髙橋弥生さん(千葉県)

協会ニュース2018年1月号 連載:特定行為研修 修了看護師活動レポート

あらゆる場、あらゆる人への看護に活かす 
第2回

髙橋弥生さん
聖隷佐倉市民病院

髙橋弥生さん

千葉県佐倉市は古くは城下町として栄え、現在の人口は17万強を数える。その市民らが頼りにする聖隷佐倉市民病院で、初の特定行為研修修了者として活動するのが髙橋弥生さんだ。

院内のニーズに応えようと研修へ

看護師になってほどなく、糖尿病患者さんに関わるようになった髙橋さん。関心が高まり、2006年に糖尿病看護認定看護師の資格を取得。10年に聖隷佐倉市民病院に移ると専門認定看護室に属し、院内横断的に活動してきた。
だが、常勤の糖尿病専門医が退職して以降、後任が決まらず、14年ごろから徐々に、糖尿病に関する問い合わせが髙橋さんに集中するようになった。糖尿病が専門外の医師から、患者さんの血糖コントロールに関する相談を受けるなど、より医学的な知識を身に付ける必要性を感じる中で知ったのが、日本看護協会が認定看護師を対象に行う特定行為研修だった。
髙木智美総看護部長とも話し合い、5つの受講モデルのうち糖尿病看護モデルの研修を受講することで、満たしきれないニーズを補完できると考えた。しかし、院内では前例のないことだ。説得材料として、寄せられた依頼や対応を分類し、医学的知識を必要とするものが多いことを客観的に示すことで院内の了承を得て、16年秋から研修を受講した。
研修では、病態生理学や臨床推論など医学的な知識を幅広く習得できた。また、これまで糖尿病という視点に偏り過ぎていた自身を反省し、患者さんを全体的に見る重要性を再認識することにもなった。「医学的知識をケアに生かすのは大事。認定看護師が医学と看護学両方の視点を理解することで、患者さんのためになる活動の幅がより広がる」と髙橋さんは語る。

組織の変革と捉え基盤を整備

研修修了から9カ月余りがたつ現在、髙橋さ んは院内のニーズに応えることを最優先に、入院患者さん中心に対応している。
院内には、糖尿病を抱えながら他の疾患の治療目的で入院している患者さんも多い。その主疾患に関する医師の方針を理解した上、糖尿病を考慮した対応を提案したり、状態に応じたケアをする。以前より、医師と踏み込んだ話し合いができ、対応に生かせるようになった。
例えば、抗がん剤服用に伴うステロイドの影響や食事量の増減が著しいがん患者さんに対して、がん治療面は医師と相談し、食事など生活面は本人と相談しながら、医師との手順書に基づいて薬剤や食事量に応じたインスリン投与量の調整を図る。「医師の判断や治療方針を理解した上で、患者さんを一番良く知る看護師としてケアの方針が提示できると、チーム医療の質が変わってくる」と髙橋さん。医師と患者さんの間でも、効果的な仲介役が果たせるようになったとの実感だ。

こうした良質なチーム医療の実現に向け、活動体制も入念に整えた。手順書は医師と調整し、現在の様式になるまで数回改変を加えてきた。また、手順書とともに、患者さん個々の血糖コントロールに関する薬剤調整の詳細や状態が変化した際の対応について、研修修了看護師のみに適用される独自の指示書を医師との間で交わしている。これらの運用基準も定め、安全かつタイムリーに特定行為研修を活用した実践の基盤を整えた。活動開始時に説明したこともあり、院内を回れば髙橋さんの新たな役割が浸透していることを示すように、看護師らからも「弥生さん!」と相談や確認を求める声が掛かる。
髙木総看護部長は「当院にとって、まず髙橋さんが成果を上げることが非常に大事」と強調する。新たな役割を果たす看護師の誕生を変革と位置付け、リード役としての髙橋さんを厚く信頼し、スムーズな導入と活動拡大を二人三脚で進めてきた。いずれは外来、さらに地域へと活動の場を広げていくことを目指す。病院や地域に対し、最大限に貢献できる活動の在り方を見据えながら、着実に歩みを進めている。

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