国際情報

ICNの動き

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ここでは、日本看護協会出版会『看護』より、「ICNの動き」を定期的に転載しています。

2014年

12月号

日本看護協会国際部

貧困と健康障害の連鎖を断ち切るために

 毎年10月17日は、1992年の国連総会決議による「貧困撲滅のための国際デー」です。これは、国連の「世界人権宣言」(1948年)に謳われている「衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利(第25条)」1)に基づくものです。

世界銀行の推計によると、2000年に始まったミレニアム開発目標等への取り組みにより、全世界で「極度の貧困(1日の生活費が1.25米ドル相当未満)」に置かれている人々は、1990年に比べて50% 近く減少しています。しかし、2015年には、まだ、その数は10億人以上(全人口の約14%)と考えられています2)

 ICN は貧困と健康の関連について、次のように述べています3)

貧困は、衣食住や教育へのアクセスを奪います。そのため、栄養不足や汚染された水、不衛生あるいは十分な安全を確保できない環境による疾病や傷害のリスクが高まります。また、貧困のため教育機会が剥奪されることにより、健康知識を得る機会がない、あるいは十分な所得を得るだけの知識や技能を身につけることができない等も、健康の阻害要因となります。

このようにして健康が阻害されることにより、人々は就労機会や所得を失い、一方で、医療費等を支払うことを余儀なくされることから、一層の貧困に陥るという悪循環が生じます。

ICNはWHO(世界保健機関)のデータに基づき、貧困者の70%は女性であり、特に、シングルマザーが多くを占めると述べています。また、子どもや高齢者、先住民族、難民、国内避難民等も、貧困のハイリスク集団です。これらの人々は、いわゆる開発途上国だけではなく、先進国にもみられることを知る必要があります。

ICN は、貧困撲滅とそれによる健康達成に関して、看護師は以下のような活動ができるとしています。

  • 貧困に苦しむ人々自身が問題解決に立ち向かえるよう、参加型のアプローチをはかる
  • 貧困に苦しむ人々に最も近しく接する職種として、反貧困活動を主導する
  • 貧困撲滅をめざして、家族および地域ぐるみのケアを行う
  • 保健医療・社会福祉サービスの公正な提供を求めてロビー活動を行う
  • 貧困に焦点を当てた保健医療・社会福祉政策の策定に影響力を行使する
  • 「貧困撲滅のための国際デー」に目を向ける
  • 女性をはじめとする貧困リスクの高い集団に注目する

またICN は、貧困・弱者層への保健医療や社会政策、教育等の投資により、社会全体の健康改善につながると述べています。

参考資料

1)外務省:世界人権宣言(仮訳文)外部リンク

2)世界銀行:Poverty Overview.外部リンク

3)ICN ファクトシート:ICN on Poverty and Health:Breaking the Link.外部リンク

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11月号

日本看護協会国際部

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向けたICNと世界銀行との対話

今月は、7月に行われたICN と世界銀行の「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」(UHC)に関する対話について紹介します1)

UHCについては、本欄「ICNの動き」でも数回にわたり取り上げてきました。WHOは、UHCの目標として「すべての人々が必要なときに、負担可能な費用で、基礎的保健医療サービスを利用できること」2)を示しています。UHCを、ミレニアム開発目標の達成期限後である2015年以降の世界的な開発アジェンダとすることにも多くの支持を得ています。

UHCは、WHOが主導し、世界各国が取り組んでいます。また、さまざまな国際機関が推進に関与しています。その中でも世界銀行は「2030年までに極度の貧困をなくす」という目標への戦略として、UHCをWHOと連携して積極的に推進しています。人々が基礎的保健医療サービスを必要な際に利用できれば、健康に経済活動を行うことが可能となり、貧困をなくすことにつながるからです。

7月のICNと世界銀行の対話では、UHC達成に向け、「コミュニティおよび最前線で働く保健医療従事者の強化」に焦点が当てられました。多くの国が保健医療の人材不足に直面する中、UHC を達成するには、コミュニティを基盤としたプライマリ・ヘルス・ケアへのアクセス向上が欠かせないと考えられています。それには、コミュニティのメンバー、コミュニティ・ヘルス・ワーカー、保健医療専門職および他分野の人材による包括的なチームアプローチの構築が必要となります。

世界に1600万人以上いる看護師は、予防・疾病ケアから看取りまでの健康に関する一連のケアを提供する教育を受けています。

一方で、ケア提供、管理および政策策定の場において看護師が十分に活用されていません。対話の参加者は、看護師の知識や専門性をどのようにコミュニティで活用していくか、コミュニティ・ヘルス・ワーカーおよび多職種チームの役割は何かについて検討しました。

また、コミュニティを基盤としたプライマリ・ヘルス・ケアへの移行に向け、「保健医療従事者の教育と開発」「ケアモデルの柔軟性」「規制」「雇用機会の創出と発展の機会」の4つの観点から、主要な実践やイノベーションを特定しました。参加者は、あらゆる介入において“人”を中心に据え、コミュニティが取り組みを推進することの重要性を確認し、強固な手法や評価を介入の中核として統合することの利点を強調しました。

ICNと世界銀行は「低〜中所得国のUHC達成を支援する保健医療の人材の取り組みを向上させるために、今後も対話を継続していく」としています。

参考資料

1)ICN マンスリーメール7・8 月号:Strengthening Community and Frontline Health Workers for Universal Health Coverage, International Council of Nurses and the World Bank Group Event Summary.
(http://www.nurse.or.jp/nursing/international/icn/report/)

2)WHO:Universal Health Coverage
(http://www.who.int/universal_health_coverage/en/)

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10月号

日本看護協会国際部

世界的な保健・医療・健康問題に対するICNのメッセージ

現在、西アフリカの4カ国(ギニア・リベリア・ナイジェリア・シエラレオネ)において、エボラ出血熱の流行が続いています。中東では、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が激化しています。自然または人為的にもたらされる災害に対し、ICNは次のようにメッセージを発出しています。

西アフリカ4 カ国で働く看護職・保健医療従事者へのメッセージ

「ICNは、世界保健機関(WHO)が今回のエボラ出血熱の流行に対して“国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態”と宣言したこと、多くの死亡者が出ていること、そして、その中には看護師等の保健医療従事者も含まれていることに深い懸念を示している。ICN は、こうした状況において、人々のケアを続けている看護師・保健医療従事者に深く敬意を表する。ICNは、WHOとともに事態を注視し、必要な対応を検討していく1)
今回の流行は、過去数十回のエボラ出血熱流行の中で最悪規模とされており、「抑制には半年程度かかる」との厳しい見方も示されています。さらに、これらの国々は、極度の貧困や保健医療システム等の社会的インフラの未整備、保健医療従事者の不足等に悩まされています。
こうした中で、シエラレオネ看護師協会のマルガオ会長は現場で働く看護師に向けて、「看護師の働きに感謝する。シエラレオネ保健当局と協働して看護師の勤務環境の改善に尽力している。ユニバーサル・プリコーションを順守して自分自身と患者を守ってほしい」と呼びかけています2)

パレスチナ自治区ガザにおける保健医療提供体制の維持に向けたメッセージ

「イスラエル政府、イスラム組織ハマスおよび関連する武装グループが、国際的人権法と国際人道法に基づく義務を順守し、医療施設や救急車、保健医療従事者を守り、ケアを必要とするすべての人々へのサービス提供を可能とすることを要求する3)」。これは、NGO“Safeguarding Health in Conflict”参加団体としての16団体共同メッセージです。
ガザ地区には居住者約170万人に対し32の病院がありましたが、2014年7月に本格化したイスラエル軍の攻撃により、9病院が閉鎖、10病院が損壊に至ります。影響を免れた病院でも出勤できるスタッフは40%のみで、患者に対応しきれません。食糧・清潔な水や電気の供給等も著しく限られており、活動に支障を来しています。診療所でも同様です。人々の生活の場でも、清潔な水やトイレの設備等が十分ではなく、公衆衛生上の問題が増大しています。

メッセージは医療施設を攻撃するイスラエル軍だけではなく、病院や救急車両を武器保管庫とするなどの不適正使用を行うハマスにも向けられており、保健医療従事者を含む民間人の保護と、基本的人権の1つである健康権の尊重を強く求めるものです。

参考資料

1)ICN:http://www.icn.ch/

2)シエラレオネ看護師協会:http://www.sierraleonenursesassociation.org/

3)Safeguarding Health in Conflict:http://www.safeguardinghealth.org/civilian-health-gaza-gravejeopardy-attacks-facilities-ambulances-infrastructure

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9月号

日本看護協会国際部

トンガの看護事情

日本看護協会は、5月にスイス・ジュネーブで開催された2014年「各国看護師協会会長会議」「第5回2年毎三者会議」の際にトンガ看護師協会長の会議参加を支援しました。同協会アメリア・L・アフハアマンゴ・トゥイプロトゥ会長よりうかがった「トンガの看護の状況」について紹介します

―自国の看護で誇れることをご紹介ください。

「ケアの基準」をJICA(国際協力機構)と協働で作成し、看護師がこの基準を理解するよう、1年かけて普及活動を行いました。「ケアの基準」は、(1)看護実践における卓越性、(2)チーム・連携、(3)法的・倫理的・専門職的な態度、(4)リーダーシップ・管理、(5)資源管理の5つの要素を基盤としています。この「基準」が看護師に普及することにより、看護師の知識・スキルだけでなく態度が大きく変化しました。トンガは王・貴族・平民と階級が3つあり、階層構造がとても強いのですが、看護師がケアを行う際には対象者すべてを「貴族」として扱うこととしました。この態度が市民から高く評価され、看護師への信頼につながり、大変誇りに思います。

―自国の看護の課題はどのようなものですか?

看護に影響を及ぼす政治経済を含めたあらゆる側面に関与していくことが課題です。そのためには、強力で明確なビジョンを持ち、戦略的なリーダーシップが必要です。
これまで、トンガの看護には長期的な方向性がなく、“現在”に焦点を当てた短期的な方向性のみ示されていました。また、リーダーとしての研修を受けずにリーダーとなることで問題解決が困難となることがありました。そのため、トンガ各地の看護リーダーを集め、戦略計画を策定しました。
各地域においても今後5〜10年の戦略計画を策定しています。この策定を通じて、リーダーシップの能力も強化されるのではないかと考えています。

―本会議の学びをどのように自国の看護に反映させていく予定ですか?

本会議での重要な2つの学びは「自国において労働組合および地元の組織と強い連携体制をとること」「政治家と看護の連携を拡大すること」です。看護政策を推進するには政治家や関連組織との連携が重要であることがわかりました。今後、労働組合だけでなく、女性・暴力・子どもの問題に取り組む地元のNGO組織とも連携体制をとっていきたいと考えています。

〈トンガの背景情報について〉1)〜3)

トンガは南太平洋にある4 つの諸島(約170の島)から成る島国です。陸地の合計面積が日本の対馬とほぼ同じで、人口は約10万人、国王の内政への影響が大きい立憲君主国です。公的医療機関において国民は基本的に無料で治療を受けられます。高度医療サービスを提供する病院は1つで、離島の一次医療施設で対応できない場合は、この病院に転送されます。看護師は約320人です。

参考資料

1)外務省 各国・地域情勢 トンガ王国
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/tonga/data.html

2)JICA 地域保健看護師のための「現場ニーズに基づく現任研修」強化プロジェクト事業事前評価表国
http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/ 2010_0900602_1_s.pdf

3)外務省 在外公館医務官情報 トンガ(2013年1月)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/oceania/tonga.html

  • 「ICNの動き」2013年10月号ではネパール、11 月号ではミャンマーについてご紹介しています。併せてご覧ください。

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8月号

ICN第一副会長/東京有明医療大学看護学部看護学科学科長・教授  金井 Pak 雅子

新メンバーによるICN理事会を終えて

2013年のICNメルボルン大会の選挙以来、新しいICN理事メンバーが今年5月にジュネーブに集合し、理事会が開催されました。それまでの間は、テレカンファレンスによる理事会が1回開催されています。

今回の理事会では、メルボルン大会における会員協会代表者会議(以下:CNR)の決議内容を受けて、それらをいかに実現させるかが重要課題でした。特に、会員の人数と会員率を加味した会員協会の投票数に関しては、さまざまな可能性に関する討議がされました。これまで投票数に関しては、各会員協会に対してそれぞれ1票でした。それが状況によっては、増えることになります。例えば、日本は会員数としてはICNの中でも断トツ1位です。ただ、会員数のみで投票数を勘案することはできません。国の規模により看護師総数にかなりの差があるからです。看護師総数が500人くらいの小さい国と日本や米国のように100万人を超える国をどのように新しい制度に勘案していくか。そこで出てきたのが“会員率”です(日本は約50%)注)

もう1つの大きな課題は、会員数の多い国に対して納める会費を軽減する具体的内容を決めることです。ICNは、会員協会からの会費で運営されているので、私たちが日本看護協会に納める会費の一部がICNの会費なのです。ICNでは会費を4つのレベルに分けて、その国の生活水準を加味してどのレベルにするかを決めています。日本は、その中でも最高のレベルで、1人当たり年間250円がICN本部に納められています。1人当たりにすれば、コーヒー1杯分にもならない額ですが、総額にするとかなりの額になるわけです。具体的にどのような軽減策にするかは、まだ論議が続けられています。

これらの内容以外にも、いかに会費以外の収入を得るかなどについてもさまざまなアイデアが検討されています。論議に関しては、理事会で検討するのみでなく、各会員協会とも連携し、それぞれの協会からの意見を集約して理事会にて討議、さらにはCNRにて決議されます。したがって、来年のソウルでのCNRまでの間にICN本部は各会員協会からの意見を集約することになります。

ムナ殿下と筆者

理事会で討議された大きな課題の中に「2014−2018戦略計画」があります。これも昨年から各会員協会からの意見を集約し、できるだけ簡潔にわかりやすい内容に仕上げました。

今回は、理事会以外にもさまざまな会議が連日行われました。会員協会の役員との会議、ICN・ICM・WHOの三者会議、世界の5つの専門職団体の会議(World Health Professional Alliance)など。会員協会との会議の一部では“ワールド・カフェ”と称して、ICNの地区ごとに会員協会の代表が集まり、そこに理事が参加し、直面している看護の課題などについて意見や情報の交換を行いました。

今年も、ヨルダンの王母ムナ殿下が夕食会と三者会議に参加され(写真)、参加者の方々ととても親しく交流されていたのが印象的でした。

  • 注)看護師総数と会員率との組み合わせの具体的数値は、2015年6月にソウルで開催されるCNRにて決議される予定です。

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7月号

日本看護協会国際部

保健医療の世界的テーマ「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」― すべての人が保健医療を受けられるために

去る5月半ばにジュネーブ(スイス)において、「ICN 各国看護師協会会長会議」および「ICN 資格認定・規制会議」「政府主任看護官会議」「三者会議」が開催されました。

1つ目の会議内容は、隔年開催のICN 総会に相当する各国会員協会代表者会議(CNR)の中間年に開催される意見・情報交換会議であり、2つ目は、看護の資格や免許、法規制等に関する意見・情報交換会議、3つ目は、各国の看護行政官の会議、4つ目は、ICN・国際助産師連盟(ICM)・世界保健機関(WHO)が共催する看護助産職能団体・看護行政官による合同会議です。これらのうち、最初の3つは同時並行で進められるという、非常に過密なスケジュールでした。

印象的であったのは、いずれの会議においてもユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する話題が取り上げられたことです。

UHCについては本誌でもすでにご紹介したところですが1 )、WHOの定義では「すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で享受できる状態」2 )とされています。これを達成するためには、(1)保健医療人材の確保、および(2)保健財政の維持・強化という課題に取り組むことが重要であるとの指摘がなされています。

看護師をはじめとする保健医療人材の確保という課題は、特にアフリカやアジア等における開発途上国において大きな問題となっています。そこでは、量的・質的な側面に加えて、都市部と非都市部の間の人材偏在が看過できない状況となっています3 )。これを是正するには、各国において政府や保健医療専門職能団体等が、人材の養成教育、人材の国外流出への対応、および働きやすい環境や意欲向上につながるような労働条件等の課題に取り組むべきであり、WHOやICN等の国際機関はそれを支援すると述べられています4 , 5)

一方、保健財政の維持・強化については、特に、開発途上国をはじめ公的保険の仕組みが十分に機能していない国々において、貧困のために基本的な保健医療サービスさえ利用できず、健康維持がはかれない状況があります。加えて、高額の保健医療サービス費を自己負担で支払うことにより、経済的困窮状態へと陥ることも重要な課題とされています。

今回の会議には、WHO・国際労働機関(ILO)・世界銀行など、それぞれ保健政策・労働政策・投資支援政策を担う国連各機関の代表者が講演者として参加し、UHC の課題が多領域において精力的に取り組まれていることが示されました。

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6月号

日本看護協会国際部

世界的な保健政策に看護の声を届ける―世界保健総会でのICNの取り組み

WHAは、世界保健機関(WHO)の最高意思決定機関として毎年1 回開催されます。2014年の第67回WHA は5月19〜24日に開催されます。加盟国の代表団は、WHOの事業や予算などについて検討する、このWHAに参加するため、スイスのジュネーブに集います。

ICNでは、各国の保健医療政策に携わる重要関係者が出席して世界的な保健政策が検討されるWHAにおいて、看護のプレゼンスを確保し、看護の意見が反映されるよう、さまざまな取り組みを行っています。

まず、ICNの最も重要な取り組みの1つは、WHAにおいて看護を代表した発言を行うことです。ICNは、WHOと公的な関係にあるNGOとしてWHAに出席し、主要な議題において発言することが認められています。これまでも、ICNは単独で、または、他の保健医療専門職団体と連携して、看護に関連する重要な議題で提言をしてきました。

第67回WHA において取り上げられる予定の議題のうち、ICNが看護にとって関心が高い議題として注目しているのは次のとおりです。

非感染性疾患の予防とコントロール/生涯を通じた健康な高齢化へのアプローチのための複数セクター行動/偽造医薬品/ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを支える保健介入およびテクノロジーの評価/人道的危機において増加する保健医療の需要に応じるための保健クラスターを主導するWHO の対応と役割

また、ICNは、各国のWHA 代表団に対して、看護と助産の重要性に関するアドボカシー活動を行う際に使用する声明を発表します。この声明は、ICN・ICMおよびWHOが主催し、各国の看護・助産主任官、看護師協会長および規制担当者等が一堂に会する三者会議において検討し、三者声明として採択されるものです。

そして、ICNは看護のプレゼンスを高めるため、各国の保健大臣に宛てた手紙を毎年送付しています。これは、各国のWHA代表団に看護師を含めることを要請するものです。

2013年のWHA の際は、19の加盟国の代表団に看護師が加わっていました。WHOの現在の加盟国数が194であることを考えると、看護師が加盟国代表団の一員としてWHAに参加する機会は大変少ないと言えます。このような状況の下、世界的な保健政策に看護の声を届けるには、ICNの取り組みが重要となっています。

なお、三者会議で採択された三者声明については、本会の公式ホームページに掲載予定です。WHAにおけるICNの発言内容等についても、本会に届き次第、紹介する予定です。

●参考資料

1) 第67回世界保健総会資料

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5月号

日本看護協会国際部

看護師の「数」と「質」の充実が患者死亡率を減らす―欧州の研究から

今号では、去る2月に発行されたICNプレスリリース1)に取り上げられた「RN4CAST研究」についてご紹介します。

この研究は、ルーベン・カトリック大学(ベルギー)とペンシルベニア大学ヘルスアウトカム・政策研究センターの共同によるもので、欧州12カ国において、看護配置および看護師の教育歴が患者アウトカムに及ぼす影響を調べ、それに基づき看護師の必要数を予測(forecast=4cast)する新たな方法を開発することを目的として実施されました2 )

研究成果の1 つとして、ペンシルベニア大学看護学部教授のリンダ・エイケン博士を筆頭著者とする論文が、先ごろLancet 電子版に掲載されました3)

この論文では、欧州9カ国の300病院で外科手術を受けた患者42万2730人とそのケアに当たった看護師2万6516人のデータが分析されています。それによると、1人の看護師が担当する患者 数が1 人増えると、入院30日以内の患者の院内死亡率が7%上昇し、また、学士号を持つ看護師の割合が10%増すと、同様の患者死亡率が7%低下するという結果が示されました。

同論文では「そこで、看護師の60%が学士号を持ち、1 人当たりの担当患者数が6人の場合、看護師30%が学士号を持ち、1人当たりの担当患者数が8人の場合に比べて、患者の死亡率は30%低下するものと考えられる」と述べられています。そして、医療費節減目的の看護師数削減は患者に好ましくない結果をもたらす可能性があり、また、学士課程を修了した看護師の配置増により、本来なら避けられる患者死亡を防ぐことができそうである、と結論づけています。

エイケン博士は、これまでに米国でも、看護師数や教育歴が患者アウトカムに関連するとの研究を発表しています4), 5)

これらの結果を受けて、ICNのジュディス・シャミアン会長は
「この研究は世界各地でこれまでに行われている研究の成果をさらに強固にするものであり、看護師配置と看護教育が患者の生命に直結しているという看護師の実感を裏づけるものである。欧州で得られた知見ではあるが、普遍的な価値を持つ。各国看護師協会はこれを用いて、一般市民に訴え、また、政府に働きかけてほしい」と述べています。

1) European study shows degree educated nurses reduce hospital deaths

2) Sermeus W et al.: Nurse forecasting in Europe (RN4CAST):Rationale, design and methodology,BMC Nursing,10(6),2011.

3) Aiken LH et al.: Nurse staffing and education and hospital mortality in nine European countries: a retrospective observational study.

4) Aiken LH et al.: Hospital Nurse Staffing and Patient mortality, Nurse Burnout and Job Satisfaction, JAMA,288(16), p.1987-1993, 2002.

5) Aiken LH et al.: Educational levels of hospital nurses and surgical patient mortality,JAMA ,290(12), p.1617-1623, 2003.

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4月号

日本看護協会国際部

2014年「国際看護師の日」啓発文書と看護師の労働環境向上

今月は、2014年「国際看護師の日(International Nurses Day)」の啓発文書を紹介します。国際看護師の日は、5 月12日のフローレンス・ナイチンゲールの誕生日を世界でお祝いする日です。国際看護師協会(ICN)は、この重要な日を記念し、毎年テーマに沿った文書を発行しています。2014年のテーマは「看護師:変革の力- 健康に不可欠な資源(Nurses:A Force for Change - A vital resource for health)」。本文書では、人々の健康を向上させるには、看護師は必要不可欠な人材であり、その良好な労働環境が鍵になることを説明しています。

人口構造の変化、疾病負担の変化により、生涯を通じた患者中心のケアの必要性が求められています。ミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限である2015年が近づき、保健関連の目標で成果が上がってはいますが、健康格差の問題にも着目されています。ポスト2015開発アジェンダに向けたハイレベルフォーラムの報告書においても、保健目標のアウトカム向上には、保健医療へのアクセスが必要であり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)が推進されています。

人々に必要な、質の高い保健医療サービスへの公平なアクセスの確保には、十分に教育を受けた適切な人数の看護師が不可欠とICNは考えます。一方で、多くの国で生じている看護師不足に対し、看護師数を増やすことだけでは解決にはなりません。良好な労働環境下に看護師を補充することが大きなメリットをもたらすのです。看護師の労働環境向上が患者安全やケアの質の向上につながることは、エビデンスで示されています。また、看護師数を増加させるには初期費用がかかりますが、労働環境の向上には、看護師数の増加ほどの資源は必要としません。

状況を変えていくためには、リーダーが問題・課題を特定し、解決に向けて取り組む必要があります。変化する保健医療制度に対応し、実践範囲を最大化するには看護職の連携および多職種との連携も必要となります。また、労働力の計画と育成については、保健医療制度と教育制度の連携も必要となります。さらには、看護師個人が変化を起こすための行動をとる責任もあります。

本文書では、看護労働力の計画・労働負荷の測定・労働環境向上の重要性を述べるとともに、これらに関する世界のさまざまな機関によるツールも紹介しています。

2014年「国際看護師の日」啓発文書の英語版はICNホームページに掲載されています。
また、和訳版は、3月中旬ごろに本ホームページに掲載予定です。

  • UHC:予防・治療・リハビリ等で必要な保健医療サービスをすべての人々が享受できる状態(WHOの定義。本誌3月号p.81「ICMの動き」も併せてご参照ください)

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3月号

ICN第一副会長/東京有明医療大学看護学部看護学科学科長・教授  金井 Pak 雅子

ICN予算委員会について

2013年5月のICNメルボルン大会にてICN第一副会長を拝命し、ICN理事としての2期目は大役を仰せつかることになりました。第一副会長の役割は、会長に不測の事態が生じたときに代行することはもちろんですが、予算委員会(Planning and Finance)の委員長を務めるとされています。予算委員会のメンバーは、会長・3人の副会長・そしてCEOのほかに事務局から3人のスタッフ、合計8人で構成されています。ICN理事の執行委員会(Executive Committee)のメンバーも同じですが、そもそもなぜ予算委員会の委員長を会長ではなく第一副会長が務めるかというと、リーダーを分散することで、より民主的な運営をはかることを目的としているのです。


2013年5月のCNRの様子

予算委員会は、年4回(10月・12月・3月・5月)開催されます。執行委員会も予算委員会と同じ時期に開催します。3年くらい前までは、これらの会議は毎回ジュネーブのICN本部で開催されていました。しかし、経費削減のために最近は、5月以外はテレカンファレンスで行われるようになりました。確かに会長と3人の副会長の飛行機代やホテル代を毎年3回支出するとなると、かなりの額になります。

メルボルン大会後、予算委員会と執行委員会はこれまで2回開催されました。特に12月の予算委員会では、各国看護師協会からの会費納入状況が明らかになります。ICNの組織運営費は会費で賄われているので、収入源の情報はとても重要です。各人が支払う、その国の看護師協会費の一部がICN本部に納入される仕組みとなっており、日本看護協会会員の場合、1人当たり約250円がICNの会費として納入されます。

日本に生活していると、会費納入に関して特に大きな問題を感じることはないかと思います。しかし、世界を見渡してみると、戦争や紛争、さらには貧困のために会費を納入することができない国や地域も多数あります。それらの国に対しては、特別処置として納入できる時期まで待つことや回転資金を充てるなどの措置をとります。予算委員会では具体的な状況の確認と措置を決定します。

ICNの運営や組織・財政改革に関する最終的な決定は、2年に1度開催される会員協会代表者会議(通称CNR)にて審議・決定されます。昨年のメルボルン大会におけるCNRでは5つの課題を明確にし、大変大きな決断をしました1)

CNRの決議を受けて、理事会は積極的に動き始めています。中でも「ガバナンスコストの簡素化」という改革では、ガバナンスの構造の見直しを進めています。世界の経済状況が大変厳しい中、組織の維持のみならず組織の発展をいかに効率よく効果的に推進していくかが課題です。

●参考資料

  • 1) 輪湖史子:会員協会代表者会議(CNR)参加報告,看護,65(10),p.66-67,2013.
  • (1)既存の伝統的会員モデルの修正、(2)中高〜高所得国の看護師協会のICN 新規加入時会費割引、(3)組織率または会員規模に応じた会費減額、(4)投票数の改正、(5)ガバナンスコストの簡素化

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2月号

日本看護協会国際部

すべての人々に保健医療を―世界的な保健人材の確保

世界保健人材同盟(GHWA)が主催する「第3回保健人材グローバルフォーラム」が、2013年11月10日から13日に、ブラジルのレシフェで開催されました。今回のテーマは「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジおよびポストMDGs(ミレニアム開発目標)を見すえた保健人材の開発」でした。
この同盟は2006年に世界保健機関(WHO)の主導で設けられ、全世界で約420万人と推定される保健医療分野の人材不足に立ち向かう目的で、各国政府・市民団体・国際機関・財政機関・教育研究者・職能団体等が加盟しています1)。ICN もその一員です。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは近年、WHO が強調する考え方であり、「健康は基本的人権の1つ」、そして「すべての人々に健康を」という理念に基づき、すべての人々が支払い可能な費用で必要とする保健医療サービスを受けられることをめざしています2)
今回のフォーラムに際して、ICNは次のように見解を示しています3)

UHC 達成のためには、

  • サービスへのアクセスを高め、質の高いケア提供を推進する政策の策定を支援する
  • サービスの受け手中心の、質の高いサービスを推進し、その継続性を保証し、また、健康と福祉の増進および非感染性疾患の予防をはかる
  • コンピテンシーに基づき、能力が高く意欲にあふれる看護師・助産師を養成する
  • リーダーシップとマネジメント能力を高め、保健人材の確保・定着を強化し、意欲や責任感を向上させ、働きやすい職場環境をつくる
  • 他の専門職と協働し、チームケアを推進する
  • 研究を通じて、根拠に基づく実践を行い、研究成果を現場に還元する
  • 自国に特有の保健人材の課題を分析し、国・地域・世界レベルの政策に生かす

ことが必要である。

本フォーラムに関して、ICN のジュディス・シャミアン会長は、「これらの課題に対して看護師と助産師は、多くの貢献を果たすことができます。私たちは、どこに何人の看護職がいるか、どのようなサービスを提供しているか、変化する社会のニーズに直面してどのように能力を発揮しているか等の点について、豊かなデータを持っています。一般市民や専門職の信頼に足る、機能性のある規制枠組をつくることが、新たな仕組みづくりの上で最優先事項です」と述べています。
なお、このフォーラムでは「レシフェ施策宣言」が採択され、世界レベルで保健人材の課題に取り組むべきことが提言されました。

●参考資料

  • Global Health Workforce Alliance

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1月号

日本看護協会国際部

世界各地の看護教育について

ICNは、複雑で急速に変化する世界において、より迅速にコミュニケーションし、専門職の共通の利益を追求する手法が必要となっていることから、看護師個人が参加するネットワークを形成しています。ICN のネットワークの1つである“教育ネットワーク”ニュースレターより、世界各地における看護教育の拡大に向けた取り組みを紹介します。

オーストラリア:約26万8000人の看護師、5万8600人の准看護師、3万6000人の助産師がおり、雇用看護師と助産師のうち約5人に2人が50歳以上である。看護基礎教育の主要な課題は、入学者数の増加と臨床の雇用の少なさによる競争である。2002年〜2011年の間に入学者数が68%増加した。その間に海外からの入学者も500%増加 し、現在は看護学生の7人に1人が海外からの学生である。

ニュージーランド:約5万人の看護師、2500人の助産師がいる。2009年に保健省は看護教育の提供体制の見直しを命じた。その結果、教育の一貫性が懸念として挙がり、監督機関が必要か疑問が示された。保健大臣は専門職ごとに設立されている規制機関の統合を要請しているが、各保健医療専門職間の意見は分かれている。

ヨーロッパ:約662万人の看護師がいるが、現在〜今後のニーズを満たすには十分ではな。欧州委員会は「保健人材の供給格差は2020年までにおよそ100万人となる」と推計する。この推計では、EU人口に対するケアの15%が満たされないこととなる。看護基礎教育の課題の1つは、看護基礎教育課程の入学要件に「12年間または同等の教育を受けていることを含める」こと。この要件は大多数の国で満たされているものの、まだすべてではない。

ラテンアメリカ:看護教育へのアクセス拡大に向け、主に3つの課題がある。1.看護教育のカリキュラムは医学的要素が強いこと:看護の役割はケアよりも財務に焦点が当てられる傾向にあり、ケアの断片化や非人間化につながっている。2.大学教育の商品化により、教育の民営化が進んだこと:看護教育へのアクセスを広げるには公的な看護教育の実施が必要だが、そのためには国家としてGDPの上昇が必要となる。3.政府による科学技術への投資の不足:卒後教育に大きな影響を及ぼし、学習者の財政負担が課題となっている。

アメリカ:人口3億1500万人に対し、310万人の看護師がいる。看護基礎教育を提供する1500課程のうち、700課程が大学で提供されている。「患者保護並びに医療費負担適正化法(PatientProtection and Affordable Care Act)*」の施行によって保健医療ケアへのアクセスを持つ人が増加し、専門職間連携教育による新たなケアモデルの探究が求められるだろう。州および地域では、患者ケアの質を向上させるために、より高度な教育を受けた多様な労働力の創出と、教員および高度実践看護師を充足する戦略を立てた。

●参考資料

  • 通称「オバマケア」

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