国際情報

ICMの動き

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2012年

【12月号】

ICM会長  フランシス・デイ-スターク Frances Day-Stirk

世界中の母子に違いをもたらす

ICMが新しい「Model Curriculum Outlines for Professional Midwifery Education」(専門職助産師教育のためのモデルカリキュラム概要)を出版しました。このことをとても嬉しく思っています。ここに記載されたレファランスの全てが、ICM加盟団体やそれぞれの政府が助産師教育や助産実践規制を改善するための指針を示すものです。各国が、質の高い助産労働力を生み出し維持するために、その助産師教育カリキュラムの見直しを支援するものです。

モデルカリキュラム概要は、最新のコンピテンシー規準・世界教育標準に基づいて、4つの資源パケットで構成されています(昨年採択された世界標準は、ICMのホームページに掲載されています)。このアウトラインは、そうした文書の理解と活用を改善するはずです。ICMのモデルカリキュラム概要を構成する資源パケットは、以下のとおりです。

  • Background and the Curriculum Development Process(背景とカリキュラム開発プロセス)
  • Model Midwifery Curriculum Outlines(オンラインによるモデル助産カリキュラム)
  • Key Resources Available for Midwifery Education(助産教育に活用可能な主な資源)
  • Teaching and Learning in a Competency based Curriculum(コンピテンシーに基づいたカリキュラムにおける教育と学習)

またICMは、ブランドを見直し新しいロゴを作成しました。11月にはホームページも刷新され、新ロゴも発表されます。

私たちの仕事の仕方を改善するためには、変化が必要です。その変化は、私たちの教育資源や加盟団体を強化し世界の助産師の声であり続けるためのコミットメントにも現れています。私たちは、全ての女性が助産師のケアを受けられる世界を実現するというビジョンを持っています。そのためには今日、非常に密接につながっている支持者と、よいコミュニケーションを図るということが不可欠です。

そのため、私たちは、ホームページを刷新して活性化を図りました。メンバーとの情報交換のプラットホームとして、強力なオンラインスペースをフル活用できるように設計しました。それには、その他の関係者やパートナーたちとのコミュニケーションや情報交換を密にする意図も含まれています。今年の初め、総合的組織アイデンティティ・プロジェクトを組み、メンバーや他の関係者の意見を聞きました。より効果的なコミュニケーターとなるため、また私たちのプロフィールを改善するため、支持者がICMをどのように考えているかを理解したいと思ったのです。そこで出された意見に基づいて、コミュニケーション方法を改革しました。

助産師の中には、まだインターネットアクセスが困難な人がいることも認識しています。私たちは、常に何らかの方法で全てのメンバーにつながりたいと思っています。私たちは、世界98カ国の108の加盟団体の助産師と関わりながら仕事をしています。同時に各国政府関係者、研究機関、教育機関、パートナー、寄付者とも連携しています。つまりウエブとソーシャルメディアは、私たちの仕事を一層強化していくために活用できる、強力で個人的で民主的ツールなのです。

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【11月号】

日本看護協会常任理事  福井トシ子

ICMによる「助産規制の世界基準」が採択されるまでの道程

 国際規制による「助産規制の世界基準」(2011)がICM 大会南アフリカ・ダーバン会議で採択されました。この助産規制の世界基準は、世界の助産師にとって今後の道標になるものです。

助産規制の世界基準の開発は、2002年に「助産 の法律と規制の枠組み」の所信声明を採択したこと から始まっています。この所信声明で助産師法と規 制が定義づけられ、助産業務は、助産師法によって 規制されるべきとされました。

2002年の所信声明とともに、加盟団体がそれぞ れの国で、適切に助産実践の規制過程を経ることが できるように、規制基準のガイドラインを確立し、 2005年には助産規制を法律で定める「助産実践を 管理する法律」の所信声明を採択しました。

助産規制の世界基準は、助産師、助産師団体、政 府、国連機関、その他の関係者の要望に応えて、 ICMが開発しました。この基準開発の目的は、2 つ あります。一つは、有資格の助産師が、女性と新生 児へ安全で質の高い助産ケアを提供することであり、 もう一つは助産業務範囲の中で、助産師が自律して 業務ができるように支援することです。

この規制によって、助産師の立場を向上させ、母 子ケアの基準と母子の健康が改善することが期待されています。

助産規制の開発を援助するために詳細な指針が作 成され、この2 つの目的を達成するために、2008 年のICM 評議会で助産規制の世界基準を開発する ことが決定されました。助産規制の世界基準は、「助 産師教育の世界基準」の開発と「基本的助産業務に 必須な能力」の改定と並行して、2010年に開発され ました。

 助産規制の世界基準は、2010年4 月の香港での 会議で草案が作成されました。基準の草案には、 ICM で定められたあらゆる助産業務における助産 師の自律性を支え、「助産師」の名称を守り、標準 化された助産師教育を支え、助産師の継続的な能力 を保証する必要があるとされています。

助産業務に必須な能力と助産規制と助産師教育の 世界基準を併せると、助産師団体、規制機関、教育 者、政府が、管轄内で助産師の専門職を強化し、助 産実践の基準を向上させるために用いることのでき る専門的な枠組みが提供されたことになります

このような専門的な枠組みが提供されることで、 助産師は支援を受け、助産師としての役割を果たし、 国内の母子ケアの実践に全面的な関わりを持つこと ができるようになります。

この助産規制の世界基準は、2017年に見直しが 予定されています。

「あらゆる助産業務における助産師の自律性を支 え、『助産師』の名称を守り、標準化された助産師 教育を支え、助産師の継続的な能力を保証する」こ とが日本の助産師界にも求められています。

 「助産規制の世界基準」の具体的な内容について は、参考資料ををご参照ください。

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【9月号】

ICM会長  フランシス・デイ-スターク Frances Day-Stirk

母親は持続可能な発展への鍵

母親は子どもが初めて遭遇する環境です。平和、繁栄、知性、持続性の種は、その環境で蒔かれ育まれていくのです。だからこそ、去る6月に開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」で、FEFAF(Federation European des Femmes au Foyer)が主催しICMが支援したセミナーで、世界中の助産師のために希望と緊急性のある強力なメッセージを送ることが重要だったのです。

「9Months to Save the World:Mothers, Key to Sustainable Development(世界を救う9カ月:持続可能な発展への鍵は母親)」と題された講演会で、参加者は、著名な講演者たちから、40年にわたる産前ケアの科学や、持続可能な発展への鍵である母親を支援する“エピジェネティクス(後成遺伝学)”の発見などについての話を聞きました。

私は明瞭なメッセージを伝えました。「助産師たちは、産前期が母親とその新生児の健康に与える重要な影響を常に認識してきました。こうした証拠に基づくデータは、子どもの発達に長期的に影響を与える妊婦の思考、感情、環境、出産する方法などを支援するものです」

リオ+20会議の成果文書「The Future We Want(私たちの望む将来)」は、MDGs(国連ミレニアム開発目標)を一層促進するという各国の決意を再確認するものです。この成果文書と国連議長が開始した「Zero Hunger Initiative(飢餓ゼロ運動)」は、健康と持続可能な発展との関係を証明するものです。

「昨年末のリオ成果文書“ゼロドラフト”から大きな前進を見ました。リオ成果文書では健康についての言及は全くありませんでした。この成果文書では、幅広い健康問題と健康決定要因に1セクションを割り当て、その他さまざまな箇所でもその関係について言及しています。“助産師は、産婦と乳児の死亡率に関する恐ろしくなるような統計データを知っています。そして、そのほとんど全てが、適切な助産師のケアがあれば予防できるものだということも知っています。けれども、これまで私たちは、そのことを持続可能な発展との関係で述べたことがあるでしょうか”」

MDGsは、21世紀において、私たちが包括的で、平等で、経済的生産性のある、健康的な社会を創出するために“何”が必要とされているかを表明するものです。助産師にとってMDG4、5、6の項目は、母親たちに力を与え支援する資源を確保するために非常に重要です。母親・乳児・家族・コミュニティを支援することは、持続性を支援し、地球の肯定的な将来を育んでいきます。

ICMは、母親やその子どもたちを“どのように”支援するか、その支援の仕方に取り組んでいます。母親と出産に密接に関連する助産師の支援に情熱を注いでいます。そして私たちは、あらゆる子どもの発達のために、最善の環境を提供できるよう熱烈に擁護していきます。これには、子どもを産む世界中の女性の状況を改善するのに不可欠なものとして、持続可能な発展への支援も含まれなければなりません。

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【8月号】

日本看護協会常任理事  福井トシ子

国際助産師連盟のビジョン・ミッション

ICMは、2012年6月12日(火)にオランダ・ハーグのベルエアホテルにてICM年次国際評議会を開催しました。2011年南アフリカ・ダーバンにおける国際助産師連盟評議会を受けて、1)2011年「ICM活動報告および監査報告」、2)「ICMの戦略的方向性」2011年〜2014年、3)ICM基本文書「女性および助産師に関する権利章典」、の3項目について決議が行われました。日本看護協会は、事前に送付されてきた資料を基に協議し、いずれも採択するという立場で、代理の方に投票を依頼しました。

3年毎大会である昨年の南アフリカにおける国際評議会の理事会報告として、ICMのビジョン・ミッションが、改めて示されました。ICMのビジョンは、「出産を迎える女性一人ひとりが、新生児とともに助産師のケアを受けられる世界を目指す」です。ICMのミッションは、「女性のリプロダクティブ・ヘルスおよび新生児と家族の健康増進を図るため、出産を迎える女性にとって、そして出産を正常に保つということにおいて、最適なケアを提供する助産師の自立性を促進する。このことによって、国際助産師連盟加盟団体の強化と世界的に助産の専門性の向上を図る」ことです。

また、ICMは、助産師協会の世界的連盟であり、WHOや他の国連機関に加え、国際産科婦人科連合(FIGO)、国際小児科学会(IPA)、国際看護師協会(ICN)などの世界的専門医療団体および非政府組織、二国間協議や市民社会団体において、助産師と助産を代表するものである、ということも報告されました。

さらに、ICMは同組織の意思決定機関である国際評議会により統治され、同評議会は3年毎国際評議会においてICMの戦略的方向性を定めることや、ICM評議会により選任された執行委員会は同評議会により承認され、理事会が優先順位を決めた戦略的方向性を達成すべく事務局長と緊密に連携すること、また理事会メンバーは地域で任命されること、理事会は戦略的方向性を実施しグローバル・パートナーおよび地域パートナーとの連携を図ること、ICM会員協会への支援ならびにプロジェクトの策定・運営を監視し、ICM本部を監督することなどが示されました。このように、ICMのガバナンスは明確にされています。

ICM国際評議会は2011年6月、新ICM細則を承認しています。この細則は、ガバナンスの課題を明確にするとともに、新たな理事会の構成をICM運営に、より反映させるために、国際評議会によるICM定款および細則の修正の決定を受けて、理事会が見直し更新したものです。

ミッション・ビジョンを明確にし、ガバナンス体制の強化、関連団体との連携・協働体制の強化から、ICM組織が強い組織に発展・拡張していることが理解できます。ICMのビジョンである、出産を迎える女性一人ひとりが、新生児とともに助産師のケアを受けられる、このことは我が国の助産師活動のビジョンでもあります。先進国である我が国においても、残念ながら助産師のケアが届いていない現状があります。一日も早くこの現状が改善できるように、ICM加盟国として、スピードを上げて取り組んでいくことが求められています。

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【6月号】

ICM会長  フランシス・デイ-スターク Frances Day-Stirk

ICM会長の役割は多様です。その責任を果たすのは難しいのですが、同時に得るものもとても大きいと思っています。その役割の大半は使節としてのもので、私は多くの国々を訪問し、世界規模の組織との会議に出席します。去る3月、国連のICM代表が、国連婦人の地位委員会(CSW)のサイド会議で話す機会をつくってくれました。国連経済社会理事会のCSWは、男女平等と女性の地位向上に特化した世界的な政策を策定する主たる母体です。毎年メンバー国の代表が、国連本部で会合を開き、世界における男女平等と女性の地位向上を促進するための具体的な政策をつくり、その計画の進展具合を評価しています。今年の主要テーマは「The empowerment of rural women and their role in poverty and hunger eradication, development and current challenges」(辺地の女性のエンパワーメントおよび貧困削減、飢餓撲滅、開発と課題における彼女たちの役割)でした。私は辺地に生きる女性にとって、保健サービスへのアクセスにおいてどのようなことが障壁となっているのかを、世界各地から来た聴衆に訴えました。また助産師の仕事だけでなく、そのような辺地の女性が利用できる助産サービスを提供する上で、助産師がいかに重要な役割を担うかについても語りました。このような女性たちが抱える保健サービスへのアクセス問題は、世界共通のものです。それらの問題としては地理的孤立、公的輸送機関の欠如、個別の輸送サービスへ支払う財力の欠如、ケア提供者不足(特に人材募集と雇用維持の問題に起因する産科サービス提供者不足)などが挙げられます。

助産師の世界的ネットワークは、ICMやそのメンバーである各国助産師協会の教育活動や女性擁護活動を通じて「助産師がこれまで以上に必要とされている」というメッセージを世界中に伝えています。国連ミレニアム開発目標(MDGs)の達成年2015年が近づくにつれ、このメッセージは、目標達成の大きな推進力となっています。MDG4と5は母性、乳幼児、児童の死亡率を減少させることを目標としていますが、それは貧困国において女性と子どもの健康のために投資が必要だということへの世界的な認識の現れでした。そしてその目標は、普遍的に実現されているとはとても言い難い状況です。

生殖、母性、新生児、小児に関する健康に不可欠な介入、物品、ガイドラインについての研究では母親・新生児・児童の死亡の主因を指摘し、実施すれば救命できると思われる56の介入を同定しています。その78%以上が地域・診療所・病院で働く助産師の職域内に存在するものです。ICMは、助産師が命を救うという、動かし難い証拠とその仕事の重要性を、これからも強調していきます。

世界の助産師たちが協働すれば、その力は無視できないとても強力なものとなるということが認識されています。昨年、ICMがスポンサーとなったプログラムの一つで、日本の助産師がベトナムの助産師と協働し、経験・知識・技術を分かち合うプロジェクトを実施しました。日本の助産師たちはICMを通じて、世界をよりよい、より安全な場所にするために尽力しています。ともに働くことにより私たちは助産師の声をさらに大きなものにし、世界に価値ある変化をもたらす問題を提起していくことができるのです。

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【5月号】

日本看護協会常任理事  福井トシ子

MACATツールの活用

本誌2012年1月号で、ICM加盟団体能力評価ツール「A Member Association Capacity Assessment Tool」 (以下、MACAT)を紹介しました。このツールが、最適なケアを提供する助産師の自律性を促進することによりICM加盟団体の強化と世界的に助産の専門性の向上を図ることを目的に使用されることは、前回紹介したとおりです。

このツールは、協会の強みを評価する一つの方法です。強い協会は、組織目標を達成することができます。評価の目的は、協会を強化するために実施すべき活動を含め、協会が自らのニーズを明らかにすることにあります。協会が実施すべき活動を決めやすいように、ツールによって枠組みが提供されているのです。決して協会の弱点について論じるものではないことは、前回紹介しました。

このMACATと併せて、MACATを使用するためのガイドラインが示されていますので、今号では、そのツールをどのように使用するのか、ガイドラインの一部を紹介します。  ガイドラインでは、「誰がMACATを実施すべきか」「MACATの実施方法」「項目の考え方」「結果の解釈」「介入方法の開発」「示唆されるアプローチについて」が示されていますが、今号では、MACATの実施方法までをご紹介します。

誰がMACATを実施すべきか
  • 次のようなさまざまな人の組み合わせによって構成される協会そのもの。
    • a.協会の関係者全員から成る小委員会。関係者全員による完全な協会像を把握する。
    • b.協会の執行委員会/事務局を含む小委員会。資金的に可能なら、プロセスの進め方について、委員会は外部コンサルタントの助言を得る。コンサルタントの存在は任意である。
    • c.協会のスタッフやボランティア。スタッフとボランティアがいて、評価を実施する場合は、どのように、何を評価するのかを明確にするために、協会と協会の機能についてオリエンテーションを受ける。
  • 外部コンサルタントは、全ての書類を見ることができ、会員や協会の関係者に接触することができる。非会員コンサルタントは、協会のために外部目標を提供する。
  • より多くの情報や具体的な反応を集めるために、フォーカスグループによる話し合いの場を設定することができる。
  • MACAT実施方法

    MACATを実施することは、7セクションに分かれる項目に答えることである。一部の情報については、協会の記録と書類からわかるが、評価開始時に確認することが重要である。
    MACATを実施する場合は、以下のステップを踏んで行われる。

    ステップ1:
    評価を行うために、記載されている集団やコンサルタントを選択する。協会の目的の説明と手順が回答者に伝えられる。協会の強化に必要な活動に回答がどう直結するのか、回答者が理解しやすいようにする。
    ステップ2:
    ツールのオリエンテーションのために、1つのセクションを試しに行い、各セクションの項目の回答からどのような情報が得られるかを示す。
    ステップ3:
    全評価が終了する。例えば、各セクションの全項目に正直に客観的に回答する。全項目が協会の重要な面を表しているので、全項目に答えることが重要である。

    誌面の都合でガイドラインの途中までですが、このように見てみると病院機能評価のサーベイランスの手順を思わせますね。詳細については、ICMホームページをご参照ください。

    参考資料
    1)ICM:Member Association Capacity Assessment Tool- Guidelines for Use,2011.

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【4月号】

日本看護協会事業開発部

2011年ICM国際評議会(南アフリカ・ダーバン)では、「基本的助産業務に必須な能力」を土台として、「教育」「規制」「職能団体」を3つの柱とする重要な4文書が採択された。同時に「助産師の定義」も改訂され、上述した4文書の規定を満たす者が助産師であるという世界共通の基準が示された。今月は、世界の助産師教育・助産実践の基本に据えられたICM文書「基本的助産業務に必須な能力」についてご紹介したい。  この文書は、1999年国際評議会(フィリピン・マニラ)において採択され、2002年オーストリア・ウィーン、および2011年南アフリカ・ダーバンで改訂された。策定・改訂においては、日本を含むICM加盟国の助産関連の規制機関や教育機関、医療施設等に勤務する助産師を対象とした世界規模の調査が実施されてきた。今後も新しい医療や医療業務の根拠として、継続的な評価と改訂が行われる予定となっており、次回は2017年に改訂が予定されている。

「基本的助産業務に必須な能力(2010年版)」には、「母子のケアの社会的、疫学的、文化的な能力」「妊娠前のケアと家族計画の能力」「妊娠中のケア提供能力」「分娩と出産時のケア提供能力」「産褥期の女性のためのケア提供能力」「新生児のための出産後ケアの能力」「妊娠中絶関連ケアのファシリテーション能力」の7領域について、助産師に必要な「知識」および「技術と能力」の項目が記載されている。「知識」および「技術と能力」はさらにそれぞれ「基礎的なもの」と「追加的なもの」に分けられている。

「基礎的なもの」に該当する項目は、助産師の基本となる能力であり、助産教育に期待される成果である。「追加的なもの」として挙げられている知識・技術は、「幅広い業務に関わるように選ばれた助産師」、もしくは「母子の予後を変えるために、特定の技術を用いる必要がある助産師」が、学習・実践できるものとされている。

今回の改訂では、新たに1つのケア領域が追加され、さらに14項目が追加、53項目が修正、3項目が削除された。主な変更点は、次のとおりである。

  • 「妊娠中絶関連ケアのファシリテーション能力」を助産師のケア領域として追加
  • 「骨盤位の外回転術の実施」「会陰血腫の除去」「鉗子分娩の実施」の3項目を削除
  • 「会陰への局所麻酔注射」を、追加的技術から基礎的技術に変更
  • 「会陰縫合」について、T度・U度の裂傷縫合は基礎的技術、V度・W度については追加的技術に変更
  • 「陣痛誘発および陣痛促進の適応」を基礎的知識に追加
  • 「搬送を待つ間の臍帯脱出、胎位異常、肩甲難産、胎児機能不全等への初期救命」を、追加的技術から基礎的技術に変更

助産の専門性を発展させるための教育や臨床における手引として、また助産をより強固にするための政策において、本会など職能団体がこの文書を活用することをICMは推奨している。

「基本的助産業務に必須な能力」は、教育、規制、臨床業務に関するICMの基準とガイドラインによって補完されている。日本看護協会、日本助産師会、日本助産学会の3団体で日本語版を作成したので、ぜひ、本会ホームページをご覧いただき、文書を助産師教育・助産実践において、ご活用いただきたい。

参考文献
1)常田裕子:ICMの動き,看護,61(13),p.81,2009.
2)大石時子:教育に関する重要な文書の採択と助産師の定義の改訂―歴史的な第29回ICM評議会・大会―,公益社団法人全国助産師教育協議会ニュースレターNo.71,p.2-3,2011.

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【3月号】

ICM会長  フランシス・デイ-スターク Frances Day-Stirk

年が明け、早2月。今年のICMの事業計画や展開を考えていると、英国の詩人サミュエル・T・コールリッジの「そして、今日は、既に明日とともに歩いている」という言葉が浮かんできます。カレンダーで今年の訪問・会合・講演等の予定を確かめていると、ICM会長の活動で最も報いある仕事の一つが、世界中の助産師と関わりを持てることだと気づかされます。

助産師のネットワークとICMの各国助産師協会は、ICMの教育と活動を通じてともに働きながら、助産師が今まで以上に必要とされているというメッセージを世界に向けて発信しています。このメッセージは、国連のミレニアム開発目標(MDG)の達成期限である2015年が近づくにつれて、弾みをつけながら広がっています。妊婦、乳幼児の死亡率を減少させることを目指すMDG4と5は、貧しい国における女性と子どもの健康と安寧に、もっと投資する必要があるという国際的認識です。けれども、それが世界的レベルで十分に実現されるには、まだほど遠いのが現状です。

これら2つのMDGを一層強調する画期的な2つの報告書が出されています。1つは「The State of the World’s Midwifery Report 2011」(世界助産報告書2011)で、妊婦と乳児の死亡率を減少させるために助産師が重大な役割を担っていることを、データを示して明言しています。この報告書の結果は、世界保健機関(WHO)が3年にわたって行った研究でさらに強固に裏付けられています。WHOの研究では、助産師と助産技術が、妊娠中および出産時の女性と乳児の死亡率を“非常に大きく”減少させる重大な役割を担っていると指摘しています。この研究は、“Essential Interventions, Commodities and Guidelines for Reproductive, Maternal, Newborn and Child Health”(生殖・母体・新生児・乳幼児の健康に不可欠な介入・物品・ガイドライン)というタイトルで実施され、母性、新生児、乳幼児の死亡の主原因を指摘し、多くの命を救うことができると思われる56の不可欠な介入を明らかにしています。こうした不可欠な介入の78%は、助産師が地域・診療所・病院で働くことで実施できるものです。ICMは今後も、「助産師が命を救う」という疑う余地のない証拠を提供するこの2つの主要な世界規模の報告の重要性を強調していきたいと思います。

日本の助産師の皆さんは、ICMとの長く素晴らしい歴史を持っており、1954年のICMの再出発にも出席しています。以来、皆さんの積極的な活動への参加は、専門職としての助産師の世界的発展に重要な役割を担ってきました。2011年、ICMが後援したプログラムで、日本の助産師はベトナムの助産師たちと協働し、その専門性、知識、技術の共有に尽力しました。

世界中の助産師が力を合わせれば、とても強固な力になると信じています。2012年も、私たちは、母性と子どもの健康を改善するというMDGを達成すべく、私たちの集合力を発揮しながら、ともに活動していかなければなりません。

最後に、私たちを一層強固な活動へと突き動かすキャリー・チャップマン・キャット(アメリカの女性解放運動活動家)の言葉をご紹介しておきましょう。

悪に抵抗するために/善を支援するために/そして遠い未来のために/あなた自身を与えよ

【1月号】

日本看護協会常任理事  福井トシ子

加盟団体能力評価ツール(MACAT)について

ICMの使命は、女性のリプロダクティブヘルスおよび新生児と家族の健康増進を図るため、出産を迎える女性にとって出産を正常なこととして捉え、最適なケアを提供する助産師の自律性を促進することにより、ICM加盟団体の強化と世界的に助産の専門性の向上を図ることであるとされています。

2011年6月に南アフリカのダーバンで開催されたICM評議会で、加盟団体能力評価ツール(Member Association Capacity Assessment Tool:以下、MACAT)が示されました。このツールは、団体の強みを評価する一つの方法です。世界的に助産の専門性の向上を図るためには、各国助産師団体の組織を強化することが重要課題です。このツールを使って評価する目的は、この重要課題達成に向けて、団体を強化するために実施しなければならない活動を含め、団体が自らのニーズを明らかにすることです。団体が実施すべき活動を決めやすいように、ツールによって枠組みが示されました。このツールは、団体の弱みを論じるのではなく、強みを強化して組織目標を達成することにあります。以下に、評価者や評価項目について紹介します。

MACATは団体運営に関与する全ての人々によって評価され、以下の1〜5が評価者の例として挙げられています。

  • 団体の関係者全員が入る小委員会(これにより関係者全員が完全な団体像を把握することができる)
  • 団体の執行委員会や事務局を含む小委員会
  • 団体のスタッフまたはボランティア(いずれも評価を実施する場合は、どのように何を評価するのかを明確にするために、団体の組織と機能についてオリエンテーションを受ける必要がある)
  • 外部コンサルタントが入って団体を評価する時は、すべての書類を見ることができ、会員や団体の関係者に接触できる。非会員コンサルタントは、団体のために外部目標を提供する。
  • より多くの情報や具体的な反応を集めるために、フォーカスグループによる話し合いの場を設定することができる。

MACATの評価項目は、7セクションに分かれます。

セクションA:ガバナンス
プロセスと方向性に関し団体の構造と機能を見る
セクションB:運営管理とリーダーシップ
団体のリーダーシップ、運営管理方法およびスタッフ機能の構成について見る
セクションC:資金管理
団体の財務状況、管理方法と実行可能性について見る
セクションD:機能
会員、助産実践、女性、子ども、家族の健康を向上させるために、団体が実際に行っていることについて見る
セクションE:協働、パートナーシップ、ネットワーク
医療専門職、医療制度等の中での団体の位置づけについて見る
セクションF:広報を含む可視化
団体の存在の示し方や知名度について見る
セクションG:持続可能性
団体の長期および将来の可能性について見る

各セクションの具体的項目は、本会ホームページでも今後紹介させていただきますが、このように各セクションを見てみると、ICM組織の評価、日本の助産各団体の評価、ひいては今、自分が所属している組織の評価に、MACATが応用できるのではないでしょうか。自己点検してみたいものです。