国際情報

ICNの動き

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ここでは、日本看護協会出版会『看護』より、「ICNの動き」を定期的に転載しています。

2015年

12月号

日本看護協会国際部

ICNファクトシート

ICN は、世界的な看護の向上に向けた活動に利用できる多様な文書を公表しており、ファクトシート(以下:FS)もその1つです。FSは、保健医療および社会的な問題について、情報を簡潔に提供するとともに、看護専門職の国際的な見解を示す文書です。現在、68のFSがICNウェブサイトに掲載されています。
今年、新たに「看護師と超過勤務(Nurses and Overtime)」「看護師と労働力の高齢化(Nurses and Ageing Workforce)」「看護師と職業性ストレス(Nurses and occupational stress)」の3つのFSが公表されました。各文書には、テーマに関する背景、原因と結果、予防と保護、世界の事例が記載されています。概要は以下のとおりです。

  • 看護師と超過勤務
    人口動態や経済の変化が看護師の超過勤務を増加させています。超過勤務は、エラーのリスクを高め、職員や患者の健康面・安全面へ悪影響を及ぼすだけでなく、看護師の過労死につながる可能性もあります。超過勤務の予防には、法律によるシフトの長さや週当たり労働時間の設定、義務的・自発的な超過勤務の制限などがあります。雇用者が超過勤務を予防するには、義務的・自発的な超過勤務のモニタリング、看護チームの連帯を通じた変化の推進、超過勤務の研究への関与などの対策が挙げられます。本FSには、本会の取り組みも事例として取り上げられています。
  • 看護師と労働力の高齢化
     2012年に9人に1人であった世界の60歳以上人口は、2050年には5人に1人となります。複数の先進国の看護労働力も、高齢化しつつあります。例えば、アメリカの看護労働力の約3分の1は50〜64歳です。労働力の高齢化への取り組みが行われなければ、現在の看護師不足にさらに深刻な問題がもたらされます。年輩の看護師は、看護労働力を増強する潜在的な資源です。彼らが退職すると、知識や臨床経験、次世代を担う看護師の研修やメンタリングへの貢献が失われることになるため、年配の看護師の定着をはかる雇用戦略が重要となります。例えば、雇用者は、加齢に伴う身体的・認知的な課題の知識を持つことや、労働量の調整や勤務時間の減少といった柔軟な労働の仕組みなどの対応を行うこともできます。
  • 看護師と職業性ストレス
    職業性ストレスは、身体的・精神的な影響に加え、常習的欠勤の増加や離職など組織にも影響を及ぼします。看護師は多様なストレッサーにさらされており、本人だけでなく患者にも重大な結果を及ぼす可能性があります。保健医療セクターのストレスを完全になくすことはできません。しかし、ストレッサーを特定し、ストレスマネジメントの戦略を開発し、管理することはできます。例えば、雇用者はコミュニケーションスキルを向上しコミュニケーションの場を設ける。個人は、時間管理スキルの向上、運動によるストレスの影響の軽減、リラックスやメディテーションの技術を学ぶことによる緊張の軽減などが可能です。

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11月号

日本看護協会国際部

第68回世界保健総会

今月は、5月に開催された第68回世界保健総会(WHA)について紹介します。
WHAは、世界保健機関(WHO)の最高意思決定機関として毎年1回開催されます。今年の開催は5月18日〜26日。主要なトピックスは、エボラ出血熱、薬剤耐性(AMR)、非感染性疾患(NCDs)、栄養と小児肥満、新生児・子ども・10代および女性の健康、保健人材、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、ミレニアム開発目標およびポスト2015年開発アジェンダ、WHO の改革、です。
ICNは、WHOと公的な関係にあるNGOとしてWHAに出席し、主要な議題に看護の声を反映するよう発言しました。また看護の声の反映に向け、各国の保健大臣にWHA代表団に看護職の参加を奨励する手紙を送付しています。今年はタイ、オーストラリア、ガンビア、アイルランド、セイシェル、ジンバブエがこれに応え、看護職を代表団に含めました。今年のWHAには、194加盟国のうち17カ国から合計20人の看護職が参加しました。
主なトピックスとICNの発言を紹介します。

エボラ出血熱

エボラ出血熱の流行に関するWHOの対応は、1月に開催されたWHO執行理事会での特別セッションに続き、議題に上がりました。WHOは、緊急時の活動に関して改革を行い、適応力、柔軟性と説明責任、人道主義、予測可能性、適時性および国の責任を強調した緊急対応プログラムを構築する予定です。また、アウトブレイクや緊急事態へのWHOの初動体制を迅速に拡大するための緊急基金の設立が合意されました。
ICN は、WHOと各国政府に対し、適切な教育を受けた十分な数の看護職なしには、感染予防と管理、患者安全は達成できないことを訴え、エボラ出血熱 からの迅速な回復に加え、保健医療制度の長期的な再構築を求めました。また、エボラ出血熱により両親を失った孤児への対応など、長期的な社会的影響への対応も求めました。

薬剤耐性

薬剤耐性は、感染症の治療や保健医療と薬剤の向上に大きく影響を及ぼす世界的な問題です。WHAでは薬剤耐性に取り組むための世界的な行動計画が採択され、5つの目標((1)薬剤耐性への認識・理解の向上、(2)調査及び研究の強化、(3)感染の発生率の減少、(4)抗菌薬の使用の適正化、(5)薬剤耐性への取り組みへの持続的な投資の確保)が示されました。
ICN は、薬剤耐性に関する議題の中で、看護職に処方権を持たせるよう求めました。患者への適切な期間・量の抗生物質使用の支援は、看護職の重要な役割の1つです。看護職の処方への評価は、安全で、費用対効果が高く、保健医療サービスへのアクセスを拡大することを示しています。さらに、看護職と患者の間の強い信頼関係は、よりよい治療遵守を促し、抗生物質の使用を減少させます。
またICNは、WHOと政府に対し、看護職の政策および戦略の計画・立案への関与も求めました。

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10月号

日本看護協会国際部

ICNの「専門職実践」活動

今月は、ICNの活動の3つの柱(専門職実践・規制・社会経済福祉)のうち、「専門職実践」の主要な活動について紹介します。

  • 倫理と人権
    看護師は、保健医療の高度化、高齢化、紛争、災害など、さまざまな場面で倫理的ジレンマに直面します。ICNは、看護師の倫理綱領、所信声明などを示すことで、看護師を支援しています。
    また、世界のさまざまな場所で生じている武力紛争では、残念なことに保健医療従事者や施設が攻撃対象となることがあります。ICNは、国際人道法や国際人権規約の尊重を求める活動をする「紛争下の医療を守る連合(Safeguarding Health in Conflict Coalition)」 への参加や、赤十字国際委員会の「危険にさらされる医療活動(Health Care in Danger)」への協力を通じ、看護師が倫理に反することなく、業務を遂行できるよう支援しています。
  • eヘルス
    eヘルスは、情報通信技術(ICT)の保健医療への活用です。ICTの発展は、世界中で働き方に大きな変化をもたらしています。保健医療分野でも、患者情報・遠隔医療・研究・eラーニングなどICTが活用されています。ICNは、eヘルスを通じた看護の変革を支援しています。主な活動は、「看護実践国際分類」「テレナーシング・ネットワーク」、看護師がアイデア等を共有するオンラインフォーラムである「コネクティングナース」があります。
  • リーダーシップ開発
    ICNは、この分野に長年取り組んできました。現在、「変化のためのリーダーシップ」「交渉におけるリーダーシップ」「世界看護指導者機関(GNLI)」の3つのプログラムを展開しています。
    GNLIは、世界の上級・管理者レベルの看護師を対象としたリーダーシッププログラムです。毎年9月に開催され、前年12月ごろに参加者募集が開始されます。ご関心のある方は、GNLIのウェブサイト1)をご確認ください。
  • 感染症
    看護師の結核予防・ケア・治療に関する能力強化に向け、ICN-リリー結核/多剤耐性結核プロジェクトを展開しています。このプロジェクトでは、看護師に研修を行い、研修を受けた看護師がさらに同僚の看護師や保健医療従事者に情報を提供していきます。また、結核に関する出版物や、eラーニングも提供しています。
  • 非感染性疾患
    世界各国で非感染性疾患(NCDs)による死亡や障害が増加しており、看護師の対応が重要となっています。ICNは、さまざまな組織と連携し、看護師の NCDsの取り組みへの関与を支援しています。
    その1つである「ウェルネスを育てよう(Grow Your Wellness)」2) は、ICNとファイザー社の連携により、NCDsの取り組みに役立つ資源を提供するウェブサイトです。
    今回ご紹介したICN活動の詳細については、ICNウェブサイト3) をご参照ください。

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8月号

ICN第一副会長/東京有明医療大学国際交流センター長・教授  金井 Pak 雅子

ソウルでのCNR/ICN学術集会を終えて

今回の学術集会(以下:大会)は、韓国で発生したMERSの影響で当初予定していた参加人数が減少してしまったが、世界100カ国以上から7000人以上の参加者があった。6月19日夕方の開会式に韓国の朴大統領、WHOのチャン事務局長も参列され、それぞれお言葉を述べられた。大会ではWHOからチャン事務局長はじめ4名の方々がセッションで講演された。いくつかのセッションがキャンセルになったりしたが、プログラムの内容はかなり充実しており参加者は満足されたようである。

理事として私がセッションの司会を担当した中の1つは「超高齢化の課題への取り組み」で、講演者はアメリカとポーランドの方であった。高齢化は先進諸国の大きな課題であり、看護職がいかに積極的な取り組みをしていくか意見交換された。もう1つは「学生のネットワーク会議」。ICNは学生の活動も支援しており、今回もさまざまな国の看護学生がいかに交流していくか積極的な意見交換となった。

大会前3日間には会員協会代表者会議(CNR)1)がある。CNRは2年ごとに開催され、ICNの運営や活動に関して協議、決議する。私は第一副会長として財務報告を担当した。財務に関しては、どの国もかなり厳しい眼差しである。ICN本部がジュネーブにあるため、通貨はスイスフランを使っている。今年1月15日には、スイスフランが急騰したため、会員協会によっては支払いがこれまでより増額になった。また、紛争や災害のために会費の支払いが困難な国も発生している。財務企画委員会では各会員協会からの支払い状況をモニターし、支払い困難な状況の場合には回転資金を充てたり、支払いを待つ判断をする。

今回のCNRはメルボルン大会での決議を受けてICNとしては大きな変革案が協議された。第一に、2017年から理事会の共通言語は経費削減のために英語のみとなった2)。そのほかの決議事項は、投票や会費削減のシステムなどについてであった。CNRに提案するために理事会は討議を重ね、方向性を定める。昨年11月には理事会を開催し、CNRの前3日間は理事会で最終確認の討議を行った。その理事会に提案する内容を審議するのが執行役員会と財務企画委員会である。私は財務企画委員会の委員長として、いつものごとく会議前に財務担当のスタッフと詳細な打ち合わせを行った。

今回のCNRのプログラムは例年と異なり、初日は人的資源に関して、WHOのHealth Workforce DirectorであるCampbell氏などの講演があった。その後、地区ごとに分かれ今後の人的資源確保に関する課題やWHOやICNのなすべきことなどについてラウンドテーブル・ディスカッションがあった。理事の役割はテーブルごとに司会を務め、話し合われた内容を記録、それを社会経済福祉担当のICNナースコンサルタントに提出することであった。

大会の日程に合わせてこれらの会議がすべて連続して行われるため、6月11日から韓国入りし、その日の夜から会議、最終日の23日はまとめの理事会があり、翌24日に帰国した。2週間連続して朝から会議、夜はレセプションとめまぐるしい日程であったが、ICNの今後の方向性を定める重要な決定がなされ、充実した日々であった。

  • 1)Council of National Nursing Association Representatives
  • 2)これまで英語・スペイン語・フランス語が使われ、それぞれに通訳が入っていた

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7月号

日本看護協会国際部

ICNの所信声明「看護師とソーシャルメディア」

ICNは、新しい所信声明として「看護師とソーシャルメディア」を公表しました。

情報通信技術の発展に伴い、世界のさまざまな地域の人々のインターネットへのアクセスが向上し、ソーシャルメディアの利用が世界的に進んでいます。ソーシャルメディアには、「Facebook」などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ブログ、「Twitter」などのマイクロブログ、「YouTube」や「Instagram」などの動画・画像共有サイト、掲示板などがあります。世界各地で個人としての利用のみではなく、職業上でも活用されています。

ICNは、この所信声明の中で、ソーシャルメディアは適切に利用すれば大変有益であり、看護の可能性を広げることを伝える一方、ソーシャルメディアの利用にはリスクがあることも強調しています。ソーシャルメディアは情報へのアクセス・相互交流の面で手軽で便利です。しかしながら、不特定多数の人への発信であり、一度情報がネット上に掲載されると取り消すことは困難です。日本においても、ソーシャルメディアにおける不適切な発言、画像の掲載などが社会問題となり、ソーシャルメディアの利用に関するポリシーやガイドラインを策定・公表する企業や医療機関等も多くあります。

ICNは所信声明において、ソーシャルメディアを看護師が活用するために、看護師・保健医療機関・教育機関・職能団体および規制機関が行うべき行動を述べています。

看護師が行う必要がある主な内容は、以下となります。

  • ソーシャルメディアの利用の機会とリスクを学ぶこと
  • ソーシャルメディアの利用に関する基準・ガイドライン・行動規範等を順守すること
  • オンライン上の情報の質・信頼性に留意し、その情報が与える影響を認識すること
  • ソーシャルメディアの私的利用と、職業上の利用を区別すること
  • 治療的な看護師−患者関係の境界を尊重すること
  • 常に患者のプライバシーと守秘義務を守ること
  • 中傷的または攻撃的なコメントの投稿を慎むこと
  • 著作権の侵害がないよう注意すること
  • ソーシャルメディアの情報伝達のスピードに留意すること
  • オンライン上に掲載された情報は、たとえ削除したとしても永久的なものであると留意すること
  • プライバシー設定を利用すること
  • 世界的な看護の肯定的なイメージの強化に協力すること

詳細につきましては、本会ホームページに掲載している所信声明1)をご参照ください。

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6月号

日本看護協会国際部

WHO 執行理事会でのICN の発言

今月は、世界保健機関(WHO)執行理事会のエボラ出血熱に関する特別セッションおよび第136回WHO執行理事会について紹介します。WHO執行理事会は年2回開催され、WHOの最高意思決定機関である世界保健総会(WHA)の決定および方針の実施、WHAへの助言を行います。ICN はWHOと公式な関係性にあるNGOとして、WHO執行理事会やWHAにおいて発言を行い、看護の視点をWHOの決議に反映させるよう取り組んでいます。また、ICNは、世界保健医療専門職同盟(World Health Professions Alliance:WHPA)を他の専門職団体と構築しており、WHPAもまた重要な議題に発言を行いました。

  • エボラ出血熱に関する特別セッション
    2015年1月25日にWHO執行理事会によるエボラ出血熱に関する特別セッションが開催されました。
    日本国内の報道でエボラ出血熱の流行が取り上げられることはほとんどなくなりました。しかし、西アフリカではエボラ出血熱への対応が続いています。WHOのマーガレット・チャン事務局長は、およそ850人の保健医療従事者がエボラ出血熱に感染し、およそ500人が死亡したことを報告しました。ICNは、保健医療従事者が十分な訓練・装備・精神的なサポートを得た上で対応できるよう保健医療従事者の保護の重要性を訴えました。また、エボラ出血熱により両親を失った子どもへの社会保障といった長期的な対応の必要性についても訴えました。本特別セッションでは、エボラ出血熱の流行の終結とWHOの緊急事態への対処能力の強化に関して決議がされました。
  • 第136回WHO 執行理事会
    主要な議題では、非感染性疾患(NCDs)・保健分野のミレニアム開発目標の達成状況のモニタリング・抗菌薬耐性・偽造医薬品・WHO改革・保健人材の国際雇用に関するWHO 世界実施規範等が検討されました。抗菌薬耐性は迅速な対応が必要な公衆衛生上の脅威と捉えられており、人に対する合理的な使用に加え、食品産業・農業および環境セクターも含めた対応の必要性に焦点が当てられました。ICNは、抗菌薬耐性に関して看護が果たす役割の重要性を伝え、WHOと各国政府に対し、関連する政策・戦略の策定への看護師の関与を求めました。
    保健人材の国際雇用に関するWHO世界実施規範については、2010年にWHAで採択してから5年が経過し、見直しが行われます。また、来年のWHAでは、WHO加盟協会から、その実施状況について2回目の定期報告が行われる予定です。

●参考資料

1) NNA BRIEFINGS:WHO Executive Board Special session on Ebola and 1 36th Session.

2) WHO:Ebola:ending the current outbreak, strengthening global preparedness and ensuring WHO’s capacity to prepare for and respond to future large-scale outbreaks and emergencies with health consequences(EBSS3.R1)(2015年4月2日アクセス)

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5月号

日本看護協会国際部

2015年「国際看護師の日」

毎年5月12日。フローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなんで、日本では「看護の日」として、さまざまな行事が催されます。ICNでは「国際看護師の日」として、その時々の看護や保健医療の課題に即したテーマを定めて啓発文書を発行しています。2015年のテーマは「看護師:変革の力―ケアの効果と費用対効果(Nurses:A Force for Change:Care Effective, Cost Effective」1)です。

  • 保健医療費の増大
    この文書は、まず、保健医療費による負担が世界的に問題となっていることを指摘しています。
    先進国においては、高齢化や非感染性疾患の増加による疾病・障害の長期化・複雑化や、高度・先進的な医療技術の普及が医療費の増大を招いている現実があります。他方、開発途上国においては、保健医療提供体制やインフラおよび保健医療従事者の確保等の面で脆弱性が際立っており、アクセスの悪さや不平等を招いています。そして医療が希少資源となっていることから、高額化している状況があります。
  • ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を
    今後の世界の開発目標としては、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で享受できる状態)2)が合意されていることを再確認しています。
    UHCを達成するためには、財源に加えて、保健医療人材が必須です。この人材の中でも看護師は世界的に最大規模を占め、人々に最も近い所で24時間365日、サービスを提供していることから、最も優れた支援者に数えられています。
  • 看護の力を発揮するために
    さらに、さまざまな地域やさまざまな看護領域における研究の結果として、看護配置の向上が合併症発生率や救命失敗率の減少という正のアウトカムにつながっていること、また、高度な教育研修を受けた看護師によるサービスは、しばしば、他の医療提供者による同一内容のサービスに比べて質が高く、かつ、低コストであることを紹介しています。
    しかし、看護師の卓越した力を十分に発揮して健康アウトカムを達成するためには、看護師自身が保健医療提供体制の構築にしっかりと関与する必要があります。実践・管理・教育・研究、職能団体など、あらゆる場・あらゆるレベルの看護師が結束して、他の関係者や関係団体と戦略的に協働し、世界の人々の健康のために保健医療政策の場で声を上げることが重要であると、この文書は結んでいます。
    本会ではこの全文を和訳し、公式ホームページに掲載しております3)。ぜひ、ご閲覧ください。

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4月号

日本看護協会国際部

世界レベルでの意見交換―ICN 会長来日とアジア看護師協会同盟会議について
ICN ジュディス・シャミアン会長来日

2015年1月にICN ジュディス・シャミアン会長が日本財団による「ハンセン病に対するスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすためのグローバル・アピール」に参加するため、来日しました。シャミアン会長は、本会を訪問し、坂本すが会長をはじめとする本会役員と意見交換を行いました(写真)。主な内容は、ICN 理事会が2013年会員協会代表者会議(以下:CNR)決議に基づき取り組んでいる、ICN がより効果的・効率的な組織となるためのガバナンスの見直しです。今年のCNRで議論する予定となっています。

シャミアン会長(左)と坂本会長(右)

アジア看護師協会同盟会議(Alliance ofAsian Nurses Association;AANA)

2014年11月に東京で第11回アジア看護師協会同盟会議(以下:AANA)が開催されました。AANA は、ネットワーキングやアイデア・情報共有を目的とした同盟です。現在、12の国・地域の看護師協会(インドネシア・韓国・シンガポール・タイ・台湾・中国・日本・フィリピン・香港・マカオ・マレーシア・モンゴル)が参加しています。

今回は“高齢化”のテーマの下、10の国・地域の看護師協会代表者が参加しました。高齢化の進行は、各国さまざまです。また、「高齢者」の年齢を60歳以上とする国や65歳以上とする国など、「高齢者」という言葉が示す対象者も異なります。しかし、現在または今後直面する重要な課題であることは参加者共通であり、熱心な意見交換が行われました。

日本では、地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みが進められています。参加者の国・地域の多くにおいても、日本と同様にコミュニティに焦点が当てられています。「Aging in Place(高齢者ケア施設などではなく住み慣れた地域で高齢期を過ごすこと)1)」が国の政策のキーワードとして挙げられ、地域において社会参加を続けながら年をとることの強化が必要との報告がありました。また、文化・慣習として、在宅で家族が高齢者のケアを提供している一方で、女性の社会進出や若者の地方から都市部への移動など、家族形態が変化しつつあります。そのため、家族によるケアの継続性への疑問が提示されました。

認知症高齢者へのケア提供に関しては、参加者の関心が高く、多様な見解・意見が出されました。家族ケアと施設ケア、家族の負担と家族へのサ ポートなどの課題への対応は1つではありません。さらなる意見交換が必要であるとし、来年は、認知症に焦点を当てて意見交換を行う予定です。

●引用・参考資料

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3月号

ICN第一副会長/東京有明医療大学国際交流センター長  金井 Pak 雅子

ICNソウル大会での会議に向けた理事会と台湾・香港への出張

 ICN理事二期目は第一副会長を拝命し、理事会のほかにも会議がかなり増加しました。第一副会長は、予算委員会の委員長を務めます。予算委員会のメンバーは、会長および3人の副会長そしてCEOです。予算会議は年間5回程度開催されます。本部のあるジュネーブに出向いたり、テレビ会議で行われたりします。このほかにもFlorence Nightingale International Foundation(FNIF)の委員として、途上国の女子教育支援のための定期的な会議に参加しています。

2014年11月は、理事会がオーストリアのザルツブルクで開催されました。理事の1人がザルツブルクの大学に勤務しており、会議室を無償で提供してくれたのです。ザルツブルクはモーツァルトが生まれたところでもあり、有名なモーツァルテウム大学があります。大変きれいな街並みでしたが、朝から夕方まで理事会のためにほぼ缶詰状態でした。理事会は、2015年6月にソウルで開催される会員協会代表者会議(CNR)のための準備に費やされました。その内容は、ICN のガバナンスの原則、階層投票システムに関することやICNの戦略の見直しと今後の経済状況の見通しです。CNR は2年に1度開催されるため、ソウルでは、かなり白熱した論議が予測されます。

ICN 理事として、2014年9月には台湾と香港への出張がありました。台湾看護師協会の創立100周年のセレモニーがあり、ICN 会長と共に招待されました。セレモニーでは、歴代の台湾看護師協会会長が一堂に会しました。セレモニーと同時に学会も開催され、第一副会長として “Health as a Human Right:How Nurses Can Contribute”の表題で講演を行いました。また、台湾看護師協会の王桂芸会長と共に、馬英九大統領と会見の機会を得ることができました。大統領が私に日本語で流暢にあいさつされたのには驚かされました。

さらに香港では、第1回「アジアパシフィック小児看護学会」が開催され、ICN 代表として講演を行いました。この学会には日本からの参加者も多くいました。香港の病院見学にも参加することができました。香港の前の空港跡地には小児病院が建設される予定で、工事が進んでいました。学会でも病院の概要や内装の予定などが報告されていました。最新設備が整った病院となることでしょう。香港看護師協会のEllen Ku 会長には、大変お世話になりました。

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2月号

日本看護協会国際部

エボラ感染者をケアする看護師の感染を回避する「ゼロ・トレランス」の声明

西アフリカ諸国におけるエボラ出血熱の流行が続いています。2014年12月7日の発表によると、確認例だけでも罹患者1万8603人、死亡者6915人。国連エボラ緊急対応ミッションは2015年1月1日までに全発症患者の隔離および全死亡者の安全な埋葬の達成をめざすなど、対策に力を入れています1)

こうした中、ICN はヨーロッパ看護師協会連盟(EFN)と共同で、欧州における患者発生を視野に入れて、「エボラ感染者をケアする看護師の感染を絶対に回避する」ことを求めた「ゼロ・トレランス」を掲げて声明を発表しました2)。また、欧州で感染例が確認された国であるスペインの看護協会と「『看護とエボラウイルス』国際サミット」を開催し、欧州委員会健康・消費者保護総局も、各国エボラ対策官や保健医療従事者との一連の会議を通じて、保健医療従事者の感染に対する「ゼロ・トレランス」を強調するとともに、欧州で大規模なブレイクアウトが発生した場合の対応シナリオも検討しています。

ICNとEFNは保健医療従事者の組織化と教育訓練をめざして、欧州評議会・EU健康安全保障委員会・欧州各国保健相に向けて以下を要請しています。

  • EU内のエボラ治療センター一覧を作成し、費用対効果の高いネットワークを築き、患者とスタッフの安全を確保する。
  • 患者ニーズに応じて一定のスタッフから成るチームをつくる。スタッフの燃え尽き防止のため一定の人数は必要だが、必要数以上のスタッフがウイルスに接するリスクは避ける。患者対看護師比とアウトカムの関連を測定する。
  • エボラ感染者をケアする看護師と欧州委員会健康・消費者保護総局および欧州疾病予防管理センターの情報交換を促進し、同センター提供のプロトコルの実用性を高めるとともに、全EU の看護師に必要な資材を供給する。
  • 欧州疾病予防管理センターと連携し、各国レベルでエボラ対応指針の開発・実施およびモニタリングを行う。また、防護服の着脱訓練を重点的に実施する。
  • スタッフの教育訓練に注力する。継続教育は患者とスタッフ双方の安全の要であるため、スタッフがその機会を享受できるよう、時間と資源を保証する。
  • 欧州評議会はワーキング・グループを組織し、エボラ患者のケアに当たる者へのスティグマと闘うためのロードマップを策定する。そこには、保健医療従事者とその家族への心理的サポートを盛り込む。
  • 生物学的安全および職域安全に関するEU 諸法令をケアの最前線に適用し、看護師のスキルを高めるために現有の基金を用いる。

結びにICNは、「どれほど防御策を講じても、十分な教育訓練を受け、意欲と能力の高い看護師を適当数、確保しなければ、ケア提供者の安全は守れない」と述べています。

●引用・参考資料

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1月号

日本看護協会国際部

「看護とエボラウイルス」に関するハイレベル看護サミット

世界保健機関(WHO)は西アフリカでのエボラ出血熱の流行の拡大に対し、8月8日に緊急事態を宣言し、流行の終息に向けた国際社会全体による取り組みが続いています。WHO による11月5日の報告1)では、これまでに感染者は1万3042人、死者4818人に上り、ギニア・リベリア・シエラレオネ・マリ・ナイジェリア・セネガル・スペイン・アメリカ合衆国の8カ国で症例が報告されています。そのうち、保健医療従事者は546人が感染し、310人が死亡しています。

保健医療従事者の感染は、保健医療サービスの提供に壊滅的な影響を及ぼします。このような背景の下、国際看護師協会(ICN)とスペイン看護協会は、10月27〜28日にかけて「看護とエボラウイルス」に関するハイレベル看護サミットを開催しました。

このサミットには、ICN・スペイン看護協会・ヨーロッパ看護師協会連盟・国際公務労連・国境なき医師団・スペイン看護労働組合のメンバー、エボラ出血熱の患者の治療経験があるヨーロッパおよびアフリカ諸国の代表者および看護師の専門家が参加し、世界の状況分析、経験や学びの共有が行われました。サミットでは、看護師がエボラ出血熱の患者への直接ケアの95%を担っており、国際的に協調された対応が不足している点、また、予防とケアを行う上で適切な情報と研修が求められていることが確認され、各国の政府に安全な労働環境を求めるとともに、今後に向けた合意をとりまとめた“マドリード宣言”を発表しました。

“マドリード宣言”では、各国政府に対し、安全な労働環境の確保に向けた以下の要素の考慮を要請しました。

関連する専門職の適合性とコンピテンス/明確かつ認定された教育と研修/患者と保健医療専門職自身に安全をもたらす、明確なプロトコールおよび手順/専門職の研修・教育に適合する実践/防護具などの利用可能性/適切な研修と廃棄物処理の機材/リスクアセスメント/適切な空間/直接ケアの期間の管理と最適化

また、国際レベルにおける取り組みとして以下を合意しました。

  • コンピテンスを保証する研修プログラムを開発し、ICNによって国際的に認可する
  • 看護とエボラ出血熱に関する全ての情報が入手できるよう一元管理された情報基盤の設立
  • エボラ出血熱の予防と患者ケアに関する意思決定への看護師の積極的な参加の要請

エボラ出血熱の流行の終息に向け、国際社会の連携した取り組みが引き続き求められています。

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