地域包括ケアにおける看護提供体制の構築

助産師について

第2回(9月4日)Midwife 女性と共に

みなさま、こんにちは
9月は、「助産師の部屋」のサブタイトルになっている、「助産師ってなぁに?」の疑問にお答えするために、助産師について説明していきたいと思います。よろしくお願いします!
そもそも“助産師”という職業があることを、皆さんはご存知ですか。
妊娠をされ、妊婦健康診査(健診)を受けている施設で、初めて“助産師”という職業を知った方、お産の時に初めて“助産師”の存在を知った方が、多いのではないでしょうか。
そのくらい、私たち助産師が、皆さまと出会うのは、限られた時期や場所でとなりますが、実は、妊娠や分娩のみにかかわらず、女性の健康、性と生殖(妊娠・出産)に関すること、育児や家族支援など、女性の皆さんと非常に関係の深い職業なのです。
少し難しい話になりますが、日本の助産師は、「保健師助産師看護師法」(昭和23年制定)という法律の 第3条に、以下のように定義されています。
「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」
つまり、私たち助産師は、お産をする時の支援や、妊娠・出産・産後の女性や赤ちゃんに対して、健康に関する教育・相談を行う専門家として、主に、病院や診療所で働いています。
また、助産師は、女性とその家族の一生に対して、「全ての個人またはカップルが、自分たちの子どもの数、お産をする間隔や時期を自由にかつ責任をもって決定することができ、そうするために必要な情報と方法を手に入れることができる権利(リプロダクティブ・ヘルス・ライツ)」に関する支援を行っています。
“助産師”のことを、英語で“Midwife(ミッドワイフ)”といい、「mid」は、「with」と同じ意味、「wife」は女性をあらわしており、「女性とともに」という意味になります。
ぜひ、「女性とともに」ある私たち“助産師”を活用いただき、“My midwife ”といえる、助産師を見つけて頂ければ幸いです。
次回は、「助産師」と「看護師」の違いなどについてご紹介します!

第3回(9月11日)看護師との違いって?

みなさま、こんにちは
9月4日に掲載しました、「助産師てなぁに?」引き続き、今日は、「看護師」と「助産師」の違いについて、少し難しい内容になります、できるだけわかりやすく、ご紹介したいと思っていますので、お付き合いください。
皆さんは、病院や診療所で働いているのは、医師と看護師(さん)だけだと思っていませんか。同じユニフォームを着ていると、わかりづらいのですが、私は「看護師」、私は「助産師」と、バッチやネームプレートに記載している施設もあるようです。
「看護師」と「助産師」の違いは、保健師助産師看護師法(昭和23年制定)第30条(助産師業務の制限)からひも解くことができます。
「助産師でないものは、第3条に規定する業をなしてはならない。ただし、医師法(昭和23法律第201号)の規定に基づいて行う場合は、この限りではない」
第3条とは、「助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことができる女子」であり、つまり、有資格者のみが行える業務となります。
また、第37条には、「助産師の行う業務の範囲について、助産という正常な妊産婦への業務であること」が規定されています。
さらに、第38条には、「助産師が異常を発見した時には、医師の診療を受けること」が規定されています。
つまり、「助産師」は、正常な妊産婦への業務が法的に認められているのです。
この部分が「看護師」との「助産師」の資格の違いになります。
ならば、「看護師」と「助産師」の資格をとるプロセスの違いは何? と、次の疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。
簡単に言うと、助産師になるには、看護師の資格を持っていること、または看護師の資格を同時に取得することを前提として、助産師になるための大学や養成所で1年以上、助産に関することを学ぶ必要があります。
そして、助産師の国家試験に合格すると、厚生労働大臣より免許を与えられ、助産師として働くことができるのです。
平成24年 看護関係統計資料(日本看護協会出版会 編集)によると、平成23年の看護職(保健師・助産師・看護師・准看護師)の就業者数は約150万人ですが、そのうち、助産師就業者数は約34,000人で、全体の約2.2%です。
皆さんが妊婦健康診査(健診)等で通院されている施設では、「看護師」と「助産師」のユニフォームの違いや、バッチ、ネームプレートなどに「助産師」とわかるように明記されていますか。
皆さんが健診等で通院されている施設が「助産師」と一目でわかるようにすることで、2.2%の助産師を探しやすくなり、身近に感じることができ、今まで以上に、助産師を活用しやすくなると思いませんか?
最後に、助産師の仕事について、日本看護協会では“WEB動画 キラリ!看護のシゴト”の中で紹介しています。ぜひご覧ください。

第4回(9月18日)“助産師はどこにいるの?”

みなさま、こんにちは
前回ご紹介いたしました、本会HP掲載の“WEB動画 キラリ!看護のシゴト”は、ご覧いただけましたでしょうか。
“WEB動画 キラリ!看護のシゴト”では、病院で働いている助産師と、助産所で働いている助産師を紹介しています。
そこで、今日は、助産師が働いている場所や施設の特徴などについて、紹介していきます。
平成24年 看護関係統計資料(日本看護協会出版会 編集)の助産師の就業場所は、助産師数約34,000人のうち、病院約21,000人、診療所8,100人、助産所1,900人が働いています。

逆に、皆さんがお産をする場所には、病院、診療所、助産所があり、各施設のサービス(医療職との関わりや雰囲気)、自宅との距離、健診や出産費用、あなたの身体の状況や、健診・出産に対する希望と、実家に近い施設での出産(里帰り出産)をするかによって、選ぶことができます。
施設の特徴としては、以下の表を参照ください。

なお、身体や妊娠経過の状況によっては、希望通りの出産場所にならない場合もありますので、各医療機関にご相談ください。

第5回(9月25日)“どうしたら助産師になれるの?”

みなさま、こんにちは
これまで、助産師の仕事や働いている場所、その施設の特長などについて、紹介してきました。
今日は、助産師になるための教育について、ご紹介します。
最近では、ご自身のお産をきっかけに、助産師を目指して入学されるママ学生も多くなっています。
第2回(9月4日)に、少しご紹介しましたが、助産師になるには、看護師の資格を持っていること、または看護師の資格を同時に取得することを前提として、助産師になるための大学や養成所で1年以上、学ぶ必要があります。
助産師教育課程の概要については、以下の表を参照ください。

表にあるように、日本における助産師教育は多様です。
日本看護協会では、看護基礎教育4年制化、助産師教育の大学院化に向けて、取り組んでいます。
助産師学生は、さまざまな教育課程において、妊娠・分娩・産後のケアについて学んでいます。
特に大変なのでは、助産師学生は、「助産学実習」を履修する中で、10回程度の分娩を介助することが、法律で決められています。
助産学実習は、病院や診療所、助産所で行われ、助産師学生の実習対象となる分娩は、保健師助産師看護師学校養成所指定規則において、下記の3条件を満たすよう、定められています。

  • 妊娠37週0日から妊娠41週6日までのお産であること
  • 経膣分娩であること
  • 頭位(胎児の頭が下を向いた状態のこと)・単胎(胎内の胎児の数が1人であること)

助産師学生は、お母さんが安全に、そして安心して赤ちゃんを産み、育てることができるよう、助産師と一緒にお手伝いをしています。
上記の勉強を満たした学生が、助産師の国家試験に合格すると、厚生労働大臣より免許を与えられ、助産師として働くことができるのです。
9月は、「助産師ってなぁに?」の素朴な疑問について、少し難しい法律を含め、ご紹介してきました。
10月は、助産師が“産婆(さんば)”と呼ばれ、多くのお産が自宅で行われていた時代を振り返ってみたいと思います!

第22回(1月22日)「助産師の偏在」と「混合病棟」のおはなし

みなさん、こんにちは。
今回は「助産師の偏在」と「混合病棟」についてお話します。
私たち助産師は、「すべての妊産婦と新生児に助産師のケアを届けたい!」と願っています。助産師の国家資格を取得し、緊張と期待の中で新人助産師としての第一歩を歩みだしたときから、ずっとそう想い続けています。
以前、助産師のことを英語で" midwife(ミッドワイフ)"といい、「mid」は「with」と同じ意味、「wife」は女性をあらわしており、「女性とともに」という意味になると、お話しましたね。助産師は常に「女性とともにありたい、寄り添いたい」と想っているのです。
でも、残念ながら、その想いは十分には叶えられていません。
なぜでしょうか? 
そこには、「助産師の偏在」や「混合病棟」という現状があります。
2011年度の、助産師の就業人数は約34,000人。そのうち、病院で約21,000人、診療所で8,100人、助産所で1,900人が働いています。2011年度は年間約105万人の赤ちゃんが産まれましたが、お産の場所は、病院が52%、診療所が47%、助産所が0.9%です。
つまり、赤ちゃんは病院と診療所で約半数ずつ産まれているのですが、助産師の数は病院が圧倒的に多く、診療所には助産師が少ないことになります。これが、「助産師の偏在」という問題です。
偏在は、病院と診療所の間だけの問題ではありません。病院間でも助産師数は偏っていますので、全員が助産師という病院もあれば、1人だけ助産師で他は看護師という病院もあります。
みなさんのお産を振り返ったときに、助産師のケアを受けられたでしょうか。
おそらく、助産師のケアを受けられなかった方もいらっしゃるかと思います。
助産師にも働く場所の選択の自由がありますので、強制的に、全国すべての分娩施設にまんべんなく、助産師を配置することは難しい現状があります。
この問題を解決するための、ひとつの方法として、日本看護協会では昨年度から、厚生労働省のモデル事業として「助産師出向システム」の導入に取り組んでいます。助産師が少ない施設に、他の施設から助産師が出向し、助産ケアを行う事業を全国15の都道府県で取り組んでいます。このモデル事業は「すべての妊産婦と新生児に助産師のケアを届けたい!」という想いを実現させるための、ひとつの取り組みになります。
さて、もう一つの問題は「混合病棟」です。
混合病棟とは、産科以外に婦人科や小児科、内科や外科など、他の診療科の患者さんと妊産婦さんが同じ病棟に入院する状況を言います。日本看護協会が平成23年度に行った調査では、全国595病院のうち76.1%が混合病棟でした。病院でお産をされた方の多くは、混合病棟だったのではないでしょうか。
お産の数が年々減少していますので、病院の運営上、産科だけの病棟を維持することは難しくなります。ベッドが空いていれば、他の診療科の患者さんの入院を受け入れることになります。日本看護協会の調査では、38%の病院で、妊産婦さんと他の診療科の患者さんが同じ病室に入院している状況が分かりました。また、59%の病院では、助産師は産科の患者さんと、他の診療科の患者さんを同時に受け持っていることも分かりました。
陣痛で辛いときこそ、私たち助産師は妊産婦さんのそばに寄り添いたいと思っています。しかし、内科や外科など、他の受け持ち患者さんにも看護が必要であり、ずっと妊産婦さんのそばにいることは難しくなります。
このような状況は、赤ちゃんへの感染リスクを高めることにもなりますし、十分な助産ケアを落ち着いた雰囲気の中で提供することも難しくなります。夜中の授乳や泣き声など、他の診療科の患者さんに気兼ねをしたというママの話も、よく耳にします。
お産は、その都度、一生に一度の経験です。
安全で安心できるお産の環境を提供するために、混合病棟の中に産科だけのエリアを区切り、産科患者のみの病室を用意することや、助産師の働き方を変えて、助産師の役割を遂行ができる環境整備の推進に取り組んでいます。
「助産師出向システム」の取り組みについては、こちらもご参照ください。

第23回(1月31日)「院内助産・助産外来」のおはなし

みなさん、こんにちは。
2週連続で、妊産婦さんや産科医、助産師がおかれている現状についてお話をしてきました。厳しい現実もありますが、「女性とともにありたい」「すべての妊産婦と新生児に助産師のケアを届けたい!」という助産師の想いを実現させるためにも、さまざまな取り組みを行い、努力をしてまいります。
そのひとつとして、今回は「院内助産・助産外来」のお話をしますね。
「院内助産」とは、分娩を目的に入院する産婦及び産後の母子に対して、助産師が主体的なケア提供を行う方法・体制を言います。殊に、ローリスクの分娩は助産師により行われます。「院内にある助産所」と言うと、イメージがしやすいでしょうか。何かあれば、すぐに院内で帝王切開などの緊急対応を行うこともできます。助産師による継続的なケアと緊急時の医療の、両方のニーズを同時に満たす体制になります。
「助産外来」とは、妊婦・褥婦の健康診査並びに保健指導が助産師により行われる外来を言います。
「院内助産・助産外来」の取り組みが始まった背景には、産科医の減少に伴い、お産ができる施設数が減少したことも影響しています。2008年に厚生労働省が公表した「安心と希望の医療確保ビジョン」では、「助産師については、医師との連携の下で正常産を自ら扱うよう、院内助産所・助産師外来の普及等を図るとともに、専門性の発揮と効率的な医療の提供の観点から、チーム医療による協働を進める。またその際、助産師業務に従事する助産師の数を増やすとともに、資質向上策の充実も図る」と記述されました。同時に、厚生労働省では「院内助産所・助産師外来施設整備事業」を開始し、予算を組んで、積極的に取り組みを支援しています。
日本看護協会でも、このような社会情勢を受け、助産師が自律して助産ケアを行う体制の検討を行い、院内助産・助産外来の普及に努めてきました。国による推進事業の効果もあり、全国で院内助産・助産外来に取り組む施設が増えています。
では、助産外来から院内助産までの流れはどのようになるのでしょうか。少し、具体的にお話をしますね。
妊婦さんは妊娠期間中(全部で14回の妊婦健診)に、産科医による健診を3回程度うけながら、それ以外は助産師による健康診査と保健指導(助産外来)をうけます。1回の健診時間を長めに設けている施設が多いですから、助産外来では助産師とゆっくりと話しをすることができます。
妊娠経過途中のリスクの状況を把握し、必要が生じた際には、産科医と助産師の双方の外来で連携をとりながら、産科医療チームとして妊娠経過をみていきます。
予定日が近くなり、お産のリスクが低いと判断されると、お産は院内助産として、助産師主導でおこなわれます。助産外来を受けていても、途中でリスクが高くなった場合には、院内助産ではなく、医師主導のお産になります。
産後は、医師と助産師が協働しながら医療や助産ケアが提供されます。
院内助産や助産外来は、リスクによって産科医と助産師のどちらかが対応するというものではなく、お互いの関わり具合に差はあるものの、産科医療チームとして協働するものです。助産師は、産科医との役割分担・連携のもと、すべての妊産婦やその家族の意向を尊重し、おひとりおひとりのニーズに応じた助産ケアを継続的に提供していきます。
前回お話をした「混合病棟」についても、混合病棟で院内助産の環境が整備されれば、多くの問題が解消されます。全国で、院内助産・助産外来に取り組む施設がもっと増えていくことを願っています。そして、院内助産や助産外来に、多くの妊婦さんから期待を寄せてもらえるように、これからも私たち助産師は、専門職としての資質向上に励み、安全で安心な出産環境の提供に努めてまいります。
「院内助産・助産外来」への取り組みについては、こちらもご参照ください。