホルモンにより腸の動きに関わる筋肉が緩むことが便秘の原因といわれています。

【腰痛】【便秘】は、妊娠中に経験される方が特に多いマイナートラブルです。腰やおなかが冷えないようにすること、適度な運動(妊婦体操やマタニティビクス、マタニティヨガなど)も取り入れてみてください。
また、【便秘】については、食事も大切です。特に、寒い季節ですので、冷え対策もかねて、具がたくさん入った温かいスープやみそ汁などの汁物を食事の際にとるようにするのもいいかもしれません。
また、【頻尿(トイレが近くなる)】【胸やけ、胃もたれ】も、大きくなるおなかと黄体ホルモンの影響により、起こりやすくなります。
寒い季節になってきましたが、からだの冷えは妊娠中のお母さんの天敵です!おなかが張りやすくなってしまうこともありますので、からだを冷やさないよう温かくして過ごしてくださいね。それでは、次回は、妊娠をきっかけにわかった「妊娠糖尿病」と「HTLV-1」、についてです。お楽しみに!